間伸びも味のうち
【何でもない話】
朝仕入れから店に向かうまでのささやかな楽しみ「立ち食いそば」についてです。
先週は山梨にある忍野村で食べた打ち立てそばの透き通るような味わいについて記しましたが、立ち食いそばはそういった名品の類とは別の素晴らしさをもった大切なジャンルの一つだと思っています。
同じ「そば」とは呼びますが、自分にとって前者はまさしく「麺類」、後者は麺を具にした「汁物」だと思っています。
そばで名高い場所もしくは店に出向いて食べる時、気持ちはそばそのものに集中します。歯ごたえや喉越し、風味を味わい、つゆのおいしさを楽しみます。これはまっとうな麺類の楽しみ方だと思います。
いっぽう立ち食いそばを食べるシーンは全く違います。朝の時間がない時にそれなりにお腹は満たしたく、かといってパンやサンドイッチよりは温かいものが食べたく、かといって牛丼屋でかきこむほど空腹でもないという時の選択肢として立ち食いそばはあります。
自分は関西の立ち食いそばチェーンのいわゆるスタミナそば(月見そばに天ぷら)が定番で、丼にたっぷり湛えられただしをすすってお腹を温めながら、歯ごたえのないそばを手繰り寄せ、わずかな小エビとほとんど衣でできた天ぷらがほぐれていくのを目で追いかけつつ、卵をここぞという時につぶして味わうというのを楽しみにしています。
この時の気持ちは、麺類としてのそばを楽しむというより、具沢山の味噌汁やお茶漬けをふうふう冷ましながら流し込んでいるような感覚です。すなわちこれは汁物の楽しみ方だと思っている次第です。
流し込みやすさが立ち食いそばのおいしさのポイントなのかなと感じていて、たまに立ち食い価格で生そばや揚げたて天ぷらにこだわりのある店に出会うことがあります。期待できる嬉しさがある反面、立ち食いそばではあまり食べることに気を取られたくないなと思ったりします。
【レシピ紹介】
冬は小松菜のおいしい季節のようで、あまりアクも強くなく歯ごたえと爽やかな苦みでお腹がスッキリします。
小松菜のじゃこにんにく炒め
・小松菜 1束
・にんじん 1/4本
・ちりめんじゃこ 20グラム〜
※多めにすると味がよく出ます
・にんにく 1片
・サラダ油 大さじ3
・鷹の爪 お好みで
・塩 小さじ2
・濃口醤油 小さじ1
・酒 大さじ1
①小松菜はざく切りにし、砂を落とすようにザルでしっかり洗ってよく水気を切る
②にんじんは細切り、にんにくはみじん切りにする
③鍋にサラダ油、にんにく、鷹の爪を入れて弱火にかけ、にんにくが薄く色づくまでじっくり温める
④③にちりめんじゃこ、にんじんを入れて中火に強め、ちりめんじゃこが薄く色づくまでざっくり炒める
⑤小松菜、酒、塩を入れて強火にし、全体を混ぜながら炒める
⑥小松菜がしんなりしてきたら醤油を入れてよく混ぜる
きのこやもやしなど、水気の少ない野菜なら余りものを入れてもおいしく仕上がります。
時間が経つと小松菜から水気が出て味が薄まるので、
・⑤〜⑥では歯ごたえが残る程度で火を止める
・作ったらなるべく早く食べる
作り置きにしたい場合は、さらに塩を加えてやや濃いめにしておくとおいしく食べられます。