炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

たのしい熱帯夜

【近況】

今年の夏は例年より暑いので、通常490円のハイボールを290円で提供しています。

 

暑いというのは、実際の気温の話ではなく、感染防止のための換気で窓を開けているせいです。

完全に開け放すとさすがに熱気が厳しいのと、虫の侵入がどうしても避けられないので、小窓の部分を開けるにとどめていますが、それでもエアコンの冷気はかなり失われてしまいます。

 

夕立があると室外機が冷えるのでエアコンの効きも良くなりますが、もうそろそろ昼夜問わずに暑い日が続くころなのでフル稼働状態にしても効きが微妙になりがちです。エアコンへの負担も心配なこの頃です。

 

そんな環境のせいか今年はやけハイボールをおかわりするお客さんが多く、それなら気兼ねなくおかわりできるようにとサービス価格にすることにしました。たくさん飲みたいお客さんがいつもより多めに飲んでくれたら結果当店もありがたいですし、一杯だけならと試しに入ってくれる方が増えたらと思っています。

 

居酒屋はお酒で儲けているとよく言われますが仕組みとしてはほぼまさにその通りで、ハイボールはまさに利益を残しやすいドリンクの筆頭です。大手の居酒屋チェーンでほぼ必ずビールより大きなスペースと写真でメニューに記載されているのはそういうことで、ビールよりもハイボールを売りたいのはメーカーもまた同じというところでもあるようです。

 

さらに店先や店内に商品の写真入りポスターやのぼりを立ててアピールすることその他諸々で協賛が得られる的なこともありますが、それはある程度店舗数や売り上げ規模のおおきな店に当てはまることで当店にはあまり縁のないお話です。

 

なので正直ハイボールもビールもどっちが売れたから利益が全然違うといったインパクトもほとんどありません。その時々で飲みたいお酒を飲んでもらえるようにしたいと思います。

 

【記憶に残った店の味】

夏といえば冷たい蕎麦がおいしい季節で、東京にいた頃は街中に気軽に入れる蕎麦屋が多くてありがたかったことを思い出します。

富士そばゆで太郎小諸そばあたりは都心のだいたいの駅には必ずあって、いずれも立ち食い価格で生蕎麦が食べられる関西にはないチェーンでした。

 

せっかくなので東京にいる間に蕎麦の有名店へ行ってみたいと思っていたとき、蕎麦で名高い神田を歩く機会があったので、立ち寄れる距離の蕎麦屋をさがして見つけたのが「神田まつや」でした。

 

秋葉原方面に多くのビルが見える道路沿いに、こぢんまりといかにもな雰囲気の古い日本家屋があります。

平日の夕方でしたが8割ほどお客で埋まっていました。老舗らしい雰囲気とすこし勇気の要る価格帯に期待を抱いて確か天ざるを注文したと思います。

なかなか見たことのない立派な大きさでまっすぐ揚げられた海老天が一つ添えられたざる蕎麦でした。貫禄に満ちた佇まいです。

 

2000円弱はしたと思いますが、言っても蕎麦なので食べ終わるのはあっという間です。いろんな意味でこんなに減っていく蕎麦が惜しいと思ったことは初めてでした。

大きな海老天のおいしさもさることながら、感動したのはつゆの味です。醤油の風味、塩分、甘み、旨みのそれぞれに強い芯がありながら全てがまとまった穏やかな口当たりのつゆでした。

蕎麦湯で薄めてもなお味がしっかりしていて、薄めたつゆでまだまだ蕎麦が食べられそうなほど鰹節の旨みが詰まっていたことに驚いたことを覚えています。

 

東京は温かい蕎麦も濃い醤油色のだしで出されます。かつては関西風の薄色のだしが一番だと思っていましたが、歯応えがあって風味の強い生蕎麦には醤油の濃いだしでないと負けてしまうようです。

ひきかえ、大阪の立ち食い蕎麦は風味も歯応えも柔らかいゆで麺が基本なので、関東風の濃いだしは強すぎる。やはりそこは薄色のだしがぴったりです。蕎麦を味わうのが関東風、だしを味わうのが関西風だというのが自分の解釈です。