逃げる二月と逃げぬ腹
【近況】
新型ウイルスの報道が増えた今月は、若干ですが夜の客足が遠のいているように感じることが増えています。
そんな中、週末の金曜日はこれまでのリピーターの方々であっという間に席が埋まり、満席でお断りしてしまった方もまたリピーターの方々だったりするほどでした。
断るのは申し訳ないと思いながらも、今月はずっとそんな調子でしたから、すがりたくなるような有り難さも同時に感じます。平和な日々が続いていると、こういう平時の積み重ねの有り難さにはまったく気づけないものだと反省しました。
ウイルス感染の拡大が続く中、自分は店も小さく固定費も少ないので今はまだどうとでもなりそうですが、これからもこの事態が長らく収拾しないとなるといろいろ先のことを考えなくてはいけません。今はマスクが欲しくてもなかなか買えませんが、そのうちマスクどころかこれまで通りの生活コストで同じ毎日が送れるのだろうかと考えることもあります。
リスクの全貌があきらかになる頃には、いろいろ考えて頭に整理しておいたことが何かしらの役に立つでしょうし、心配がまったくの杞憂に終わったとしても、決めた覚悟が1つでも多くあれば別の大事な何かを考えるときの足しになってくれる気がします。
やりたくて選んだ仕事をやり続けられるように、心構えを見直す機会が訪れているように感じています。
【ぽんたんのキッチン紹介 その6】
「メニュー名」について。
新たにメニューを加えるときは、注文がもらいやすくなるネーミングについてよく考えます。
毎回なんとなく直感で決めていますが、改めてそのバランスを整理してみたところ、以下の3点を意識することが多いようです。
①語呂と語感の良さ
②味と見た目の再現性
③そそられる期待
①語呂や語感がよいと、すんなりと口に出しやすくなるのかもしれません。
例の一つですが、「イワシのみりん干し」は「炙り小イワシ」 と名前を変えてからぐっと注文が増えました。
②名前を見たときに「ああ間違いないやつだ」と、味や見た目が思い浮かべやすいものは人気がぶれません。くわえて、あまり金額を気にせず注文しやすいようです。
たとえば「エビマヨ」「フライドポテト」「せせり」「チーズ」「沖漬け」といった単語がふくまれるメニューは、つねに安定した人気が続いています。
③「どんな料理か確信できない、けどおいしそうな気がする」といった感じで、どうやら期待をそそっているみたいだなと感じるメニューがあります。
例をあげると、「豚わさ」「フライド里芋」「牛スジじゃがバター」あたりがそういう印象です。
もちろんこの3つのバランスだけがすべてではなく、価格から受ける印象とのバランスや店内や季節の雰囲気、他のメニューとのバランスなど、いろんな情報から判断されていることでしょう。
ただどの料理もそれなりに時間をかけて仕上げたメニューなので、売れ残らないようにいい名前をつけてあげたいという気持ちでは臨んでいます。
純然たる日本食の料理名には、風情を感じたり洒落を利かせた素敵なネーミングがたくさんあるのですが、なかなかそのままの名前で気軽に受け入れてもらうのは難しいところです。
「竜田揚げ」などはすでに多くの人が理解して味わっているところですが、「信田巻き」「沢煮」「博多」「松風」あたりは、注文のハードルがぐっと上がる気がします。どれも手がかかるぶん、とてもおいしい料理なのですが…