炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

出たがりの苦労

【近況】

中学2年まではゲームっ子でした。なぜはっきり中2だったと言えるかというと、親にギターを買ってもらったのがその歳だったのを覚えていて、その頃を境にテレビゲームから遠ざかったからです。

別にゲームがつまらなくなったとかではなく、自然とギターの練習のほうに比重が傾いていきました。その後、新しいゲーム機を買うことは無くなりました。

 

テレビゲームにはいろんなジャンルがありますが、一番多くプレイしたのはアクションかRPGだったと思います。逆に、もっとも縁がなかったのはシミュレーションゲームでした。

ボタンを押せばすぐ反応が来るアクションゲームや、とにかくストーリーを追い続ければ終わりが来るRPGは性に合っていたのですが、シミュレーションゲームはダメでした。戦略を立て、コツコツと武力を高めて陣地を広げていき、少しずつ発展させ…みたいな地道な作業が我慢ならなかったのです。

 

仲のいい友人が三国志信長の野望にハマっていましたが、まったく興味が持てませんでした。

親との約束でゲームは1日1時間だったこともあり、短時間で目立った動きが見えないシミュレーションゲームは時間がもったいない気がしていたのもあります。

 

そんな性分なので、独立開業をめざしたのもいわゆる経営者になりたかったわけではなく、自分で作りたい食事を作って目の前で食べてもらうという繰り返しがやりたいというのがまず最初にありました。いわばアクションゲームの感覚です。ゆくゆくそのことで生計を立てられるようになれば、会社で働くよりも自分と家族の時間がもっと充実するだろうと思っての選択でした。

 

何か取り組みを始めるときに、事前にある程度の数字とタスクを洗い出して細かく計画は立てるのは好きですが、スタートしてからプレイヤーとしてその計画を追うのはかなり苦手です。始まってからは肌感覚で方向性を決めてしまいます。

 

こんなことでこの先大丈夫だろうかと不安がなくもないのですが、この2年を振り返るとずいぶん楽しくやってこれたので、しばらくは自分の感覚にしたがってやっていきたいと思っています。

 

【おすすめレシピ本 その5】

レシピ本ではなく、ノンフィクション風の伝記小説です。

「美味礼讃 / 海老沢泰久」文春文庫

辻調理師専門学校創始者である辻静雄をモデルにした物語です。

まだ日本にフランス料理が伝わっていないころに、もともと料理人でもなかった元新聞記者が料理学校を立ち上げて、一生をかけて本場のフランス料理を日本に紹介し、料理人を育て続けたというのがその物語です。

 

日本でフランス料理が当時どのくらい無理解だったかという話(トリュフは入手しづらいので黒オリーブを刻んで使う など)や、料理学校の経営を軌道に乗せるまでの話、満腹の限界を超えてもなお現地で料理を食べ続け、日本に知見を残そうと覚悟する話など、読んでいて興奮するところが何箇所もありました。

 

作家によるノンフィクションであるとはいえ、辻静雄本人の著書を読めば、安易に誇張した物語ではないことは理解できます。

初めて読んだ当時も、今もなお勇気をもらっている本です。

 

何年か前に、ヨーロッパのチーズを専門に輸入する会社の社長の話を聞いたことがあります。

今のように輸入のナチュラルチーズがスーパーに並ぶような時代よりもっと以前から手掛けておられる方でした。そのとき「ヨーロッパのチーズを輸入するというのは日本でいえば数日しか保たない生の豆腐を輸出するようなもの。鮮度や衛生面におけるリスクの塊なのに、こんな厄介なものを誰が輸入しはじめたんだろうと思う」という話が出てきたことを今も時折思い出します。

 

フランス料理の知識や技術もさながら、昔の日本になかったのに今では当たり前のように日本で手に入るものはたくさんあります。それらを日本へ持ってくる仕事を手掛けた人がいたこと(今も、そういう人はいるのだと思います)、その段取りの苦労を思うと、いつもため息が出る思いがします。

 

ちなみにその社長は、輸入したチーズが日本に到着する日は今でも深く眠れないそうです。

検査しだいでは一回の輸入分が全量破棄となることもあったり、日本に持ち込んではいけないカビが生えていたりすることは何度もあって、布団の中でそういう日のことを思い出すそうです。改めてチーズの有り難みを感じた日でした。

 

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