炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

春の準備も後半戦

【近況】

メニューを変えるときや新たな取り組みを考えるときは、集中して時間を忘れてしまう楽しいひとときです。アイデア出しはただただ楽しいですが、実行に移すとなるとなかなか骨が折れます。

 

小さい店ですが、それでも何か始めるのはそれなりに準備がかかります。告知はどうやるのか、仕入れ先は、売価は、今ある在庫をどう売り切るか、備品は買い足すのか等々、空想を現実に近づけていく作業です。予算と、実際の営業中のオペレーションを考えるのは、まさに現実との戦いです。 

最初はいいアイデアだと思ったものも、進めていくうちに鮮度というかハリのようなものが失われる感覚にとらわれることもあります。結果、魅力がわからなくなって途中で投げ出そうかという気になることも多々あります。

 

そうやっていろんな制約や不安や調整に揉まれていくうちに、あらゆる要素がカチッと定位置におさまる予感のようなものがうっすら見えてきます。妥協の余地がない「納得感」が訪れるような感覚です。

ここまで来ると、目先を覆っていた不安がいったん消えて、ひといきに最後の仕上げに向かうことができます。そうやって新たな一歩が無事踏み出せたときというのは、なんともしびれる瞬間です。

苦労して生み出しても、全くと言っていいほど反響がないときもあります。そんなときは、そのまま続けるか、やめるか、やり方を変えるか決めることになります。このときも、やはりこの納得感が訪れるまで考えに考えを重ねることになります。

 

そんなこんなで、この2週間ほど空き時間にいろいろとアイデアを増やしながら過ごしていました。すぐ実現できそうなこともあれば、段階をきざんでいかないと先が見えない取り組みもあります。なるべく一つでも多く形にしていきたいと思う次第です。

 

【ぽんたんのキッチン紹介 その7】

「油」につきまして。

かつて仕事の関係で、食用油脂について調べたことがあります。

油脂メーカーさんに手伝ってもらい、様々な種類の油で揚げ物をつくり、どんな違いがあるか知るという検証がありました。

なじみの深いキャノーラ油、大豆油以外に、米油、コーン油、綿実油、ラード、パーム油など、それぞれに揚げあがりの風味が違いました。

それまで、食用油の種類について深く知らなかったので大変興味深く、その日のことは今もよく覚えています。

 

よく家庭では「サラダ油」というくくりで油を買いますが、サラダ油という油が何かの植物から採れるわけではなく、いずれか単一の種類の植物油か、ブレンド植物油です。スーパーで買えるサラダ油はだいたい、キャノーラ油のみか、キャノーラ油+大豆油というのが多いようです。

サラダ油という名称はたしか、サラダドレッシングに使える=常温で固まったり沈殿物が出ない、高度に精製された植物油のことを指していたのではないかと思います。

今時、精製度が低い油が出回ることがないため油といえば私たちにとっては薄く黄色がかった透明なイメージですが、昔は違ったのかもしれません。

 

当店では揚げ物はキャノーラ油のみ、サラダのドレッシングにはキャノーラ+大豆油のサラダ油を使っています。大豆油はキャノーラ油にくらべ、ほんのりまろやかさがあり、できれば揚げ油にも大豆油を使いたいところですが、キャノーラ油より高くなってしまいます。

キャノーラ油が他に比べ安価だから質が悪いというわけではなく、良くも悪くも特徴があまりないので使い勝手はよいが個性に欠けるといった印象です。

 

マクドナルドの揚げ油は常温では白く半固形ですが、牛脂とパーム油の混合油脂です(HPに公開されています)。あのフライドポテトの独特のくせになる風味は牛脂=ヘットの香りと旨みで、逆に植物油100%を売りにしているロッテリアのポテトにはあの香りはありません。

お肉屋さんに牛脂をわけてもらい、サラダ油とブレンドすれば家庭でも再現できそうな気もしますが、冷えたら固まりますので、後始末が面倒そうではあります。

なんとも食欲をそそる香りで、関西系串カツでは揚げ油に欠かせないものらしく、専門店ではほぼあの牛脂の香りが漂っています。

 

牛脂と聞くと不健康そうなイメージもありますが、動物の脂はいったん高温になると温度変化が少ないため油切れがよく、仕上がりはカラッとします。

旨みを感じやすいので、塩分が高くても気にならずおいしくて手が止まらないということはあるかもしれません。ほとんどの食べ物はそれ自体が不健康なわけではなくて、食べ過ぎる習慣が不健康なだけだと思っています。