塩上手は夏上手
【近況】
じめじめぐずついた天候が長引いてくると、夏野菜のありがたみが際立ってきます。きゅうり、みょうが、大葉、ナス、オクラ、ししとうなどの独特の香りはこの時期にこそおいしさがわかるような気がします。青臭さやアクの強さが刺激となって、体の内にこもった湿気を洗い流してくれるようです。
いま当店では特に無農薬野菜や有機野菜にこだわることはありませんが、なるべく八百屋さんで並んでいる野菜を見て買うようにはしています。
スーパーに行くより品揃えは少ない日が多いのですが、そのぶん鮮度のよいものだけ並んでいる印象です。やはり新しいと日持ちがぜんぜん違います。
重たくてかさばるものは、野菜を運んでくれる業者さんに頼むときもあります。鮮度の良さはかないませんが、すぐに使い切れるものなら大丈夫なわけで、こちらも大変重宝させてもらっています。
昔から実家の敷地で家族が野菜を育てています。最近は農薬もいちいち撒かないので、これらは一応無農薬野菜ということになります。おいしいにはおいしいですが、収穫時期には食べ切れないほど穫れて食べ飽きるので、結局ありがたみという点では薄れてしまいます。
しかしながら、季節に合ったおいしいものだけが絞られた品数しかない環境で知恵をしぼったほうが、料理は上達するような気もする今日この頃です。
【ぽんたんのキッチン紹介】
塩についての話です。
汗をかく夏は体が塩分を求めるので、味覚が変わりやすくなると聞きます。味付けする側も、いつもの塩加減にしたつもりが塩気がつよめになるということもあるようです。
味噌汁につかう味噌の配合も夏と冬で変えるというセオリーがあるので、当店でも冬は白味噌を増やして甘めに、夏は赤味噌を増やして塩気を感じやすくしています。ベースは同じなので大きく味に違いはありませんが、2年続けてみて、ようやく最近これは大事だなと感じるようになりました。
ドリンクについても暑くなると塩気のすこしあるものが人気のようです。
当店では最近、和歌山の梅干しをエキスにして溶け込ませたリキュールで作る「うめぼしサワー」が人気で、たしかに甘しょっぱい味わいがクセになってつい飲み続けたくなります。
洋菓子の本場ヨーロッパでは、塩を使って甘みを強く感じさせると聞きました。
ヨーロッパ志向の味付けは日本人には甘すぎることが多いらしく、日本向けの輸出品は甘みを抑えてくれとオーダーしたら、塩だけを減らして要望どおりに調整してきたという話だったと思います。
自分の経験上でいうとこの逆もまた然りです。
汁物、煮物などで、塩を足しても足しても好みの塩気にならないと感じるときがあります。こういうときはだいたい、みりんや砂糖を少し加えるだけで味がはっきりします。カレーなら玉ねぎやりんごを増やすのも同じ効果になると思います。
ちょっと古くなってしまったり、クセや匂いが強い食材は、塩を強めにきかせるとクセが和らぐように思います。
塩気を強くすれば唾液がより多く出るので、より口内が洗い流されて味や匂いが残りにくくなるからではないかと見ています。
やはり塩の扱いは調理の基本のようです。まだまだ使い方を研究していきたいと思う次第です。