炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

機転は使いよう

【近況】

先日土鍋ごはんメニューの新作にと鰻のひつまぶしを土鍋で仕立てた風の「鰻の土鍋まぶし」を始めたところ思った以上に多くの注文をいただきました。

 

材料がそこそこ高価なこともあり、けして安くはない価格にしたので、常連さんであっても注文はそこまで入らないと見込んでいました。メニューから季節感だけでも味わってもらえるかなといったつもりです。しかし結果的に、わずかな期間で注文がぐっと集中しました。

 

考えるに、やはり鰻という食材は年がら年中食卓にならぶほど身近な食材ではないという点、それが専門店らしく土鍋ごはん仕立てになっている点、夏という季節といった条件がいろいろ重なったおかげだと思います。

 

昔、ランチで得意先を接待するのに無難でちょうどいいものの筆頭が鰻だと教えられたことがあります。・話をしながら食べやすい・安い食事ではないことが十分伝わる・なかなか自分から食べに行くものでもない、等々、結果として商談を邪魔せず、もてなしたい気持ちが伝わって、相手に失礼がないという話だったと思います。この世にいくら沢山の料理があるといっても、このような場面場面にふさわしいものを見極めるのは難しそうです。

 

リピーターのお客さんにお気に入りのメニューを常に用意しておいたり、好みに合いそうなメニューを入れるのはもちろん大事なのですが、その人自身が気づいていないけれど実は喜んでもらえるメニューが何かを探って提案することのほうが、おもてなしとしては大事なのかもしれないと感じた一件でした。

 

【何でもない話】

外食したとき「あの店おいしかったな」と判断するのに、人は大きく2タイプに分かれるそうです。

A.店で食べた料理そのものの味に満足できたかを重視するタイプと、B.店で過ごした時間そのものに満足できたかを重視するタイプだと聞きました。

 

前者は、料理さえ口に合えば仮に店が古かろうが多少汚かろうが、店員の愛想が悪かろうがあまり構わない。後者は、接客や店の雰囲気、清潔感など食事にまつわる環境が整っていないと、せっかくの料理も台無しといった感じでしょうか。

 

自分個人は、おいしいものに出会えたという感動があれば環境の悪さはわりと我慢が利くほうかなと思います。ただ、仕事で一時期それなりに数多く視察で同業店をまわることがありましたが、汚い店なのに食事がおいしい!みたいなところに出会えた記憶はありません。スタッフが怖い、変な場所にある、などはむしろ体験としては盛り上がりポイントになることもあると思います。

 

体験といえば、最近は目新しいシステムを提案して好奇心を刺激する体験をお客さんに提供するという店も増えてきているように思います。

新しくできたスターバックスで、ふつうにコーヒーを飲もうと思ったら豆の種類から淹れ方まで選ぶ仕組みの新店舗でおどろいたことがありました。正直、味の印象よりも注文に戸惑った記憶のほうが強く残っていますが、事前に「そんなスタバがあるのか、行ってみよう!」と下調べして来店していれば、きっと堪能できたと思います。

 

仕掛け、ギミックの部分が、本分である料理の質とうまく噛み合って人気になった店というのはいくつか思い浮かびます。ただ、長続きさせるのは大変だという感覚、頼り過ぎるとろくなことにならないという感覚は経験上なんとなく身についた気がします。