炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

たのしい寄り道

【近況】

10月から、それまで300円頂いていた「お通し」を廃止しました。

作る側としては、料理が出るまでつまみながら待ってもらえるものであり、同時に季節感を演出できる機会であり、何より自分が外で食事をするときはその店のお通しの出来も楽しみなので、なるべくなら続けたいものでした。

やめるに至った一番大きな理由は、新税率で消費税が上がったことです。このままの価格では、やっぱり外食は高くつくな、と受け取られてしまいかねないと、対策としてメニュー全体の価格と内容を考えられるかぎり見直しました。それならいっそのこと、思ったより安く済んだと思ってもらえるところに落ち着けようと、お通しを廃止することにしました。

最初は、そこまでやったところで増税インパクトでそもそも来客が落ち込むかもしれないし、単なる無駄な値下げにならないか不安でした。しかし11月現時点の経過としては、それまでの来客に10月からのリピート客があらたに加わって、8月、9月よりは良い結果になっています。

軽めに食事したい方にはそれなりにリーズナブルに、しっかり食事されたい方にはこれまで通り十分に、お支払いしてもらえる形にひとまずはなったようです。それまでと大きく変わったのは、短期間でリピートする軽めの食事に使う人が増えたことです。


増税は食材以外のところで店の財政を圧迫してきますが、これを良機にふんばりたいところです。


【記憶に残ったお店の味 その3】

鶴橋駅の高架下に広がる商店街に、デイリーヤマザキがあります。週に3、4回は仕入れのついでにここに立ち寄ってしまいます。

ここのデイリーヤマザキは、どうやら山崎製パンの総力が集められた店舗のようで、いつ立ち寄ってもパックされたパンだけでなく焼き立てパンが充実しています。それらがリーズナブルで種類豊富なため、チェックするのが楽しみでもあります。


今も昔も、ヤマザキ製の菓子パン・惣菜パンはどんなコンビニやスーパーでも見かけますが、たまに食べるたび、すごいなと感じる点があります。


ひとつは、一口めから最後までおいしく食べられること。

生地の端っこまでクリームや具が入っていないために、最初もしくは最後の一口のモソモソしたパン生地を食べてさみしさを感じたという経験が誰しもあると思います。

個人の感想ですが、ヤマザキのパンにはそれがない。

決して、端っこまで「たっぷり」クリームや具が入っているわけではない。ただ、「足りない」という気持ちを起こさない程度の量が入っている。本当のところはわかりませんが、これはしっかりとした計算だと思っています。


もうひとつは、ネーミングから受け取る印象をかならず回収する食べごたえがあること。

たとえば、「サルサドッグ」というホットドッグ系パンがあります。

手に取ったその瞬間から、食べる前に人それぞれの「サルサ感」を思い浮かべることでしょう。その気持ちを胸にしながら食べ終えた時点で、「おれは今、サルサドッグを食べたぞ」という感想を過不足なく抱ける。そのちょうど良さがヤマザキのパンにはあると思っています。

世の中にはもっとスパイシーなサルサをのせたものや、もっと立派でジューシーなソーセージが挟んであるものもあるでしょう。

しかしヤマザキのそれは、コンビニのような手軽な場所で、そこで売られている程度の価格で味わう「サルサドッグ」としては、もの足りなさを感じさせない、十分な味だと感じるわけです。


いったい何種類あるか想像もつかないヤマザキの商品群。その全体をとおして、この2つを達成しているところに底知れないノウハウの蓄積を感じてしまいます。本当のところはわかりませんが。


ちなみに、手作りパン食べ放題をウリにした店について。デニッシュ系のパンを多く並べるところより、ロールパンやテーブルパンが充実しているところのほうが、自分は「パンへの愛」があるように感じます。発酵や整形の手間ひまがかかっているのは後者だからです。