そして上書きはつづく
【近況】
オープンして以来、面白い店とはどんな店だろうと考えない日はありません。
自分にとって面白いなのか、お客さんにとって面白いなのかによってもその意味は変わるかもしれませんが、両方にとって面白い店が長く続けられたら最高だと思います。
面白いにも色々あります。雰囲気や接客にユーモアが感じられて面白い、斬新で奇抜なアイデアが凝らされていて面白い、食やお酒について新たな発見があって面白い、ありえないほどコスパが高くて面白い、突き抜けたキャラクターを持つスタッフがいて面白い、等など。
しかし、あからさまに狙いすぎて仕掛けると、かえって鼻について面白くない、というジレンマもありそうです。
立地によっても求められる面白さは変わるかもしれません。人の流れが多いところでは斬新で奇抜なアイデアで面白いと話題になれば、入れ替わり立ち替わりお客が来てくれるかもしれませんし、逆に流れが固定的なところでは店の雰囲気や接客にユーモアがあって何度も行きたくなるような店がいいかもしれません。店主の性格によっても、合う合わないがありそうです。
毎度考えれば考えるほどに、面白さというのは狙って上手く続くことではないなと痛感します。まずは自分が心から面白そうだと思うことを探しては始めてみて、それらが一つでもうまくお客さんにハマるようにしぶとく続けていこうと思います。
【記憶に残った店の味】
これまで当たり前のように生ビールを外で飲んできましたが、ふと自分がこれまで飲んだ生ビールで一番おいしかったのはどれだっただろうと考えてみました。
頭にまず浮かんだのは、飲食店ではなく、難波千日前にあるアムザというサウナ大浴場の仮眠ブースで飲んだ生ビールです。
就職してすぐの頃、大阪市内に一人暮らしをしていました。一年目の頃の仕事はかんぜんな昼夜逆転で、休みの日も朝仕事から帰った後に寝るので、目が覚めるのはだいたい夕方6時頃でした。
疲労が溜まってる時はさらに二度寝して気づけば夜9時ごろになっていることもしばしばでした。
そこから自転車に乗って、まず向かうのがそのサウナでした。いつも大浴場とマッサージがセットになったコースで入ります。
そこでは、お風呂からマッサージへ向かい、そのあとのサービスドリンクで生ビールが選べるようになっていたのです。
社会人になって一年目、とにかく疲れて帰る毎日で、学生時分にはなかった楽しさもやりがいもあり、その一方で孤独さを感じたり、焦りや迷いもあったり、いろんな感情に振り回されていたことを覚えています。
そんな日々の疲れをサウナとマッサージで癒し、仮眠ブースのリラックスチェアに座って、冷たいビールに口をつけると、それらの複雑な感情がいったんすうっと落ち着き、深いため息が自然とでてきます。最高のくつろぎでした。
その味は今となっては他に比べようもないおいしさだったと思います。
しかしながら、最高の記憶がだいぶ昔のまま更新されていないのは寂しくもあるので、さらにグッとくる1日が過ごせるようありたいと思います。