炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

手間も手抜きも使いよう

【近況】

毎年5月を過ぎたあたりで「山椒」が買えるようになります。乾燥させたものではなく、木になったまだ緑色のきれいな山椒の実です。

 

3ミリくらいの小さな無数の実が、細くて短い枝にぶどうのように連なっているのを、枝から外すという作業を行います。

これがなかなか終わりの見えない作業で、一昨年は張り切って多めに仕入れてしまい、終わるのに1週間かかりました。しばらく山椒はいらないと思うほど山椒の匂いで満たされます。

 

実を外し終わってもまだ調理には使えません。アク抜きするのにだいたい丸一日〜二日ほどかかります。やり方はいろいろあって、中には8時間弱火で湯がくという方法もあったりします。

 

そうやってようやく下準備が終わった山椒の実ですが、思いのほか好き嫌いの分かれる食材でもあったりします。長い時間と手間をかけて仕込んでも、ランチの小鉢に使うとほとんど手をつけられずに戻ってくることもしばしばあります。まだまだ使いこなせていないということでもあります。

 

それでも一時期しか出回らないので、見かけると買ってしまいます。山椒に限りませんが、あまり単体で食べるものでなくとも食材に合わせると他にない味わいが出るという特徴は魅力的です。

 

ちなみに焼酎やウイスキーに1週間ほど漬け込んでハイボールにするのもおすすめです。

 

【おすすめレシピ本】

おいしいごはんの勘どころ/野崎洋光

 

テレビ等でも長い間活躍されている日本料理人、野崎洋光さんの一冊です。

 

家庭で食べるおかずの味を見直そうという問いかけから始まります。外食や調理済み加工食品の発達で、濃いめの味付けが浸透しているけれど、塩分だけでなく「だし」の旨みも付けすぎるのはおいしくないのだと説かれています。

昆布と鰹で取るだしが和食の基本と思いがちだけれど、それは料理店にとって合理的なやり方の話であって、家庭の料理は野菜・魚・肉・卵などから出る味と、基本の調味料の組み合わせで十分だという話です。

 

以前このブログにも書いた、だし巻き卵をだしではなく「水」で作るというやり方もこの本にあります。他にも、味噌汁にだしはいらないという話や、大根をだしで含め煮にするのは料理店が仕込みの都合でおいしく作り置きするための方法であって、茹でたてをそのまま食べるのが一番おいしい食べ方という話など、思いこんでいた常識を覆してくれます。

 

自分としては見逃せない炊き込みご飯のレシピもありました。それもやはりだしは使わず、具の他は水と塩が基本でした。

 

いくつかレシピを試していますが、決して「うす味」ではないというのがポイントで、素材の味がきわだつだけの塩気はきちんと効かせてあり、匂いや香ばしさを引き出す調理をするのが肝のようです。

 

上手に理解すれば手間も減って、一品二品気軽に作り出せる余裕につながりそうな一冊でした。