覚醒をリマインド
【近況】
また何度めかとなる大幅な時短営業が始まりました。
時間が余りますし、食材が大きく動くのはランチ営業のみとなるので、ランチの定食に添える小鉢や漬物にちょっと凝ってみたりするのが恒例になってきています。
平時は他の仕込みや片付けなどの時間に追われているので、小鉢の中身はいかに少ない時間で量が作れるかが最優先となります。業務用には便利でおいしい調理済みパックのおかずがいろいろあって、時間がない現場にとってはかなり手助けになります。
しかしその手の調理済み食品は、毎日毎日扱っていると匂いだけで嫌になってくるという思い出があるので、なるべく自分で材料をそろえて作るようにしています。そのため添える小鉢は一種類が限界というところもあったりします。
時短となって今は他の仕込みや片付けが軽いので、わりと丁寧に小鉢づくりを考えることができるというわけです。
といっても別にとびきり見映えのするものが作れるわけではありません。合わせる素材が1,2種類増えたり、小さく切ったり皮を剥いたりするのが面倒な野菜をあえて積極的に使ってみたり、やったことのないレシピに挑戦してみたりするといった程度です。
そういう感じで少々でも作業に負荷をかけていかないと、ついついダレ気味になってしまい、状況が改善したときにうまく波に乗れなかったりします。3月でせっかく入ってきた力の使い所を時短で失うのは虚しいものですが、うまい具合に別の使い所を見つけていきたいと思います。
【キッチンの内情】
今年に入って早々に、オープン以来なぜもっと早く入手しなかったのかと強く反省したあるアイテムを導入しました。
それは、まな板の高さを15センチほど高くする台です。これによって、劇的に調理作業、特に包丁を使う作業と盛り付けが改善しました。
厨房での作業というのは、だいたいコールドテーブルと呼ばれる冷蔵庫の上で行います。冷蔵庫自体がだいたい腰くらいの高さで、その上部が段差のない平らなステンレス作業台になっています。
厨房の設計というのは、だいたい厨房機器メーカーもしくは販売業者の方に提案してもらいます。ほとんどのメーカーで寸法の規格は共通しているので、予算を伝えればだいたい区画にぴったり収まるようなレイアウトにしてくれます。
当店の場合は居抜きで残してあった既存のシンクや作業台と高さが合うコールドテーブルを提案してもらう形で高さを統一したのでした。
これが微妙な失敗で、包丁を使ったり盛付けをするのをへその下、腰のあたりの高さで行うことになり、背中をけっこう丸めて作業しなくてはなりませんでした。
しかし当初はそのことに気づかず、作業がしづらかったり盛り付けが見づらかったりするのは、体力不足と軽い老眼のせいだと決めつけていたのです。
オープンからしばらく月日が経っても盛り付けや包丁使いがいまいちしっくり来ず、やっぱり現場仕事は若いうちが一番だったんだなと思考を停止していました。
そんなあるときふと、昔アルバイトしていた店はたしかまな板や作業台がもっと高い位置にあったなということを急に思い出したのでした。冷蔵庫の足にレンガを咬まして高さを上げていたりしてあったのです。
いまから冷蔵庫や作業台の高さを変えることはできませんが、台などを駆使すれば解消できるかもしれない。
どう考えても気づくのが遅すぎたのですが、そこからはとんとん拍子に物探しもすすみ、最適な台を手に入れることができました。
手に入れたその日は、もう初っ端から使い心地に夢中でした。忘れていた感覚を取り戻すようでしばらく包丁や盛り付けが楽しくて仕方ないほどだったのを覚えています。
長い間微妙にしっくり来ていなかったストレスから解消されて晴れ晴れとした気持ちになったと同時に、衰えていたのは体力でも視力でもなく頭の固さだったのだと思い知らされた一件でした。