炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

らしくない3月

【近況】

毎日かわらず不安定なニュースが流れる中、なじみのお客さまに助けられた1週間となりました。去年のように送別会の予約で賑わってというわけにはいきませんが、去年はまだ今ほど顔なじみの方がいませんでしたから、もしこの騒ぎが去年の出来事だったらと思うとぞっとします。

 

自ら望んで自営業に就いた以上は会社員でいた頃よりもいろんな外的要因が生活に大きく影響することは仕方ありません。きょう現在もはっきりと先が見えないもどかしさや不安は大きいですが、そう思えば思うほど、自分の思い描いたタイミングで独立ができてよかったと感じます。

 

受け持っていた仕事のこと、年齢や家族のことなど様々な要因を考えてこのタイミングだと決めたのが3年ほど前でした。

もともと、どんな店がやりたいとか事業規模とか始めてからどんな展開がしたいかなどは、何も一切決めていませんでした。ただ、後々になって「本当は自分の店をやりたかったけどやれなかった」という後悔だけは避けたいという気持ちは強くありました。

決めたその日が来るまでは期限も具体的な目標もぜんぶ曖昧な、ふわふわとしたイメージしかなかったのに、初めてくっきりと進む方向が見えた不思議な感覚でした。

 

もしその直後に今年の新型ウイルスのような騒ぎが起こっていたら、怯んで先延ばしにしてしまったと思います。そうなれば、次のタイミングを決めるのにまた時間を要し、独立開業すること自体あきらめてしまっていたかもしれません。いろいろと運が良かったから今に至ることができたのだと思います。

 

朝、仕入れに向かうともうとっくに春の食材が並んでいますが、買い手が少なくなったせいか良いものが去年より安く売られているケースもちらほらあります。富山湾内産のホタルイカ(他県に運ばれて加工されたものとは大きさが違います)は去年の半額くらいで並んでいます。

食べる楽しみという意味では今年は例年にないチャンスがありますので、そういうところでどんどん気を晴らしていきたいと思います。

 

【最寄りのグルメ その3】

最近はレトルトのパスタソース、特にミートソース系を各社食べ比べています。

今のところのお気に入りは、スーパーマーケットの「ライフ」が展開しているライフプレミアムというPBのボロネーゼです。

香味野菜とハーブの香りが良い意味での渋みとして際立っていて、酸味と甘味のバランスも好みの印象でした。

ミートソースは人それぞれイメージする味の差が大きいように思います。トマト味の主張が強かったり、ケチャップのような甘みが強かったり、香りが単調だったり、肉の量が物足りなかったりと、食べ比べるといろいろ思うところがありました。

ライフのボロネーゼは他メーカーが展開する高級ラインのパスタソースよりさらに100円くらい高いですが、手作り感が感じられて満足でした。

 

面白かったのは、キユーピーの「あえるパスタソース ミートソースフォンドヴォー仕立て」でした。

これはソース自体の量が少なく、湯せんせずに茹で上げたパスタにそのままからめるだけのソースです。

手軽さからは想像もつかないしっかりとした味の要素が感じられます。この少ない量のソースで何でこんなに味がするんだろう?とおどろきました。

かつてはキユーピーの業務用製品もたくさん味見する機会がありましたが、同社の製品は使い手がイメージする味の要素をしっかり詰め込んでいて、物足りなさを感じることがないという印象がありました。

しかも、どの製品もちょこっとお洒落な香りやクセのアクセントが利いていて、いったい味作りのためにどんな研究をしているんだろうと毎回思います。

ただ、その味だけで完成度が高すぎるためか2、3度食べると飽きてしまうイメージです。

 

その昔、家にニンジンが余っていて使い切りたく、でもトマトの缶詰がなかったときにニンジンだらけのミートソースを作りました。

明らかに多いニンジン、玉ねぎ、にんにくをそれぞれ粗めのみじん切りにし、水とワインとひき肉に塩こしょうだけで作ったのですが、長い時間煮込んでいたらニンジン臭が急に消え、上品な甘みがぐっと押し出されたおいしいミートソースになった記憶があります。

 

レシピ通りに作った味も当然大切にしていますが、こういった「必要に迫られてたどり着いた味」との出会いが自分は好きで、店でメニューを考えるときも意識していたりします。