炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

胸焼けの向こう側

【近況】

人生の選択で後悔することはない性格ですが、1人で食べるごはんの選択で後悔することは多々あります。


入った店がおいしくなかった、失敗した、という後悔ではありません。味にケチをつけたくなるような店に出会うことはほとんどありません。では何に後悔しているのか。


ひとつは、出先でいま何を食べたいかを考えるときに、答えを急いだがために選び損じたと感じる後悔です。

いくら考えても決められないで、歩き続けた結果引き返せないところまで来てから、やっぱり最初に見つけた店にすればよかったと悔やんだことは数え切れません。


もう一つは、タイミングと量をよくよく考えずに欲の赴くままに食べてしまったときの胃もたれや胸焼けに悩む後悔です。


特に、新幹線に乗る前に買う弁当・おつまみ選びには細心の注意を払っています。

新大阪駅、京都駅などで見かける駅弁やおつまみはより取り見取りで、実に魅力的です。普段ならぜったいに手を出さないその価格帯も、出発時間という縛りに追われていると、何故か悪くないように思えるので不思議です。


かつては、それこそ食べ切れないほど買い込むのが楽しみでした。ビールもロング缶にしたり、缶チューハイもついでに買ったり。結果、降車時に胃もたれに悩まされることが増えていきました。乗っている間は座っているだけですから、それだけ食べればどうなるか少し考えればわかりそうなものですが。

弁当、ビールに加えスナックなどのおつまみ、ひどいときにはサンドイッチも一緒に買うほどでしたから、当然といえば当然です。反省して、徐々に量を控えるようにはなりました。


しかし年相応に消化器官も衰えるようで、もはやサンドイッチとコーヒーだけにした日ですら降車駅で胃もたれが襲って来たときは、もう新幹線で食事をするのはやめようと誓ったものでした。この1、2年は、水かコーヒー以外何も買わずに乗ることのほうが多かったと思います。


先の年末、富士山の裾野にある妻の実家へ帰省することになり、後を追うかたちで1人出発することになりました。京都駅から新幹線です。

ひさびさの一人旅、くわえて、年末の営業を終えた解放感に包まれて、ふと気がつけば駅構内の売店を転々、弁当、お酒、おつまみを詰め込んだ袋を持って嬉々とホームに向かっていました。


乗り込む前までは、食べ終わったころの後悔など全くイメージできないものです。真冬に真夏の暑さが思い出せないのと似ている気がします。


今年は、清々しい晴れた空に、富士山がよく映える元旦でした。今年はなるべく後悔の数を減らせるようでありたいと思っています。



【記憶に残ったお店の味 その5】

大阪は八尾市という街に2年ほど住んでいたことがあります。そこにある店で、入社して初めての店長の仕事をしていたころです。


それまで大阪市内の店で働いていた自分にとっては落ち着いた住宅街ということもあり、少し地に足をつけて過ごせた場所で、今でも好きな街です。


当時住んでいたマンションの近くに、民家が一棟そのまま店になったような落ち着いた雰囲気の焼き鳥屋さん「かちがらす」がありました。

夏の夕方ごろ、格子戸から自分がそっと覗きこんだところを声がけされ入って以来、通い続けたお店になりました。


このお店で勉強になったことはたくさんあって、当店の「鶏レバーやわらか煮」は、このかちがらすのメニューを再現したくてはたまに試作し、10年以上経ってようやく納得のいく仕上がりにたどり着いた思い入れのあるメニューです。


割烹スタイルの和装で男ばかりのスタッフ、粋でハンサムな雰囲気のオーナーが仕切る店内は、当時の自分の憧れでした。休みの日は早めの時間に訪れたり、仕事終わりにも早く終えられた日は深夜に寄って帰ったり、仕事一色で過ごしていた自分が一息つけて、勉強にもなる場所でした。


ほおずきトマトや三色アスパラ、マコモダケなどまだ当時の自分が食べたことのない珍しい野菜を使った一品や、低温調理や燻製、フレンチ・イタリアン風の仕事がされたモダンな鶏料理、気軽にワインを焼き鳥にあわせるスタイルなど、のちのち一通り流行ったような食事が、郊外に住んでいながらで体験できたのは大変ラッキーだったと思います。


その当時2006、7年ころでたしか10周年ということでしたから、今すでに20年以上続くお店になっているはずです。まったく同じことは真似できなくとも、当時印象に感じた好きなお店のエッセンスは、うまく取り込んで反映させていきたいものです。



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