炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

見えなくても太るもの

【近況】

食事を提供する側の人間でありながら、自分の食生活は乱れやすいことで悩みがちです。

店ではあっさりした出汁を使った健康そうな一品を出したりもしていますが、個人的には揚げ物やファストフードやカップ麺といった脂っこいものはわりとしょっちゅう食べています。

 

夕食は夜の営業が終わって帰宅してからの時間に食事をします。さすがに夜にご飯等炭水化物をお腹いっぱいまで食べることはありませんが、食べて比較的すぐに寝るのであまり体には良くなさそうです。

朝は軽めに済ませるものの、昼はランチ営業をこなした疲労感をいいことに満腹よりすこし多めに食べてしまいます。

 

このサイクルの中のどこかで、食べ過ぎてしまう時が挟まると、体重的にも胃もたれ的にも体が重く感じる日が続きます。

 

仕事でカロリー計算もやっていたので、大体自分が1日にどれくらいのカロリーを摂っているかはわかります。前職で店長をやっていた10年ちょっと前なら、1日中立ち仕事をしていれば消費できていたはずのカロリーなのですが、そこは加齢のせいもあってかうまく消費できていないようです。

かつては毎晩のように仕事終わりにラーメン屋に牛丼店、居酒屋などに立ち寄って、さらにビールとおつまみを買い込んで帰るなどお腹いっぱい食べていました。それで今より10キロ以上痩せていたのは信じられません。

 

食べることが楽しみで生きているところは大いにありますが、食べることで健康を損なう心配をしているようでは楽しみも半減です。

そこで最近は、夜の食事をしてから次の食事まで12時間空けること、その間は間食もせず水かコーヒーだけ口にすることにしました。夕食を早めることも考えたのですが、営業時間の関係もあってなかなか難しいのです。そんなこんなで、2、3日続けただけでもなんとなくすっきりした気分になりました。

 

そうなると、いい気になってまた多少食べ過ぎてもいいんじゃないかという気になってもきます。こんなことをブログに書くのも、おなじ過ちを繰り返さないよう良い習慣を続けろよと自分に言い聞かせているわけです。仕事以外の部分でもこんなことで頑張っています。

 

【記憶に残ったお店の味 その6】

奈良駅近くの三条通りの途中を南に少し入ったところにあった「月吠(げっぽう)」という忘れられない店があります。

当時奈良駅近くにあった店舗の店長をしていたころに、一度だけ利用したことがあります。その時のことが夢の中で過ごしたような感覚だったので、たまに思い出すと不思議な気分になります。

 

場所は、三条通りの真ん中より西寄り、商店街が交差して民家や小さい店が密集するあたりでした。こぢんまりとした入口にはカウンターの一番端の席があり、それが奥まで続くことがなんとなくわかります。第一印象は、古くささのある和テイスト、民芸調の居酒屋のようです。

予約していたことを告げて中に案内されると、カウンターが途切れた奥には予想外に広い空間があることがわかります。

 

そこで店内の印象は急に西洋的なものになり、まったく外観からは予想もつかなかった内装に驚きます。奥は床が一段上がっていて、それに合わせて壁の雰囲気も変わっており、美術館の一角を切り出したような印象です。

御歳60歳くらいの紳士がサービスマンです。まるでホテルのレストランのようなスマートでさりげない接遇で、さっきまで奈良の町を歩いていたとは思えない空気にひきこまれます。

食事は今思うと、古典的なフレンチの雰囲気に和の要素が折衷されたようなものでした。たしか、青魚をマリネした冷菜、サラダ、牛のワイン煮込みやチーズ等を選んだように記憶しています。ワインを何杯か飲んでゆっくり過ごし、こんな店がこんなところにあったんだなあと店内の雰囲気を満喫して店を後にしました。

店を出ていつもの見慣れた風景に戻る感覚は、まさに夢から覚めたようなものでした。店内での時間をじっくり噛みしめながら帰途についた記憶があります。

 

しばらくして、この店がすでに閉店してしまったことを知りました。惜しいとも思いつつ、一度だけでも訪問できてよかったと心底感じたのでした。

二度と同じ空間は味わえないと思うと、記憶をたどるたびに美化してしまうような気もしますが、今も憧れの空間の一つとしてよく覚えています。