炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

ややこしいから味な奴

【近況】

この1週間くらい、店で使っている手作りのドレッシングやソースなどを販売する準備をしています。

当店のお客さんは遠方からお勤めで出てこられている方が多いようなので、普段使いでそこまで売れるような気はしていませんが、何か新しいきっかけになればと思っています。

 

ドレッシング、ソース類は、スーパー等で買えるものにもおいしいものはたくさんありますが、生の食材から作ったものは根本的に味が違うので、食べてみればそのあたりの違いを感じてもらえると思います。

 

ドレッシング、ソース類にかぎりませんが、大量に製造する食品ではコストを下げるために生の材料を乾燥したものや濃縮のエキス、パウダーのものに置き換えたりします。生の野菜や肉は、温度管理や嵩ばるなどの面で物流にコストがかかっているからです。

しかも仕上がりに均一性が出るし、品質管理もしやすくなります。今や手軽にいろんな種類の加工食品を楽しめるのは、そういった工夫のおかげでしょう。

 

生の材料を使うと、品質のブレも出ますし衛生リスクも上がります。野菜だと季節によって香りやアクの強さが違うなど風味に影響も出ますし、それらを完全に取り除くことはできません。

 

しかしながら、そういうややこしい手作り品には、安心安全な大量製造品にはない本来の意味での「個性」があると思っています。その個性は、おそらく万人受けはしないもので食べる人を選ぶものなのですが、食事の楽しみを広く奥深くしてくれるものなのではないかと思っています。

 

【キッチンの内情】

飲食店で休憩中にスタッフが食べる食事を「まかない」と呼びます。

初めて自分がまかないを作った日のことはかなりはっきり覚えていて、学生時代のアルバイトのときです。確か入って3年目くらいの頃で、社員や先輩スタッフの口に入るものの味付けをすることが初めてだったのでものすごく緊張しました。

 

その日くらいから、徐々にお客さんに出す料理の味付けも任されるようになりました。それまで担当していたのは、サラダやおつまみ、揚げ物といった、味がすでに決められているという意味で簡単なものだったのです。

そうなってくると次は厨房のリーダー的な存在を任されるということになっていき、バイトながらに刺身を切って盛ったり、煮物系や日替わりメニューの味を決めてもよいということになります。

 

その店は当時の居酒屋事情もあって利用客も多く、1店舗に属するスタッフも多かったのでしょう。スタッフ一人一人のステップアップは、店長に限らず周りが少しずつ認めていくような流れの中、誰かが主導ということもなく、ゆるやかに行われていました。

 

まともなマニュアルやレシピもない現場でしたが、衛生管理や技術指導はお互いに何となく共有されている基準があって、それは今振り返っても高いレベルで維持されていたと思います。自然発生するルールは、与えられたルールよりもしっかり文化として根付くし、必要に駆られたアップデートもなされるもののようです。

 

バイトは実際のところ、楽しいことも嫌なこともいろいろありましたし、一言でいい思い出だったとはいえないのですが、自分にとっては不思議な魅力のある場所でした。

ルールや育成を現場に任せるというのは、店長やオーナーとしてはややこしくマネジメントしづらい現場だと思うのですが、いつかはその頃の空気感がただようような店をやってみたいなという思うこともあります。