炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

空腹感2.0

【近況】

誰かのお腹が減ってもらわないと、自分たちの仕事はなかなか商売になりません。食事は味付けや空間、演出ももちろんですが、何よりお腹が空いている、喉が渇いているからこそ、よりおいしく感じるはずです。

ごくたまに、グループでランチを食べに来て1人だけ半分も箸をつけずに帰っていかれる人を見かけます。おそらく、上司か得意先に誘われて断れず、すでに昼食を済ませているのに付き合いで出て来たのではないかと勝手に想像しています。自分も経験がありますがそれはそれでご本人も辛いところでしょう。

 

最近はリモートワークで外出が減っているようですし、そもそも普段の生活も通販やスマホの発達でいろいろ便利になってきて、心地よい疲労感が味わいにくくなったように思います。

自分自身、欲しいものを探しに書店やCDショップや服屋、家電量販店をハシゴするようなことも今はほとんどありません。

頭を使うことも、日常生活程度のことならスマホで調べれば済みますし、タスクや予定はリマインドされてくるのが当たり前になったので、頭の片隅に置くことさえありません。

 

こういう調子で、普段から頭や体に心地よい疲労を感じることが減ってしまったので、自分としては心地よくお腹が空くこともおなじように減ったと感じます(加齢のせいかもしれませんが)。自分は食べることが好きなので、毎回の食事はできるだけ腹ぺこで臨みたい。

なので最近はわざわざ「ちょっと疲れにいく」気持ちで、休みの日に足を外に向けることがあります。

 

これからの時代、店に足を運んでもらうのも、居心地の良さや経済的なお得感だけでなく、そういった「ちょっと面倒な楽しさ」を刺激する必要があるのかもと感じるこの頃です。

 

【記憶に残ったお店の味 その8】

フランス料理に対するイメージがぐっと身近になったのは、十年くらい前に社員旅行でニューカレドニアに行ったときがきっかけでした。

それまでは、ホテルのレストランで結婚式のときにご馳走になるような、もしくは重役クラスの人々が会食で使うといった、高級で非日常の食べ物だという感じで、とても普段着で食べに行けるジャンルの食事のイメージはありませんでした。イタリア料理はすでに日本でカプリチョーザという食堂イメージのレストランがあったので、もっと身近な存在だったと思います。

 

ニューカレドニアはフランス領ということで、街中でふらっと入る店、車で立ち寄った田舎の道路沿いにある店、ガイドさんがお勧めしてくれた店、基本は土台がフランス料理です。それらが、今までフランス料理に抱いていた「高そうなお皿にちょこっと」「繊細な盛り付け」「がっつり食べられない」という思い込みを吹き飛ばす、力強い料理の数々だったので衝撃的でした。

山盛りのフレンチフライとインゲン豆の上にどかっと盛られたステーキ、シェアしてもなお1人分以上ありそうなクレームブリュレ、分厚く切り分けられた鴨のロースト、無骨な大きさのフォンダンショコラ、全体的にどっしりした味付けは圧倒される食べ応えでした。そして、そんなに広くない店でお客がガヤガヤとしゃべりながら過ごす雰囲気もまた、イメージを覆してくれた一面でした。

 

そんな気取りのない気楽な食事で、初めてフランス料理を魅力的に感じました。もちろん日本にもそういう普段使いのフランス料理店は相当あるのですが、その頃はまだそんな店の存在は知らなかったので新鮮でした。先に本場(といってもニューカレドニアですが)で触れることができたのは良かったと思います。

 

その後日本で何度か足を運んだフランス料理店が少しだけあって、中でも渋谷にあるコンコンブルという店は、その当時の楽しかった時間を思い出すことができる好きなお店でした。

雰囲気も料理も気取った感じがなく、お腹いっぱいまで堪能できます。ジャンルは違えど、店で過ごす時間とお腹いっぱいまでお酒と食事が堪能できる空気感は、つねに意識して見習いたいお店の1つです。

閃きはすべり気味

【近況】

6月に入り、ランチに戻って来られる方がちらほらと増えました。お客さんによっては2か月以上も完全リモートワークだったという声も聞きます。

しかし3月までランチにしょっちゅう来てくださっていた方の中でも、今もまだお見えになっていない人もたくさんいます。人の流れが変わった中で、また新たなお客の層を作っていく必要があることを感じます。

 

3月後半あたりから5月後半までの間は、たくさんのアイデアが思いついては消えていった2か月でした。

特に、4月頭の緊急事態宣言が出たあたりはやたらとメモが残っていて相当焦っていたんだろうなということが伺えます。

 

・早朝からオープンする

自粛期間とはいえ、出勤している人はそれなりにいるので営業時間を拡大すれば少しずつでも売り上げが伸ばせると思い検討しました。

大手チェーンのコーヒーショップも休業中でしたので期待を膨らませて周辺を朝歩いてみました。

多くの人が流れる時間がたいへん短かった(8:30から9:00まで)ので、あきらめました。

 

・テレワークスペースにする

フリーWi-Fi、電源使用可で、ランチが始まるまでの2時間くらいをワンドリンク付きのフリースペースにすることを考えました。

試しに、店の前の道をどれくらい人が通るか調べようとカメラを置いて見ながら仕込みをしてみました。ゾッとするくらい人が通らなかったので、あきらめました。

 

YouTube配信

あまりに日々することがなくなったらやるべきかと思い、検討しました。

毎日1種類ずつ土鍋ごはんを炊いて紹介する、ひたすら好きなレシピ本を紹介する、毎日の仕込み風景をただただ流す…等々、いろいろ考えました。

幸い、全く来客がないような日はなかったので、実行には至っていません。

 

ほかにもまだまだ色んなメモが残っていて、紹介するとキリがありません。

やってみて良い反響のあったものもありますので、無駄ではなかったのかなというところです。

 

ひとまず安心できるかどうかは別としても、少しずつはお客さんも戻ってきてくださり、外食を楽しむ時間を過ごしてくれているのを見られるようになって何よりだと思っています。

 

【ぽんたんのキッチン紹介 その10】

鶴橋駅の改札を出た周辺にある商店街に、包丁や厨房器具を売っている「源正道商店」という刃物屋さんがあります。

驚くのは、建物としての店舗があるのではなく、リヤカーで運んできた包丁やまな板や鍋などの調理器具を、近鉄電車のガード下の道に並べて売っている「露店」である点です。

刃物の露店というのは色々セキュリティがよくないような、武器があるという点ではセキュリティが非常に強いような、変な感じがします。しかも、一部の包丁は剥き出しで簡素な棚に無造作に積まれていたりします。(売れるまで刃は研ぎ上げていないそうですが)

だいたい1人の男性(見かける限り、平日と土曜で違う人)が、接客以外の時間はひたすら包丁を研いでいます。

 

数ヶ月前に、いよいよ包丁を買ってみようと思い立って仕入れの途中に寄りました。何にでも使えそうなあまり大きくない洋包丁を買うことにしました。

支払いをしている間、いろいろ話を聞くことができました。30秒に一回くらいは「うちの包丁はめちゃくちゃ切れるから」と会話に挟む印象的なおじさんです。

かつての鶴橋には鮮魚卸売市場があるおかげでお寿司屋さんが多くあり、それらの板前さんはほとんどここで包丁を買ったり研がせたりしていたそうです。もっともその頃は固定の店舗があったようですが…

 

肝心の切れ味のほうは、失礼ながら正直心配していたところもあったのですが、いざ使ってみると目につくもの何でも切りたくなるくらいの素晴らしい切れ味でした。近々、他の包丁も一緒に研ぎ直してもらいに行く予定です。

ピンチが来たりて上を向く

【近況】

自粛営業でしばらく仕入れの足が遠のいていた、市場のお店にも少しずつ顔が出せるようになりました。いつも大した量を買っていたわけではありませんが、久しぶりに行くとこちらの状況を気遣ってくれる声をかけてくれるところばかりでした。少しでも頻度をあげて仕入れに行けるようにと、一層強く思う一週間でした。

 

緊急事態宣言が解除されて、デリバリーの需要が一度に落ち込んでいると聞きます。当店は費用とキャパシティの釣り合いを考えてデリバリーに対応しないまま現在を迎えましたが、宣言期間中はテレビやネットや新聞やと、デリバリーが大盛り上がりという空気が気になってしまい、早く始めないとと煽りを受けているような心境にかなり焦らされました。この1ヶ月は肉体的な疲労はありませんでしたが、そういう心理的に迫られる疲労は過去にない1ヶ月だったと思います。

 

客足はまだ半分も戻りませんが、週末は久しぶりに席が半分以上埋まりました。第二波までの間は、飲食店はまだこれから徐々に戻っていけるかもしれませんが、より厳しい状況におかれる業界が出てくるとも見聞きします。自分が励ましをもらった分を返せるくらいには、役立てるような行動を取っていきたいと思う次第です。

 

【ぽんたんのキッチン紹介 その9】

内装について。

オープン前、物件探しと並行して、内装をどこにお願いするか考えていました。

そこで、今まで自分が通ったり気になった店の内装をデザインした会社を探そうとなり、書き出すことにしたと思います。

そのとき、かつて奈良駅前の店で働いていたときに近所に格好いい焼き鳥屋さんができて、何度か訪れたことを思い出しました。古い一軒の二階建てがまるごと焼き鳥屋さんで、入口も店内も雰囲気があって、奈良を離れてもずっと気になっていた店でした。

 

ネットで調べた結果、意外にあっさりとその内装を手掛けたチームとアポイントが取れることになりました。その後他社もいくつか検討しつつも最終的にはそこに依頼することにまとまったのでした。atelier juseという会社でした。

本来なら、価格やデザインを出してもらって比較して決めるところなのかもしれませんが、担当のお2人とはコミュニケーションの距離感が非常にしっくりくる感じがあり、もうどうあってもこのお2人に依頼しようと思って決めました。

 

お店のイメージを何度か打ち合わせたのちに、素案を出してもらってからは基本的にはお任せでできあがりました。高価な素材や装飾はありませんが、以前の居酒屋然とした内装からは本当に信じられないような生まれ変わりようで興奮したことを覚えています。お客さんからも褒めてもらうことが多く、そのたびプロの仕事に感服しています。

 

ちなみに、隣のビルで当店より先に焼き鳥屋さんを開いておられたオーナーさんが、偶然にも前出の奈良の焼き鳥屋でバイトしていた方でした。二重にご縁を感じたのも印象的でした。

 

今回、いずれ来たるコロナ危機の第二波に備えて新しい層のお客さんへの訴求、飲食店としての可能性を広げる必要を強く感じています。

そこで、内装を手掛けてもらったお2人にも久しぶりに連絡をとり、知恵をもらいながら新しい取り組みを考えることになりました。楽観できない事態だからこそ、今しかできないことに知恵を絞っていこうと思っています。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【毎日のごはん作りを手伝います!店主がお料理アドバイス

料理にまつわるいろんな『聞きたい・知りたいこと』お答えします!

✉️メールは
taitoko.pontan@gmail.com

📲または
https://peing.net/ja/e1d2f6005e5205?event=0

まで!

 

 

おいしくならない思い込み

【近況】

夜の営業を再開するにあたって、常時30品ほどあったメニューをリセットすることにしました。

1日に1組来るかどうかもわからない状況なので、いったんは絞りこんだ材料で、なおかつランチやお弁当にも転用できるメニューラインナップに見直しというかたちです。

 

今までは、このメニュー外すのどうしようと迷うものもあったりしましたが、そんな踏ん切りのつかない問題もこの状況ではずんずんと断捨離されていきます。

ただ、あまりにも始末よくしようとし過ぎると、それはそれで面白みのないメニューばかりになるので難しいところです。

 

常に3.4種類は土鍋ごはんを用意していましたが、それも1種類にしぼっています。

逆に、ランチで炊いたご飯が使いきれないことが増えたので、おいしく食べるためにお茶漬けや焼き飯をメニューに加えました。

これらをリピートしに来てくれる方が増えてきつつあり、怪我の功名というか新たな可能性が見えなくもありません。

 

あとは、これまでやってみたかったけど手間が多くて避けていた料理を出したりしています。和風にアレンジした田舎風パテや、昔よそで食べて感動したハムカツコロッケなど、いろいろやっています。

 

ランチメニューをお弁当にして販売もしていますが、意外に反響があったのは予約限定の「鯛めし弁当」でした。今後も定番メニューにしていくことになりそうです。

 

自分で思い描いたように一つ一つ形にしていく苦労は多々ありますが、最終的にはお客さんの反応が集まって本当の形が決まるように思います。来月、再来月には店がどうなっているのか、不安半分期待半分で過ごしています。

 

【ぽんたんのキッチン紹介 その8】

キッチン紹介というか、キッチンにまつわる自分の反省話です。

中途半端な知識が邪魔をして、長らくおいしい食べ方を逃していた、という経験があります。

 

立ち食いそばに行くと、天ぷらそば(うどん)に乗せる天ぷらは、だいたい常温で置かれています。

自分は、これが揚げたてだったらどんなにおいしいだろうといつも小さな不満を感じていました。

 

しかし、実は「揚げたての天ぷらには、常温程度に冷ました天つゆを使う」というセオリーがあります。そのことを、長らく知りませんでした。

揚げたてのまだ熱い天ぷらを熱々の汁に浸すと、衣が汁を吸って崩れてしまいます。せっかく衣をきれいに纏わせて揚げた海老天も、一瞬で剥がれて台無しになります。

だから、温度差のあるぬるい天ぷらを乗せる立ち食いそばは理に適っているのです。ちょっといい蕎麦屋さんで天ぷらそばを頼むと、揚げたての天ぷらに天つゆが別で添えられて提供されることがあります。

それなのに自分は、天ぷらそばを作るときはわざわざ天ぷらの揚げたてとそばの茹でたてのタイミングを合わせたりして、熱々の天ぷらをそばに乗せて食べづらいなあと思いながら自己満足に浸っていたのでした。

 

また、ステーキや唐揚げの火の通し方もわかっていませんでした。

「中心に火を通しすぎない」というのが何より大事だと思い込んで、表面だけが焼けたカツオのたたきみたいなステーキを振る舞ったり、揚げ色がまだつかないグニュっとした唐揚げを絶妙な揚げ加減だと悦に入っていたりしました。どちらも、メリハリのない半端な仕事で、食材に失礼なことこの上ありません。

 

自分の子どもが大きくなるまでには、「人間にとって、思い込みほど手に負えないものはない」と教え続けようと思います。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【毎日のごはん作りを手伝います!店主がお料理アドバイス

料理にまつわるいろんな『聞きたい・知りたいこと』お答えします!

✉️メールは
taitoko.pontan@gmail.com

📲または
https://peing.net/ja/e1d2f6005e5205?event=0

まで!

出たがりの苦労

【近況】

中学2年まではゲームっ子でした。なぜはっきり中2だったと言えるかというと、親にギターを買ってもらったのがその歳だったのを覚えていて、その頃を境にテレビゲームから遠ざかったからです。

別にゲームがつまらなくなったとかではなく、自然とギターの練習のほうに比重が傾いていきました。その後、新しいゲーム機を買うことは無くなりました。

 

テレビゲームにはいろんなジャンルがありますが、一番多くプレイしたのはアクションかRPGだったと思います。逆に、もっとも縁がなかったのはシミュレーションゲームでした。

ボタンを押せばすぐ反応が来るアクションゲームや、とにかくストーリーを追い続ければ終わりが来るRPGは性に合っていたのですが、シミュレーションゲームはダメでした。戦略を立て、コツコツと武力を高めて陣地を広げていき、少しずつ発展させ…みたいな地道な作業が我慢ならなかったのです。

 

仲のいい友人が三国志信長の野望にハマっていましたが、まったく興味が持てませんでした。

親との約束でゲームは1日1時間だったこともあり、短時間で目立った動きが見えないシミュレーションゲームは時間がもったいない気がしていたのもあります。

 

そんな性分なので、独立開業をめざしたのもいわゆる経営者になりたかったわけではなく、自分で作りたい食事を作って目の前で食べてもらうという繰り返しがやりたいというのがまず最初にありました。いわばアクションゲームの感覚です。ゆくゆくそのことで生計を立てられるようになれば、会社で働くよりも自分と家族の時間がもっと充実するだろうと思っての選択でした。

 

何か取り組みを始めるときに、事前にある程度の数字とタスクを洗い出して細かく計画は立てるのは好きですが、スタートしてからプレイヤーとしてその計画を追うのはかなり苦手です。始まってからは肌感覚で方向性を決めてしまいます。

 

こんなことでこの先大丈夫だろうかと不安がなくもないのですが、この2年を振り返るとずいぶん楽しくやってこれたので、しばらくは自分の感覚にしたがってやっていきたいと思っています。

 

【おすすめレシピ本 その5】

レシピ本ではなく、ノンフィクション風の伝記小説です。

「美味礼讃 / 海老沢泰久」文春文庫

辻調理師専門学校創始者である辻静雄をモデルにした物語です。

まだ日本にフランス料理が伝わっていないころに、もともと料理人でもなかった元新聞記者が料理学校を立ち上げて、一生をかけて本場のフランス料理を日本に紹介し、料理人を育て続けたというのがその物語です。

 

日本でフランス料理が当時どのくらい無理解だったかという話(トリュフは入手しづらいので黒オリーブを刻んで使う など)や、料理学校の経営を軌道に乗せるまでの話、満腹の限界を超えてもなお現地で料理を食べ続け、日本に知見を残そうと覚悟する話など、読んでいて興奮するところが何箇所もありました。

 

作家によるノンフィクションであるとはいえ、辻静雄本人の著書を読めば、安易に誇張した物語ではないことは理解できます。

初めて読んだ当時も、今もなお勇気をもらっている本です。

 

何年か前に、ヨーロッパのチーズを専門に輸入する会社の社長の話を聞いたことがあります。

今のように輸入のナチュラルチーズがスーパーに並ぶような時代よりもっと以前から手掛けておられる方でした。そのとき「ヨーロッパのチーズを輸入するというのは日本でいえば数日しか保たない生の豆腐を輸出するようなもの。鮮度や衛生面におけるリスクの塊なのに、こんな厄介なものを誰が輸入しはじめたんだろうと思う」という話が出てきたことを今も時折思い出します。

 

フランス料理の知識や技術もさながら、昔の日本になかったのに今では当たり前のように日本で手に入るものはたくさんあります。それらを日本へ持ってくる仕事を手掛けた人がいたこと(今も、そういう人はいるのだと思います)、その段取りの苦労を思うと、いつもため息が出る思いがします。

 

ちなみにその社長は、輸入したチーズが日本に到着する日は今でも深く眠れないそうです。

検査しだいでは一回の輸入分が全量破棄となることもあったり、日本に持ち込んではいけないカビが生えていたりすることは何度もあって、布団の中でそういう日のことを思い出すそうです。改めてチーズの有り難みを感じた日でした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【毎日のごはん作りを手伝います!店主がお料理アドバイス

料理にまつわるいろんな『聞きたい・知りたいこと』お答えします!

✉️メールは
taitoko.pontan@gmail.com

📲または
https://peing.net/ja/e1d2f6005e5205?event=0

まで!

 

締めて緩めて五月来て

【近況】

最終的に4月は昨年の1/4程度の売り上げとなりました。夕方以降の売り上げだけでいうと、4月中旬以降は酒類提供が19時までの20時閉店ですからお酒を飲みに来た人はほぼおらず、昨年の1/50ほどでしょうか。

 

来客が減った店内にいて意外に辛かったのは、売り上げ面だけでなく、それまで当たり前だった空気の流れ(お客を出迎える、注文を受ける、料理を作って出す、礼を述べて見送る)が止まってしまうことでした。人が住まない家は傷むのが早いといいますが、店にも同じようなことが起こるのだと思います。

 

こんな時に有り難かったのは、かつての常連様や古くからの友人らが入れ替わるように3日と空けずに訪問してくれ、お弁当や一品テイクアウトを買っていってくれたことでした。

それに、厳しい状況なのは何も飲食店に限った話ではないのに、繰り返し励ましの声をかけてもらい、有り難いと同時にゆっくり食事とお酒でくつろいでもらえないことがもどかしいばかりでした。

 

振り返れば独立を決めたときに、ゆくゆくは弁当屋さんの勉強もしたいと思ってはいましたが、まずは食事をしてもらえる場を作ってそこに立つことがしたかったわけで、今テイクアウトやデリバリーへ舵を切ろうとしているのは止むに止まれず急場を凌いでいるだけでしかありません。

しかし、仮に夏ごろ終息に向かって少し客足が戻ったとしても、また冬になれば同じ自粛の繰り返しかもしれません。自分を納得させられる次の一歩を決めるのにはまだ時間がかかるようです。

 

【ぽんたんのレシピ紹介 その10】

海に近い地域ならまずそんなことはないと思いますが、外で食べるお刺身とスーパーで買って家で食べるお刺身はずいぶん違うように感じます。

家で食べるお刺身に飽きた、もしくは食べきれないときのための、一工夫アイデアです。

 

①昆布締め

鯛やヒラメといった白身に適しています。

なるべく平たいだし昆布を買ってきて、刺身のサクごと上下から挟んで輪ゴムで止めてラップし、一晩寝かせます。

水分が抜けて味がしっかりするので、普通のお刺身より薄めにスライスしてください。

わさび醤油もいいですが、おろししょうがと土佐酢(市販のポン酢を水で薄めても)はより合うと思います。

 

②ユッケ風

まぐろやカツオなど赤身のお刺身に使えます。

コチュジャン、醤油、砂糖、ごま油を全て大さじ1ずつ合わせてよく混ぜます。そこから、好みに合わせていずれかを足しながら調整してください。

辛さを足すなら一味唐辛子、香り付けにおろしにんにくを加えます。

刺身を細切りにして和え、卵黄、白ごま、刻みネギ、海苔あたりを添えるといいでしょう。

 

③ごま醤油

ブリやアジ、カンパチなど青魚に合う醤油です。

市販の白ねりごまに、刺身に使う醤油を混ぜるだけです。混ざりにくいので泡立て器でしっかり混ぜます。ごまだれではなく、ねりごま(原材料はごまだけ)です。

割合はお好みで、ねりごま小さじ山盛り1に醤油を少しずつ足して調整するのがいいと思います。

甘くないごまダレのような仕上がりになりますが、ごまのコクと香ばしさで青魚特有のクセが和らぐのと、ごまの渋みのおかげか刺身の甘みが引き立っておいしく食べられます。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【毎日のごはん作りを手伝います!店主がお料理アドバイス

料理にまつわるいろんな『聞きたい・知りたいこと』お答えします!

✉️メールは
taitoko.pontan@gmail.com

📲または
https://peing.net/ja/e1d2f6005e5205?event=0

まで!

芯があっても薄めのこだわり

【近況】

「粋な味付け」「粋な盛り付け」に憧れます。緊急事態宣言が延長されることを前に、今後の営業内容をどうしていくか思案していたら、そんなことが頭をよぎりました。

「粋な」というのは、勝手に自分が感覚でそのつど規定しているだけで、具体的にどういうものが粋かという決まりはありません。

あえて言葉にしてみると、「押し付けがましくない/主張しすぎない/いい具合に力が抜けている」センスの良さ、といったところでしょうか。

 

学生の頃にアルバイトしていた居酒屋に、その会社の料理主任とされる人が期間限定で勤務することになりました。普段は日本料理部門に勤務しておられたと思います。

その人が、それまでスタッフの誰もが安っぽいと思ってあまり使っていなかった器を使って、きれいなお造りをサラッと盛りつけたのを見たのが、初めて粋な盛り付けを意識した時だと思います。

派手な器や飾り物に頼ることなく、最低限のツマとあしらいだけでしっかりお金を取るにふさわしい仕上げを行う姿勢は、今もずっと手本にしています。

 

自分の仕事に自信がないときは、つい小細工や量に頼るなどしてインパクトのある盛り付けにしたり、もっともっとおいしくしないとと、力が入ってつい濃い目の味付けにしてしまいがちです。「お客さんのためを考えて」といいつつ自己満足にとどまってしまうもので、大変難しいところです。

あと2ヶ月で開店から2年が経ちますが、まだまだこのあたりの手加減は未熟です。メリハリのある仕事を心がけたいと思います。

 

【何でもない話 その2】

店をやっていて、メニューやポスターに「注意事項を増やす」ことほどつまらない作業はないといつも感じています。

あまりに注意事項が目立ってしまうと、安っぽく感じてしまう気がしています。店は食事でくつろいでもらうための場所ですし、くつろぎながら自然に振る舞ってもらえるのが一番なので、店を利用する上での注意点は意識せずともどのお客さんも踏襲できる仕組みが理想だとは思います。 

 

なので、メニューの文言を考える時はよく悩むのが、注意事項を独立した項目にしなくてよいようにという工夫です。

お店の紹介や食材の説明などに紛れこませてなおかつ目に触れてもらえるようにする、といったことをよく時間をかけてやっています。

 

「大声を出さないよう願います」のような、一部の例外のような人のために掲げる注意事項はさらにたちが悪く感じます。

こういうものはあまり目立ちすぎると、振る舞いの良いお客さんは自分たちが頻繁に通うべき店、人に紹介できる店ではないと無意識に判断してしまって、足が遠のくといったことが必ず起きると思っています。仮にその逆をいくお客さんが来るようになったとしても、大切にしてもらえる店には到底なれない気がします。

 

今回、店内飲食を再開するために、感染拡大防止を呼びかける注意書きを大々的に黒板に書きました。今の段階ではどういう発信が最適か判断が難しいところだと痛感しましたが、これについてははっきりと箇条書きにして目立つ場所に立てることにしました。

今は一人一人の工夫と行動で1日も早く落ち着いた日常にたどり着くことがもちろん一番だと思いますが、周辺でなお仕事のため出社をつづけるお客さんに昼食の場を提供すること、また店が店として機能し続けることが、感染拡大防止と同じくらいに自分にとっては大切なことだと今は考えています。もちろんその考えに対する迷いもあります。

先につなげることを毎日絶え間なく考え、バランスをとって行動していきたいと思います。

 

注意書きといえば、名古屋に仕事で立ち寄ったときに、店内のあらゆる掲示物がオーナー直筆の注意書きと小言で埋め尽くされているパスタ専門店に入ってたまげたことがあります。「食べたらダラダラ喋らず帰れ」「昨今の教育には〇〇が足りない」「うちの店は正しくこだわり続けたから〇年も生き残ることができた」等々。

あまりの異様さに怖くなって出たいと思いましたが、客は自分一人だけでそれも怒られそうな気がしてしまい、居心地の悪さを辛抱して注文しました。

しかしここまでこだわりが強い店だから、味のほうは期待できるのではないかと待つこと約10分。出されたパスタがあまりにも味がうすくて、さらにたまげたという忘れられない思い出です。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【毎日のごはん作りを手伝います!店主がお料理アドバイス

料理にまつわるいろんな『聞きたい・知りたいこと』お答えします!

✉️メールは
taitoko.pontan@gmail.com

📲または
https://peing.net/ja/e1d2f6005e5205?event=0

まで!