23時半の集中力
【近況】
この季節、近鉄電車で生駒のトンネルを奈良側にぬけると、寒さが際立ちます。
自分は開店当初から、大阪は肥後橋にある店まで電車で奈良から通っています。
さいわい、今のところ終電を逃して帰れなくなったことはありません。終電30分前に最終閉店時間を決めてはいますが、日によっては終電10分前までお客様がおられるときもあります。
同業の先輩にまず引っ越せと呆れられたこともありますが、今のところ店の近くに部屋を借りようかとは、実はあんまり考えていません。
前職で店長をしていたころは、店の近所に住んでいました。閉店時間が深夜だったので、自転車で通える距離である必要があったからです。
つまり、何時に仕事を終えてもいつでも帰れるところに住んでいました。
しかし、いつでも帰れるがゆえに、遅い時間になるほど緊張感がゆるみ仕事が遅くなり、また居眠りをしてしまったりと、結局だらだら朝方まで店に残っていることがほとんどでした。というより、毎日そうでした。
仕事もプライベートも関係ないほど仕事に熱中していたともいえますが、実際はそれくらい熱中している気になっていただけだと思います。
むしろ、「長い時間かけて仕事に取り組んでいるんだから、価値のある仕事ができているはず」と思っていた節すらあります。
この悪習慣から抜け出すのにはかなり時間はかかりましたが、さいわい独立を決めた頃には仕事時間を主体的に区切ることの大事さを優先できるようになりました。結婚したり子どもが生まれたりしたことも一因だと思います。
せっかく克服しただらだら心が再発しないよう、いまは物理的に遠くの自宅から通い続けることにしている次第です。
あと、本当に終電ギリギリの状態で、帰る片付けをしているときの緊張感が実はあまり嫌いではありません。脳のふだん使わないような部分が覚醒しているような手応えがあって、1分がとても長く感じ、頭をフルに使っている感覚がかえって心地良かったりします。毎日だときついでしょうけど。
今年ものこり1週間を迎えてなお、駆け込みの忘年会も少しずつ入ってきています。時間のやりくりが難しいところですが、今年の年末もきちんと家には毎日帰ろうと思っています。
【ぽんたんのレシピ紹介 その5】
今回は、まだ店のメニューには入れてませんがいつかやりたいレシピ「蕪蒸し(かぶらむし)」です。
白身の魚を、すりおろしたカブの生地で覆って蒸しあげ、淡めのだしあんをかけて食べる一品です。
蒸し料理なので全体的にやさしく、積もった雪のような見た目も冬らしい温かい一皿です。
かぶのピリッとした風味が魚のうまみを引き立てて、初めて食べたときに今まで味わったことのない風味の組み合わせに感動しました。
【分量 4人分】
◆蕪蒸し
・かぶ 小さめ4個
・さわら 4切れ
・卵白 0.5個分
・塩
◆だしあん
・だし 300cc
・薄口しょうゆ 10cc
・酒 15cc
・塩 小さじ3分の1
・水溶き片栗粉
片栗粉・水をそれぞれ大さじ二杯
・粉山椒 柚子の皮 おろしわさび 好みで
①さわらの切り身に塩を振っておく。全体にまんべんなく振り、15分ほど置く。
さわらの表面に水分が浮いてくるのでキッチンペーパーでふきとる
②かぶは皮を剥いてすりおろし、水気を切っておく。完全に水気をなくすとかぶの味がなくなるので、ざるに入れて指でつかめるくらいの固さに軽くしぼっておく
③卵白を泡立て器で溶く。泡立てたらしぼったかぶと塩ひとつまみを加えさらによく混ぜる
④水を入れた蒸し器を火にかけ、沸騰したら中火にする。皿にさわらを並べて10分蒸す
⑤蒸したさわらの器に溜まった水分をいったん捨てて、③の生地でさわらを覆い、さらに15〜20分蒸す
⑥だしに酒、薄口しょうゆ、塩を入れ火にかけ、適量の水溶き片栗粉でとろみをつける
⑦蒸しあがった蕪蒸しに、⑥のだしあんをかける。好みで柚子の皮をすり下ろして振りかけたり、粉山椒やわさびでいただく
・さわら以外に鯛もおいしく出来上がります。青魚は臭みが出やすいので、白身魚が適しています。
・蒸しあがったかどうかの判断は、金串やフォークを刺してみて魚の中心温度を確かめるのがいいかと思います。
・魚の下にほうれん草などの青菜やきのこを敷いたり、かぶの生地にゆでたゆりねを加えたりといったアレンジもできます。
手間のかかるわりに見た目も地味ですが、食べた時のおいしさはあまり他にないものです。ぜひ寒い冬の間に試してもらいたい一品です。