頼りになる記憶
【近況】
11月は思ったより多少は黒字が出たので、ランチタイムでのカレーを始めるために食器や調理器具を購入しました。というわけで、先週からようやくカレー提供がはじまりました。
豚ひき肉と玉ねぎ、トマトがベースのサラッとしたカレーです。実は自分こういったサラサラ系のカレーは作ったことがなく、どちらかというととろみのついた色の濃い煮込み系の欧風カレーが好みです。
しかし、欧風カレーはどうしても煮込みにかかる時間が短縮できそうになく、仕込みにそこまで時間をかけられそうにもないのでより短時間で仕上がりそうなサラサラ系のカレーを試作することにしたのです。
ところが事はそんなに簡単にすすみません。煮込みに時間をかけられるタイプのカレーはじっくり時間をかけて味を調整できるのですが、今回はそうはいかない。イメージした通りの味に近づけるのに苦労しました。
夏にスタートする予定で6月頃から試作したのにようやく夜の提供からスタートしたのが9月過ぎ、ランチに至っては12月になってしまいました。
いままでは、粉のスパイスと既製品のカレールーでしか作ったことがなかったので、今回いろいろハーブやスパイスを取り寄せて試作してみました。
食欲をそそる匂いといえば肉の焼ける匂い、ニンニクやネギ等香味野菜の匂い、パン生地が焼きあがる香ばしい匂いなどありますが、カレーの匂いもまた格別です。今回、その組み合わせ方の奥深さを思い知りました。
特に、カスリメティリーフという乾燥のハーブは、カレーに加えるとよりクセになるおいしそうな香りになります。ふだん家で作るカレーにも使えそうな気もします。
先週は目新しさで注文してくださる方が多く、売り切れる日もありました。しかしこれからどれほどリピートしてもらえるかで、今後の続け方をかんがえる必要があります。味のほうも、作り続けるうちにより良くしていける部分がまだありそうです。
【記憶に残ったお店の味 その4】
いつか店を開くなら、ここの店を見習いたいなと感じた場所の1つです。
当店をオープンする前、9年間東京にいました。同じく東京で働いていた関西の友人がひときわ強くおすすめして連れて行ってくれたのが、舎人にあるファームヨコタというところです。
手作り感のあるおかずが色々たべられるプレートランチや、窯焼きのピザなどがテラス席で食べられる。とだけ聞くと、なんだかよくある自然派やらオーガニックやらを謳うカフェとか、近年でいえばインスタ映えするとかそういうテイストの店かなと軽く考えていました。
しかし、食べることに関しては飾り気やうんちくよりも、おいしさや食べ応えをストレートに愛するその友人がそんな形だけの店をプッシュするわけはないと信じて、集まったのが日曜朝の舎人駅でした。
片手に住宅が連なる、まっすぐな高架と道路。いったいどんなオシャレな造りの建物があらわれるのかとぼんやり歩きます。
たどりついたのは、園芸店でした。
園芸店の裏手のような敷地に、テーブルやベンチが整備されて食事ができるようになっていたのです。
大小さまざまな木や花が育てられ、店で使われているであろうシートやシャベルのような器材類がそこかしこに置かれている、バックヤードのようでもあります。
件のプレートランチは、いろどり豊かな野菜とお肉がお皿いっぱいに盛り付けられた一皿。たしかにどのおかずもしっかり味付けされていて、手作りで、食べ応えがあります。
そしてなにより、園芸店の敷地という独特の場所は、緑と土と水の匂いに間近につつまれる感覚があります。都会に無理やり作った「自然風」のカフェやレストランでは味わえない感覚がめざめるようです。
畑をやっている親戚の家に招かれてご飯を振る舞ってもらったような、気取りのない空間と食事でした。
当店を始めてから、長く店を続けるためにはどうすればいいかということをよく考えます。そんなとき、このファームヨコタで過ごしたこの約1時間の食事を思い出すと、足元を確かめることができます。そういう場所に出会えることは、この上なく有難いものです。
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