炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

いつもの味がいつもない日々

【近況】

二十代後半ころに、十二指腸潰瘍と診断されて10日間入院したことがありました。

これといった深刻な自覚症状がないものの、体内では軽い出血が続いていたため止血と経過観察のために2回ほど胃カメラを飲まなくてはいけませんでした。そのため入院中の半分は点滴のみ絶飲食という状態です。

人生ではじめての絶食でしたが、点滴もつけているのと一日中ベッドに寝転がっているだけなので喉のかわきもなく、案外空腹感は耐えられるものでした。

 

しかし「食べたいものが自由に食べられない」というストレスは日に日に募っていきます。そんなある夜、睡眠中に夢を見ました。

当時の勤務先にいた料理人の先輩が出てきて、「素うどん」を振る舞ってくれる夢でした。

透き通った関西風の薄色のつゆはしっかりと出汁が利いていて、麺は最高の茹で加減。夢の中で一口一口味わいながら食べました。夢なので当然味はないはずなのですが、うっとりとした気分でそのうどんを平らげていたと思います。

ある意味では、このとき夢で食べたうどんを超えるうどんに人生で出会ったことはないかもしれません。

 

この1週間で、自粛要請にしたがう形で営業時間を変更しました。周辺飲食店の休業があいついだためか、ランチの人出がやや戻りつつあります。売り上げとしてはありがたいですが、感染拡大が止まらない現状ではそれもまた大いに問題がありますので、つぎはテイクアウトのみの営業や不定休での営業を検討しています。

それにしても、外食にかぎっては「食べたいものが自由に食べられない」毎日になってしまいました。

しかし今こそそのストレスを溜めに溜め込んでおけば、いずれ来たるその時に「居酒屋に来てジョッキで生ビールなんていつぶりだろう」と思いながら飲む一杯めがうっとりするような味わいになるはずだと思っています。

 

【おすすめレシピ本 その4】

「イタリア料理の本/米沢亜衣」 アノニマ・スタジオ

レシピ一つ一つに、その料理にまつわるイタリア生活のエピソードが添えられています。季節ごと土地ごとに長い年月繰り返し作られ続けているような、とてもシンプルなレシピがほとんどでしょうか。

なかでも「トラーパニ風パスタ」は、味の想像がつかないレシピから、何度でも食べたくなるような味ができあがって嬉しかったことを覚えています。初めて食べるのに懐かしさのあるおいしさでした。

 

イタリア料理やフランス料理のレシピに取り組もうとして不安になるのは、当たり前ですが「醤油」と「だし」がなく、味付けの基本が「塩」によって決まるという点です。

正確には、西洋料理にも野菜や肉・魚からとるだしや炒めた野菜で旨みを出す方法がありますし、醤油はなくてもアンチョビや魚醤などはあります。しかし使い慣れた醤油やだしに比べれば、どれくらい使えばどの程度の味がつくか想像が付かないので不安になるし、いつ完成したのかわからないのが正直なところです。

 

というわけで、イタリアンやフレンチはやはり専門の人が作る店に行くのが1番だと思っています。

ネットを探せば市販のコンソメやブイヨンで無難に仕上げるレシピがたくさんありますが、やはり塩加減のみでばっちりおいしさを感じる料理を味わうと目が覚める思いがします。現地においては日常の料理が、日本では非日常の味として楽しめるのは不思議な気がします。

 

店に立っていると、日常と非日常という感覚のバランスの迷いから抜けられないことが多々あります。

競合する多くの飲食店から目立つには、非日常的なワクワク感や珍しさのある見た目や演出が必要です。飽きることなく繰り返し通ってもらうためには日常的な味、肩肘張らずに立ち寄れるメニューや価格帯である必要があります。

これこそが答えだというものはないのでしょうが、常に迷いながら手抜きのない落とし所を見つけていこうとは思っています。

 

 

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