巧みなその場しのぎ
【近況】
またしても感染拡大のあおりで客足が落ち込んできました。こんなときは食材が無駄にならないようにメニューをしぼることもあります。
もちろん平時のときでも、メニューは季節感や人気に応じて臨機応変に変えています。
2年経ったことで、支持が多いメニューがわかるようになってきてそういうメニューは自信をもってやり続けられるのでいいのですが、それだけでは面白くないので、季節の食材や新しく目についたレシピやもっとお客さんの食欲が刺激できそうなメニューがないか日々考えています。
ただ、店を始めるまえから、メニューを考えるときは「無駄なく食材を使い切る」というテーマでやると決めています。このあたりを両立させて楽しんでもらえるメニューを作るのは骨が折れます。
単に複数のメニューの中で同じ食材を使い回すにしても、まだ頼れる知識と経験がないためにその場しのぎで魅力のないメニューを増やしてしまいそうになります。
例えば「サーモンの刺し身」を出したくてサーモンを仕入れたが使い切れないのでと、「サーモンの天ぷら」「サーモンのオムレツ」といった、サーモンの持ち味が生きるとは思えないメニューを入れてしまうといった感じです。
時間があればなるべくいろんな書籍にあたるようにしていますが、そのあたりをバランス良くまとめあげるにはまだまだ元となる知識の土台を強く大きくする必要を感じます。センスのいいその場しのぎを繰り出せるようになるには随分時間がかかりそうです。
【おすすめレシピ本】
上沼恵美子のおしゃべりクッキング①/ABC+辻調理師専門学校 学研
風邪で学校休んだ日や夏休みの昼下がりに、誰もがぼんやりテレビで見たことのある(今も放映中ですが)あの長寿番組のレシピ本記念すべき第1巻です。
最初期の放送内容ということもあって、基本中の基本的な料理のレシピが紹介されています。そこにひと味プロ目線の工夫が入っていて、かなり応用がきくアイデアが詰まっているのがおすすめの理由です
とはいえ、家庭での調理を前提としているので入手しづらい食材も出てきませんし、家庭の調理器具で完結できるレシピです。
実際に日替わりメニューでも使ってみたのですが、タコの酢味噌和えに使う「酢味噌」は大変おいしいレシピでした。
よく見かけるのは酢、砂糖、白味噌のみで作るというレシピなのですが、コクを出すのに卵黄を使うことで後を引く味になっていると思います。
この酢味噌は最後にショウガの絞り汁をわずかに加えるレシピなのですが、その風味が卵のクセを穏やかにしてくれるのでぐっとまとまりのある味に仕上がるのも感動的でした。
アマゾンで調べても現時点では中古は見当たらなかったので、古本屋でないとなかなか手に入らないかもしれません。見かけたら買っておいて損はなく(あるとしたらかなり安く売られているはず)、だいぶ役に立つ一冊だと思います。