おいしくならない思い込み
【近況】
夜の営業を再開するにあたって、常時30品ほどあったメニューをリセットすることにしました。
1日に1組来るかどうかもわからない状況なので、いったんは絞りこんだ材料で、なおかつランチやお弁当にも転用できるメニューラインナップに見直しというかたちです。
今までは、このメニュー外すのどうしようと迷うものもあったりしましたが、そんな踏ん切りのつかない問題もこの状況ではずんずんと断捨離されていきます。
ただ、あまりにも始末よくしようとし過ぎると、それはそれで面白みのないメニューばかりになるので難しいところです。
常に3.4種類は土鍋ごはんを用意していましたが、それも1種類にしぼっています。
逆に、ランチで炊いたご飯が使いきれないことが増えたので、おいしく食べるためにお茶漬けや焼き飯をメニューに加えました。
これらをリピートしに来てくれる方が増えてきつつあり、怪我の功名というか新たな可能性が見えなくもありません。
あとは、これまでやってみたかったけど手間が多くて避けていた料理を出したりしています。和風にアレンジした田舎風パテや、昔よそで食べて感動したハムカツコロッケなど、いろいろやっています。
ランチメニューをお弁当にして販売もしていますが、意外に反響があったのは予約限定の「鯛めし弁当」でした。今後も定番メニューにしていくことになりそうです。
自分で思い描いたように一つ一つ形にしていく苦労は多々ありますが、最終的にはお客さんの反応が集まって本当の形が決まるように思います。来月、再来月には店がどうなっているのか、不安半分期待半分で過ごしています。
【ぽんたんのキッチン紹介 その8】
キッチン紹介というか、キッチンにまつわる自分の反省話です。
中途半端な知識が邪魔をして、長らくおいしい食べ方を逃していた、という経験があります。
立ち食いそばに行くと、天ぷらそば(うどん)に乗せる天ぷらは、だいたい常温で置かれています。
自分は、これが揚げたてだったらどんなにおいしいだろうといつも小さな不満を感じていました。
しかし、実は「揚げたての天ぷらには、常温程度に冷ました天つゆを使う」というセオリーがあります。そのことを、長らく知りませんでした。
揚げたてのまだ熱い天ぷらを熱々の汁に浸すと、衣が汁を吸って崩れてしまいます。せっかく衣をきれいに纏わせて揚げた海老天も、一瞬で剥がれて台無しになります。
だから、温度差のあるぬるい天ぷらを乗せる立ち食いそばは理に適っているのです。ちょっといい蕎麦屋さんで天ぷらそばを頼むと、揚げたての天ぷらに天つゆが別で添えられて提供されることがあります。
それなのに自分は、天ぷらそばを作るときはわざわざ天ぷらの揚げたてとそばの茹でたてのタイミングを合わせたりして、熱々の天ぷらをそばに乗せて食べづらいなあと思いながら自己満足に浸っていたのでした。
また、ステーキや唐揚げの火の通し方もわかっていませんでした。
「中心に火を通しすぎない」というのが何より大事だと思い込んで、表面だけが焼けたカツオのたたきみたいなステーキを振る舞ったり、揚げ色がまだつかないグニュっとした唐揚げを絶妙な揚げ加減だと悦に入っていたりしました。どちらも、メリハリのない半端な仕事で、食材に失礼なことこの上ありません。
自分の子どもが大きくなるまでには、「人間にとって、思い込みほど手に負えないものはない」と教え続けようと思います。
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