炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

落ち着けないレシピ

【近況】

ようやく寒くなったと思ったらもうすっかり冬です。ランチに出かけるにも上着は邪魔なのか、薄着で肩をすくめて店内に入ってこられるお客さんがちらほら見えます。

ランチといえば、毎朝準備するひとつに味噌汁があります。寒くなってくると味噌汁の温かさもより口当たりに際立って、味わいも変わってくるように思います。味噌汁の温かさを楽しむためにあえて薄着を心がけるのも一興かもしれません。


当店の味噌汁は一番だしを取った後のだしガラを沸かして取る二番だしです。そこへさらに煮干しを加えて、甘みとコクを加えています。


じょじょに味が出るので、営業中も煮干しは味噌汁のなかに入れたままにしています。したがって、開店まもない時間の味噌汁と、閉店ちかい時間の味噌汁は味がちがいます。

早い時間帯は、はなやかな味噌の香りが立っています。遅い時間帯は、どっしりと旨みの効いた落ち着いた味わいです。


味噌汁はできたてとその後で味わいがかわりますが、同じ料理でも日によって味が変わるというものもあります。

かつてはいつどんな時も同じ味を保たなくてはいけないという考えに囚われていましたが、そもそも季節によって野菜や魚は甘みや脂の乗りなどかわりますし、料理によってはその日の寒暖にあわせて甘みや塩気に強弱をつけることが最近は増えました。

まだ完璧な加減ができるわけではまったくありませんので、日々味見をしながら感覚を鍛えていきたいと思っています。


【おすすめレシピ本 その1】

書店に行くと、今も昔も料理本のコーナーは色とりどりの本が並んでいて楽しくなります。いまやAmazonのおかげで、近場の書店にない本もかんたんに取り寄せられたり、中古でみつけられたりと便利になりました。

手当たり次第にレシピ本を手にしてきた中で、自分がひんぱんに役立ててきたものを紹介したいと思います。


「調理法別 日本料理」NHK出版


普段からある程度料理をする人にとっては、しっかりと手応えのある和食が作れる本だと思います。


かんたんにその魅力をまとめると、


・その名の通り、刺身・煮物・揚げ物などそれぞれの調理法が料理にもたらす役割がよくわかる

・レシピの解説が細かくみやすい。また、巻末にまとめられている基本の調理技法もわかりやすい

・分量の表記が詳細なので、ちょうど良い濃さの味に仕上がる。味の組み立てや、食材と食材の組み合わせにきちんと理由があることがわかる


今も新メニューを考えるときには必ず目を通す一冊です。当店のドレッシング、サーモンを使った一品、茄子の焼き物などは、この本を参考に仕上げたメニューです。


どのレシピを取っても、使われる食材それぞれに細かな下ごしらえの基本がつめ込まれていますので、一品仕上げるだけでいろんな食材の扱い方を知ることができます。

そのぶん、一品仕上げるだけでわりと時間も準備も必要です。でも、「少々」や「適量」などの表記でうやむやになりがちな部分がないので、味はしっかり決まります。


普段の食卓むけではないかもしれませんが、トライした人にかならず調理の知恵が残るレシピばかりですから、得意料理がある人にとってはそれをさらにおいしく仕上げるコツを学べる本かと思います。


※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。




「上手さ」の勉強

【近況】

いよいよ忘年会を予約くださる問い合わせが増えてきました。

自分は飲食業にしか携わったことがありませんから、書き入れ時の12月は忘年会に参加した経験はほとんどありません。そのため、利用者の視点に立ってものを考えるのはなかなか苦戦します。


幹事の方とやりとりさせていただいていると、勉強になる場面がたくさんあって、たとえば人数が多い宴会だと、予算の希望や料理内容の調整など、いろんな要求を出される場面があります。


そんなとき、事前に来店して相談くださったり、密な連絡をとってくださる方だと、こちらもその要求を前向きにとらえやすく良いアイデアにつながります。こういうときのアイデアは、店側視点の都合と、利用者視点のニーズのすり合わせに大きくつながるので大変ありがたいものです。

また、一度しっかりやり取りをした方だとこちらもずっと覚えていますから、次回以降の予約時にはお好きなメニューを切らさないよう準備しておくなどと、スムーズな対応をさせてもらえます。こういった形の付き合い方をなさってもらえるのは本当にありがたいものです。



料理を作る側としては、年末に向けコース内容を一新しました。

なるべく「できたて感」を活かせるものというのがテーマです。


というのも、あるていど人数が多い宴会があるときは、料理は完成のなるべく一歩手前まで作り置きしてスムーズに出せるように準備するのですが、この際「できたて感」がいくぶん犠牲になっているような気がずっとしていました。

もちろん料理を待たせてしまっては元も子もないので、作業と割り切って機械的に作ったものを運び続けるということもできなくはないのですが、そう感じてしまうとなんともつまらない。


なので今回の年末コースには、大人数でもなるべくできたて感を活かせるようなメニューを選びました。


くらべても味はおなじ、または見分けがつかない程度かもしれないのですが、作り置きから完成させるより、注文を受けてから完成させたときのほうが生き生きとした素材感、ダイナミクスのようなものが生まれおいしそうに見えることが多いようです。

まだ2年目の年末ですが、今年も沢山勉強させてもらおうと思います。


【ぽんたんのレシピ紹介 その4】

先だって取り方を紹介した「だし」を使って炊き込みごはんを炊く基本の合わせだしを説明します。


・だし 400cc

・酒 40cc

・塩 4g(小さじ1と1/3)

・薄口醤油 10cc(小さじ2)

・みりん 8cc(小さじ1と2/3)


以上が基本の割合です。お米2合から2.5合分になります。量り分けるのがめんどうなら薄口とみりんは同じ割合でもいいと思います。


研いだお米に好みの具を入れ、炊飯器のラインまで合わせだしを入れて炊き上げれば完成です。


しっかり取っただしで作るので、鶏とごぼう、きのことベーコン、たこと刻みしょうがなど、相性がよいとされる2種類の組み合わせだけで十分おいしい炊き込みご飯ができると思います。

仕上げに、香りの立つ薬味類を散らすとさらにおいしく感じます。刻んだ大葉(シソ)、もみ海苔・青海苔、木の芽(山椒の葉)、黒こしょう、ネギ、すり下ろした柚子の皮など。


具の選びかたのコツの1つに、脂肪分が少ない淡白な素材を使うときは油のコクをうまく足すというものがあります。

きのこやタケノコ、貝類がメインなら、こまかく刻んだ油揚げを加える。サツマイモや里芋などは一度油で揚げる、もしくは炒めてから炊き込む。ほかには、炊き上がりにバターを乗せて混ぜ込むというのもあります。


当店では、きのこが中心の炊き込みごはんのときは材料のきのこ半分を最初から炊き込み、バターで炒めたもう半分を仕上げに加えるという手順をとりました。

きのこの味がごはんに良く染み、またきのこの香ばしさも味わえる仕上がりになります。



※調理工程や、使う調味料について等、詳しく知りたい方は遠慮なくお店でもネット上でも質問ください!可能なかぎりお答えします


たのしい寄り道

【近況】

10月から、それまで300円頂いていた「お通し」を廃止しました。

作る側としては、料理が出るまでつまみながら待ってもらえるものであり、同時に季節感を演出できる機会であり、何より自分が外で食事をするときはその店のお通しの出来も楽しみなので、なるべくなら続けたいものでした。

やめるに至った一番大きな理由は、新税率で消費税が上がったことです。このままの価格では、やっぱり外食は高くつくな、と受け取られてしまいかねないと、対策としてメニュー全体の価格と内容を考えられるかぎり見直しました。それならいっそのこと、思ったより安く済んだと思ってもらえるところに落ち着けようと、お通しを廃止することにしました。

最初は、そこまでやったところで増税インパクトでそもそも来客が落ち込むかもしれないし、単なる無駄な値下げにならないか不安でした。しかし11月現時点の経過としては、それまでの来客に10月からのリピート客があらたに加わって、8月、9月よりは良い結果になっています。

軽めに食事したい方にはそれなりにリーズナブルに、しっかり食事されたい方にはこれまで通り十分に、お支払いしてもらえる形にひとまずはなったようです。それまでと大きく変わったのは、短期間でリピートする軽めの食事に使う人が増えたことです。


増税は食材以外のところで店の財政を圧迫してきますが、これを良機にふんばりたいところです。


【記憶に残ったお店の味 その3】

鶴橋駅の高架下に広がる商店街に、デイリーヤマザキがあります。週に3、4回は仕入れのついでにここに立ち寄ってしまいます。

ここのデイリーヤマザキは、どうやら山崎製パンの総力が集められた店舗のようで、いつ立ち寄ってもパックされたパンだけでなく焼き立てパンが充実しています。それらがリーズナブルで種類豊富なため、チェックするのが楽しみでもあります。


今も昔も、ヤマザキ製の菓子パン・惣菜パンはどんなコンビニやスーパーでも見かけますが、たまに食べるたび、すごいなと感じる点があります。


ひとつは、一口めから最後までおいしく食べられること。

生地の端っこまでクリームや具が入っていないために、最初もしくは最後の一口のモソモソしたパン生地を食べてさみしさを感じたという経験が誰しもあると思います。

個人の感想ですが、ヤマザキのパンにはそれがない。

決して、端っこまで「たっぷり」クリームや具が入っているわけではない。ただ、「足りない」という気持ちを起こさない程度の量が入っている。本当のところはわかりませんが、これはしっかりとした計算だと思っています。


もうひとつは、ネーミングから受け取る印象をかならず回収する食べごたえがあること。

たとえば、「サルサドッグ」というホットドッグ系パンがあります。

手に取ったその瞬間から、食べる前に人それぞれの「サルサ感」を思い浮かべることでしょう。その気持ちを胸にしながら食べ終えた時点で、「おれは今、サルサドッグを食べたぞ」という感想を過不足なく抱ける。そのちょうど良さがヤマザキのパンにはあると思っています。

世の中にはもっとスパイシーなサルサをのせたものや、もっと立派でジューシーなソーセージが挟んであるものもあるでしょう。

しかしヤマザキのそれは、コンビニのような手軽な場所で、そこで売られている程度の価格で味わう「サルサドッグ」としては、もの足りなさを感じさせない、十分な味だと感じるわけです。


いったい何種類あるか想像もつかないヤマザキの商品群。その全体をとおして、この2つを達成しているところに底知れないノウハウの蓄積を感じてしまいます。本当のところはわかりませんが。


ちなみに、手作りパン食べ放題をウリにした店について。デニッシュ系のパンを多く並べるところより、ロールパンやテーブルパンが充実しているところのほうが、自分は「パンへの愛」があるように感じます。発酵や整形の手間ひまがかかっているのは後者だからです。





消化する知恵

【近況】

この時期、昔からの汗かき体質が災いして、朝晩の冷えに対策してやや厚着して出発すると店に着く頃には汗だくになっています。

毎日仕入れの荷物を両手にもって、やや早歩きで移動しながら、最後はビルの二階にある店舗まであがるわけですから仕方ありません。それを見越して多少は薄着にするなり、上着をカバンにしまっておくなりできないか?とは思いますが叶いません。お腹が冷えやすいのも昔からの体質だからです。

朝からどれほど脂っこい食事でも全く気にならないですし、胃痛を感じることは年に一回あるかないかというほど胃は元気ですが、腸は繊細なようです。昔は、いかにその不調を押さえつけるか?に頭を悩ませていましたが、最近は、不調を訴えてくれるときは食生活に偏りが出ているという信号だとありがたく考えることにしています。


胃腸の不調は慢性的だと仕方ない現象だと受け流しがちですが、食べたものの消化がよくないまま腸までたどり着いてしまうと、それまで平気で口にしていた食べ物からアレルギーを発症する場合もあるようです。

アレルギーと一口にいってもまれに命にかかわる場合もありますし、その後長い年月悩まされるものもありますから、自分にとって消化がよい食事、調子を整えてくれる食事が何か、を普段から知っておく必要があると感じる次第です。


【ぽんたんのキッチン紹介 その3】

当店のメニューは定番メニューが24種類、日替わりや季節のメニューが5〜6種類の合わせて約30種類あります。オープンさせたときはおよそ半分くらいだったと思います。1年と4カ月が経ちましたが、その間で今がバージョン5くらいのメニューです。


味付けに関しては、かならず既に世に出ているレシピを手本につくることにしています。

手本に取るのはお金を出して買った本にします。無料で見られるネットに落ちているレシピはなるべく見ません。


初めは、思いつきや感覚でレシピを考えて味見しながら調整していました。その方がオリジナリティがあって、作り込んだレシピになると思っていたからです。


実はこの「味見」が厄介もので、作ったものを何度も味見していると舌の感覚がどんどん鈍くなってきます。

また、「こんなに頑張ったんだから美味しくなっているはずだ」という思い込みに襲われることも多くありました。

初めて口にしたときの素直な味の印象には戻れなくなってしまうのです。結果、時間だけかかった、なんだかぼんやりした味のレシピがいくつも残りました。


そこで、ひたすら既存のレシピを手本に取って、ひたすらなぞるように作ることを始めました。初めは、レシピを何度も見返したり量をはかったりするのがとにかく面倒でした。

でも、こうやって完成まで味見することなく仕上げたものを食べるとやはり最初に口にした印象がしっかり味わえる。これで、実際に食べるお客さんの感覚に近いメニュー作りができると思ったことを覚えています。


その中で特においしいと感じたものを選び、店でも提供できるように食材や仕込み、味付けを全体のバランスから調整して、残ってきたのが今のメニューです。どのメニューがどのレシピを出典にとったか説明できると思います。



ネットに落ちているレシピは見ないと書きましたが、例外があって、辻調理師専門学校のサイトにあるレシピ検索はかなり頼りになります。

レシピにかぎったことではありませんが、匿名ではなく、名前や看板を背負ってリリースされた情報はおのずと信頼できる内容になるのかもしれません。


※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。

おでんの適温

【近況】

ようやく夜の気温も下がってきて秋らしくなってきました。とたんに、9月末ごろから始めた「おでん」が徐々に、というより急に人気を集め始めました。

すこし前まで、これ以上注文が入らないようなら止めようと思っていたほどでしたが、おでんを始めるのが早すぎただけのようです。

当店のおでんはシンプルであっさりしたおでんです。だしは函館産の真昆布と鶏手羽、おでん種は、大根、たまご、ちくわ、厚揚げ、こんにゃくが基本のラインナップです。

 

昨年はおでんを断念したという悔しい経緯がありました。

その時は、おでん種も他の料理とおなじくらいは手をかけたものにしようと力が入りすぎてしまっていました。手作りのひろうすやつみれ、しんじょう等、仕上げたものの、このままだと普段の仕込みが間に合わないという判断であきらめたのでした。

今年はもう考えすぎないようにしようと、メニューの幅をすこし広げるくらいの意気込みで取り組みました。

結果、気軽に食べてもらえるくらいの価格で、早く提供でき、仕込みの負担も少ない人気メニューができたのでまあよかったなというところです。

「味を足す」ことに気を取られていた去年の試作おでんと違い、今回のおでんは「味を抜く」がキーワードになりました。特に、下茹でした大根は1〜2時間水にさらすことでよりおいしいおでんになるそうです。

 

【ぽんたんのレシピ紹介 その3】

今回は当店ほとんどのメニューの基本「だし」の取り方について。

レシピというほどのものではありませんが、今のところ当店で仕込むときの手順と基本の分量は次の通りです。

 

・水 2リットル

・昆布 40グラム

・削り節 60グラム

 

①鍋に水を張り、昆布を入れる

②沸騰直前まで火にかけ、弱火に落とす

③昆布に爪を立てて、爪あとが残るほど柔らかくなったら引き上げる

④いったん火を強め沸騰させ、コップ一杯ほど水を入れて沸騰をおさえたらすぐに削り節を入れる

⑤一煮立ちする直前に火を止める

⑥削り節が沈みかけるくらいで布とざるで濾す

※クセが出るのでだしガラは絞らない

※すぐに使わない場合は鍋やボウルにうつし、氷水に当て冷やします


使う材料にもよりますが、大体はこの分量でかなり味のしっかりした「一番だし」ができます。 過去にだしを取ってみたことはあるけど、あんまりおいしくなかったという人には一度ためしてほしい味わいです。


このときのだしガラを 1リットルの水に入れて沸騰させ、さらに削り節をひとつかみ入れて二割ほど煮詰めてできあがるのが「二番だし」になります。


それぞれ、

一番だし…

だしの香りを活かしたい吸い物やすまし汁、野菜など淡白な素材に強いうまみと香りを加えたい料理に使う


二番だし…

一番だしより香りが弱くクセが強く出ているため、味を濃いめに仕上げる煮物や味噌汁、炊き込みご飯に使う


といった特徴はあるものの、絶対そうしないと台無しになるというものでもないので、各人の事情にあわせて使っていけばいいと思います。


当店では味噌汁以外はすべて一番だしでまかなっています。自宅ではもったいなくてなかなかできませんが…


※調理工程や、使う調味料について等、詳しく知りたい方は遠慮なくお店でもネット上でも質問ください!可能なかぎりお答えします


スパイシーな雨の日

【近況】

雨の多い1週間でした。ランチも夜も、如実に客足が遠のきます。いつもは数組断ってしまうような慌ただしいランチタイムも雨の日は静かです。

湿気のこもる雨の日は、湿気に乗って匂いの成分も鼻に届きやすいように思います。雨の日の満員電車が不快に感じるのも、湿度にくわえて多くの人々がまとう匂いが押し寄せてくるからでしょう。

そんな日には、食事もやや尖った香りを生かした料理を楽しみたいものです。スパイス、香草を効かせたカレーなどのエスニック系は、じめっとした日の気分を香りの面で清めてくれると思います。

というわけで、当店でもランチタイムにカレーを検討しています。夜の時間帯にはすでに提供しているのですが、スパイスで数日マリネした豚挽き肉とトマト、その他野菜とホールスパイスをふんだんに使ったカレーです。ランチ用に食器を買い足すほど利益に余裕が見込めたら、の話ですが。


【記憶に残ったお店の味 その2】

私は2005年に大阪で外食業界に就職し、2009年に東京へ転勤、2018年に関西へ戻り、当店を開きました。

就職した当初は本当に忙しく、週に1日あるかないかの休日はいかに心身を休めるかに苦心したものでした。

そんな中、休日の1番の楽しみでもあり、癒しにもなったのは何といっても食事であり、それらは具体的に焼肉、ホルモン焼きでした。休みの日は、店から朝方いつものように帰ってきては夜まで眠りこけ、のそのそと起き上がっては焼肉を食べに出かけたものでした。

千日前通商店街におおきな看板をかかげる「アジヨシ」、当時の梅田東通りに1店舗めができたばかりの「龍の巣」、東心斎橋の小学校裏に七輪が煙を上げる「味希」。今の自分がどれほど高価でおいしい焼肉を食べに行ったとしても、当時元気に飢えていた自分がこれらの店で味わった感動を焼肉に感じることはないでしょう。

鶏、豚よりもずっと長い時間と大量の餌を食べてじっくり育つ牛。まさに英気を養うための食事でした。

かように、大阪時代には焼肉やホルモン焼き、牛すじ煮込みなどの牛肉食の素晴らしさを骨の髄まで楽しみました。そんな自分が、東京に転勤して残念だったのは、おいしいホルモン焼きや牛すじが手軽に食べられないことでした。

東京のホルモンはいわゆるもつ焼きであり、豚ホルモンが名物です。それはそれで独特の風味が酒場らしい雰囲気とあいまって素晴らしい味わいなのですが、やはりここぞというときには牛の力を借りたい。しかし、東京ではそれなりにお高い店に行かないと(そこらへんで出くわす店に何となく入ってしまうと)大阪で当たり前に食べられた味と出会えず辛い思いをしたものでした。多くの飲食店がひしめく東京ではかつてないハズレを引くことも多く、大阪にいる頃よりも店を探す嗅覚を鍛えられたように思います。食べログのようなサイトが多くの人に必要とされたのも、道理だったように思います。


※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。




冬が来る前に

【近況】

当店は基本、店主1人体制のところにオープン当初からの助っ人が空き時間を作って手伝ってくれています。先週は2人体制の日が週の半分あったので、新しいチラシや海外客向けメニューを作る相談をしていました。ポスターやチラシのデザインもこなせる助っ人です。

 

このチラシというものもなかなか試行錯誤を求められる存在です。

写真や文章にこだわって作り込みすぎても、面白みに欠けて見えることもありますし、紙質が粗くて内容が素っ気ないチープなチラシでも、逆に興味を惹きつける場合もあります。

オープンして1年くらいは、なんせ自信がありませんからチラシにせよ何にせよ「なるべく飾り付ける」ことを意識していましたが、自分たちにできないこと、身の程を過ぎたことはいくら飾ってもお客様に見抜かれてしまうようです。今年はもっとすっきりと当店の良さを伝えるチラシにしようと思います。

 

【ぽんたんのキッチン紹介 その2】

当店では土鍋ごはんを名物に掲げていますから、炊き込みに使うダシに関しては昆布や削り節をいくつか試して現在のものにたどりついた経緯があります。

昆布にも、利尻・日高・羅臼などの産地の違いがあり、さらにほとんど明記されることはありませんが昆布の養殖方法による味の良し悪しもあります。

くらべてみると、独特の香りがある、色が濃い、コクが強い、味が出るのが早いなど個性があって面白いものでした。現在採用しているのは函館で取れる真昆布で、低温で時間をかけないと旨みが引き出しにくいのですが、すっきり澄んだ旨みと上品な香りが他にはない昆布です。さまざまな炊き込みごはんの具材を活かすと思ってこれに決めた記憶があります。

 

家庭ではめんつゆや濃縮ダシを使ってももちろん簡単に炊き込みごはんが作れますが、あえて具材と「塩」だけで炊くというのも、お米のおいしさが味わえるかもしれません。

洗ったお米と具材を炊飯器に入れ、分量の水に1%の塩を入れます。お米2合であれば、水分量は360ccなので塩3.6g(小さじにすりきり1杯+2つまみほど)。具材から出る味とお米の甘みを、わずかな塩味が引き立てます。普段の炊き込みごはんに飽きたら試してみてください。

ちなみに、巷に出回る「化学調味料無添加」をかかげた濃縮ダシや粉末ダシには、ほとんどの場合「化学調味料」に「精製」される前の段階のエキスや分解物が「調味料」という名目で、使用されています。

これらは食品表示の法令上で「添加物」に分類されないことになっています。そこを利用して「無添加」を謳っているわけです。

旨みを強化するという役割は似たり寄ったりですから、それらを使って「自然な味を味わった気分」になるよりは、添加物のあるなしにこだわらず自分や家族の口に合ったものを選ぶほうが豊かな食事になると思います。

 

※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。