炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

目立たずとも誇らしく

【近況】

約2年ぶりくらいに「フードホール」といわれる場所で食事をしました。

自分が会社を辞めて店の開店準備をしていた2018年の初頭ごろに、大阪では何箇所かの地下街などでそういったフロアが続々オープンしていたと思います。

ファミリー利用を想定したフードコートと違って、お酒やおつまみが充実した大人のフードコート的存在。東京にいたころ、新宿駅のバスターミナルビルが改装してオープンした飲食フロアが、自分が初めて見たフードホールだったでしょうか。

今回は休みの日に家族と出かけたついでに、たまたま見つけたフードホールに立ち寄ったのでした。

 

まだ人生2回目のフードホール体験で、ステーキ、タコス、とんかつ、たこ焼き、フライドチキン等々、種種雑多なジャンルの店を見て回るとそれだけでワクワクしてきます。

いくつか店を回って注文し、呼び出しベルを受け取って席に戻ります。先に手渡されたビールを口にして出来上がりを待ち、呼び出されては受け取りにむかうこと3回。

 

しかし、よく慣れたフードコートと仕組みは同じはずなのに、お酒を飲む心がまえで臨むと、なぜか思っていたより調子が狂うことに気づきました。飲んでいる手を止めて歩き回るのが妙に落ち着かない。注文したものがテーブルに届くのは立派なサービスなんだと改めて実感しました。

ビール一杯飲み終えたところで、おかわりを考えるほどは調子が戻らず退散してしまいました。新しいものへすぐ順応できないのは、もう頭が若くないからだとさみしく痛感したのでした。

 

それにしても、駅ナカや駅近の好立地は、食事が高くつくのも場所代みたいなものだから仕方ないという時代はとっくに過ぎたようです。こういったフードホールや小綺麗な立ち飲みが増え、都会の便利な場所でも当たり前にリーズナブルな食事ができるようになって、肩を寄せ合うほどに人があふれています。街場で飲食店をするのはより工夫が必要な時代になったように思います。

 

【最寄りのグルメ その2】

今回は「カップ焼きそば」。

生まれ育った実家には、即席ラーメンおよびカップ麺の類はあってもなぜかカップ焼きそばがありませんでした。何となく縁がないまま、高校生になり、そのころ友達が食べていたのを少しもらったのがはじめてかもしれません。ガツンとくるソースの濃い味と匂いに感動したもので、就職して一人暮らしを始めてからは、多いときで週4,5回ほど食べていました。

 

さすがに今やそう何度も食べる機会はなく、多くて月に2、3回といったところです。そんな自分が定期的に買ってしまう定番カップ焼きそばが、「オタフクお好みソース味焼きそば」です。

 

かつて商品開発を担当していたころ、オタフクソース製のソースや調味料類のサンプルをたくさん頂いて味見する機会がありました。

同社のソース類には「デーツ」というフルーツが使われているのが特徴で、他社のソースにはない独特のコク深い甘みが強いのが印象的です。

また、同社の社員のみなさんはお好み焼き愛がとてつもなく深く、お好み焼きについてちょっと質問しただけで何倍も内容のある答えを教えてくれました。お好み焼きの技術的な社内マイスター制度を設けていたり、開業前のオーナー向けの研修を行うための施設を構えていたりと、普段の言動からもおいしいお好み焼きを一枚でも多く世に送り出す使命感がにじみ出ておられたのがまた印象的でした。

 

しかし、商品開発をしているとよくあることなのですが、その頃は味見をしすぎてサンプル品を見るのも嫌になってしまいました。何も同社の製品にかぎったことではありません。4時間くらいハンバーグの食べ比べをしてげんなりし、しばらくハンバーグを食べられなくなったこともあります。

商品開発からしばらく遠ざかり、スーパーで「オタフクお好みソース焼きそば」を見かけることがあっても、その記憶のせいでしばらくは食指が動きませんでした。

 

ようやくそんな記憶も薄れてきたころになんとなく手にとって休みの日に食べてみたところ、改めてオタフクソースのバランスの素晴らしさに目がさめる思いがしました。以来、定期的に買って食べています。

 

最近のカップ麺系のブームのひとつに、「辛味」「香り」「脂感」など、何か一つの特徴を極端に強めて印象に残すやり方があります。

一度だけ味わって楽しむ季節商品ならそういうのもいいのですが、通年食べ続けられる万能なやつとの付き合いはやはり大切です。そういう定番のおいしさという点ではこの焼きそばが自分にとっての暫定1位です。

 

あとから知ったのですが、おそらく最も有名なカップ焼きそばUFOは、かつてオタフクソースがオリジナルのソース製造を請け負っていました。諸々の事情があってリニューアルされ、今その頃のUFOの味は「オタフクお好みソース焼きそば」に引き継がれているそうです。