ぽんたん通信ウェブ版@肥後橋 炊い処ぽんたん

肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

ピントと距離感

【近況】

この1週間は、比較的おちついていた平日を使って新メニューを考え、商品写真の撮影をしていました。

いま店を手伝ってくれている相棒は写真撮影やメニュー・ポスターのデザインができるので、事あるごとに撮影やデザインを依頼しています。

自分自身も、いっとき社内の商品撮影を担当していた時期もあったため、何となくカメラが使えるようになりました。おかげでニュアンスのすり合わせがやりやすいので撮影は毎回スムーズです。

 

前職で自分が商品撮影を担当していたのは、撮影にかかる時間と費用を圧縮するという目的で、撮影業務を社内で内製化することになったのがきっかけでした。

多少カメラに興味はあったとはいえ、素人の自分が撮ったような写真で、正式な店のポスターやメニューブックが作られていたりしましたから、特に初めの頃はブレたり焦点がずれていたり暗かったりする写真ばかりで、思い返すと恥ずかしいことのほうが多いです。

 

それでも時間をかけて多少はマシになっていったのは、それが趣味ではなく業務になっていたからかもしれません。

 

自分の撮った写真が強制的に人目にさらされて評価される状態におかれるというのは、私自身の感覚だと趣味の延長ではなかなかできることではありません。

 

カメラを触るのがいくら楽しいといっても、ほかの仕事で忙しかったり、気分が乗らないときがあったりと「今日はやりたくない」と思う日も当然あります。それでも期限通りに必要なものを撮影して社内のデザイナーに提出する。デザイナーからダメ出しをもらって撮り直す。撮影にかぎりませんが、「身に付く」というのは、こういった繰り返しが積み重ねられる環境のおかげだと今となっては思います。

 

何かを新たに身につけられるほどの経験が、これからどれくらいできるかわかりませんが、少しでも興味が湧いたものには時間をかけて取り組んでいきたいと思います。

 

 

おすすめレシピ本 その3】

「辻調直伝 家庭の和食/畑耕一郎」講談社

 

家庭の、と記されていますが、時短や手抜きでもおいしい料理ができるというレシピがもてはやされる昨今の風潮からみると、やや手応えの強いレシピ本かもしれません。すこし昔の本になります。

 

でも、もしかすると、その風潮のせいで、多くの人々は自分が料理下手だ、手作りの料理はとにかく手間だと思わされているだけではないかと思うことが多々あります。

一度、すこし手応えのある昔のレシピ集に挑戦してみることは収穫も多いと思います。

プロが実践するような、古くから研究されてきた調理の工夫や食材の相性のノウハウを、家庭でも活用できるように記されていますので、生きた料理の味を知ることができます。一つ一つのレシピに込められた工夫が身につけば、その場しのぎではない、身のある時短術につながると思います。

 

また、巷にあふれる家庭向けのレシピと加工食品の中から、自分たち家族と相性の良いものを見つけることは大変です。その手助けにもなると思います。

テレビ、雑誌、ネット記事は、いろんな風潮をつくっては日々私たちの欲や焦りや負い目を刺激してきます。よくよく考えて買うものを決めたいと思う今日この頃です。

 

 

※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。

 

たのしい緊張

【近況】

正月休みがあけて最初の1週間が終わりました。長めの休み明けのランチは、体と頭が追いつくか不安で毎回ヒヤヒヤしながらオープン時間を迎えています。

今年の初ランチタイムは、去年からのリピーターの方に加えてふだんお見かけしないお客さんも多く、よく晴れた日ということもあってかにぎやかでした。良い始まりを迎えられてありがたい限りです。


実はこのランチ営業というのは、オープン当初あまりポジティブに捉えていませんでした。

それは、勤めていたころに何度かランチ営業を経験した中で、「ランチに来るお客さんは怖い」という印象をもってしまっていたからです。


料理が遅いとか、冷めているとかと怒られたり、従業員の態度が悪い、呼んでも来ないとかとクレームが届いたりするのは、夜よりも昼のお客さんのほうが圧倒的に多くありました。

非があるのはこちら側ではあるし、昼は夜と違ってお酒をゆっくり飲む時間ではなく急いでいる人も多いから、仕方ないのかなと納得するようにしてはいましたが、なんにせよ人から怒りをぶつけられるのは何度経験しても受け流せるものではありません。


そんなこともあって、当店でもオープン後にランチを始めるとなった際は、心の奥では少し憂鬱さもあったのでした。


ところが実際にやってみると、そんな心配なことは何一つ起こりませんでした。むしろ今となっては大きなやりがいのある時間になったので、何事も考え過ぎは良くないようです。


心配なことに見舞われるどころか、以前のブログにも書きましたが、この約1年半は優しいお客様にほんとうに恵まれましたし、クレームよりもむしろ励みになるような口コミやブログ記事を残してくれる方もいて、おかげで自分の考える方向性に自信が持てるようになりました。


ランチ営業は、毎日朝から抜けのない段取りを組んで、つねにスピーディに動き回り、それでいてわりと薄利多売のため数をこなさないといけない、それなりに負荷が強いものです。逆にいうと、それだけの負荷を自分の意志だけで自分にかけるというのは難しいもので、ランチ営業が平日毎日あるおかげで頭も体も活性化できている実感があったりもします。


引き続き周辺にお勤めしている方々に、良い昼食の時間を過ごしてもらえるよう続けたいと思います。


【ぽんたんのレシピ紹介 その6】

根強い人気を誇る、当店定番おつまみの一つ「セロリの醤油漬け」です。


分量

・セロリ 1本

・水 150cc

・塩 大さじ1


※以下を同量ずつ(セロリ1本として25ccずつが目安)

濃口醤油

・薄口醤油

・みりん

・酢

・水


・ごま油 大さじ1

一味唐辛子 適量


①セロリは表面の筋をピーラーでむく

※むかなくても口には残りますが食べられるので、気にならないならそのままで


②水に塩をよく溶かす


③セロリを好みの大きさで一口大に切り、②の塩水に20分程度、しんなりするまで浸す。

※ななめに細長くスライスすると、筋が短くなり口当たりが良くなります


濃口醤油以下の調味料を合わせる


⑤③のセロリを手で絞るようにして、水気をしぼる


⑥容器に④を入れて⑥のセロリを漬け込む

※8時間以上漬け込めば味が入ります

※冷蔵庫で5.6日程度は保管可能


ポイントは、しんなりするまで塩水に浸けてからしぼることです。塩分で脱水することが目的です。漬け汁が水っぽくならないので味がぼやけませんし、日持ちします。


このレシピは、きゅうりや大根、人参など歯応えがある野菜に応用できます。数種類漬け込んだり、香り付けにしょうがやにんにくのスライスを漬け込んでもいいと思います。


使いきれずに残った端の部分の野菜をあつめて、小さく切って漬け込めば、傷んでしまう前に無駄なく使い切ることができます。


野菜が傷んだり、風味が悪くなるのは野菜が本来持つ水分が古くなることが原因なので、根茎類なら塩分で脱水する、葉物ならさっとゆがいて水気を絞っておくなどすることで、日持ちを良くすることができます。


※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。



胸焼けの向こう側

【近況】

人生の選択で後悔することはない性格ですが、1人で食べるごはんの選択で後悔することは多々あります。


入った店がおいしくなかった、失敗した、という後悔ではありません。味にケチをつけたくなるような店に出会うことはほとんどありません。では何に後悔しているのか。


ひとつは、出先でいま何を食べたいかを考えるときに、答えを急いだがために選び損じたと感じる後悔です。

いくら考えても決められないで、歩き続けた結果引き返せないところまで来てから、やっぱり最初に見つけた店にすればよかったと悔やんだことは数え切れません。


もう一つは、タイミングと量をよくよく考えずに欲の赴くままに食べてしまったときの胃もたれや胸焼けに悩む後悔です。


特に、新幹線に乗る前に買う弁当・おつまみ選びには細心の注意を払っています。

新大阪駅、京都駅などで見かける駅弁やおつまみはより取り見取りで、実に魅力的です。普段ならぜったいに手を出さないその価格帯も、出発時間という縛りに追われていると、何故か悪くないように思えるので不思議です。


かつては、それこそ食べ切れないほど買い込むのが楽しみでした。ビールもロング缶にしたり、缶チューハイもついでに買ったり。結果、降車時に胃もたれに悩まされることが増えていきました。乗っている間は座っているだけですから、それだけ食べればどうなるか少し考えればわかりそうなものですが。

弁当、ビールに加えスナックなどのおつまみ、ひどいときにはサンドイッチも一緒に買うほどでしたから、当然といえば当然です。反省して、徐々に量を控えるようにはなりました。


しかし年相応に消化器官も衰えるようで、もはやサンドイッチとコーヒーだけにした日ですら降車駅で胃もたれが襲って来たときは、もう新幹線で食事をするのはやめようと誓ったものでした。この1、2年は、水かコーヒー以外何も買わずに乗ることのほうが多かったと思います。


先の年末、富士山の裾野にある妻の実家へ帰省することになり、後を追うかたちで1人出発することになりました。京都駅から新幹線です。

ひさびさの一人旅、くわえて、年末の営業を終えた解放感に包まれて、ふと気がつけば駅構内の売店を転々、弁当、お酒、おつまみを詰め込んだ袋を持って嬉々とホームに向かっていました。


乗り込む前までは、食べ終わったころの後悔など全くイメージできないものです。真冬に真夏の暑さが思い出せないのと似ている気がします。


今年は、清々しい晴れた空に、富士山がよく映える元旦でした。今年はなるべく後悔の数を減らせるようでありたいと思っています。



【記憶に残ったお店の味 その5】

大阪は八尾市という街に2年ほど住んでいたことがあります。そこにある店で、入社して初めての店長の仕事をしていたころです。


それまで大阪市内の店で働いていた自分にとっては落ち着いた住宅街ということもあり、少し地に足をつけて過ごせた場所で、今でも好きな街です。


当時住んでいたマンションの近くに、民家が一棟そのまま店になったような落ち着いた雰囲気の焼き鳥屋さん「かちがらす」がありました。

夏の夕方ごろ、格子戸から自分がそっと覗きこんだところを声がけされ入って以来、通い続けたお店になりました。


このお店で勉強になったことはたくさんあって、当店の「鶏レバーやわらか煮」は、このかちがらすのメニューを再現したくてはたまに試作し、10年以上経ってようやく納得のいく仕上がりにたどり着いた思い入れのあるメニューです。


割烹スタイルの和装で男ばかりのスタッフ、粋でハンサムな雰囲気のオーナーが仕切る店内は、当時の自分の憧れでした。休みの日は早めの時間に訪れたり、仕事終わりにも早く終えられた日は深夜に寄って帰ったり、仕事一色で過ごしていた自分が一息つけて、勉強にもなる場所でした。


ほおずきトマトや三色アスパラ、マコモダケなどまだ当時の自分が食べたことのない珍しい野菜を使った一品や、低温調理や燻製、フレンチ・イタリアン風の仕事がされたモダンな鶏料理、気軽にワインを焼き鳥にあわせるスタイルなど、のちのち一通り流行ったような食事が、郊外に住んでいながらで体験できたのは大変ラッキーだったと思います。


その当時2006、7年ころでたしか10周年ということでしたから、今すでに20年以上続くお店になっているはずです。まったく同じことは真似できなくとも、当時印象に感じた好きなお店のエッセンスは、うまく取り込んで反映させていきたいものです。



※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。

見えない顔と見える顔

【近況】

12月最後の週が終わりました。27日の金曜日は周辺の皆さんは仕事納めもあってかにぎやかでした。

当店も予約こそ1組しかありませんでしたが、まもなく満席になって数組お断りしないといけない状態でした。

 

当日足を運んでくださったのはほとんどが常連、リピーターの方でした。ふだんは皆さんが全く同じ日にお見えになることはまずありません。それが、皆さんにとっての一年締めくくりの日にこうやって迎え入れることができたというのは何物にも代えがたい嬉しさがありました。

2度目の12月、あっという間に一年が過ぎたと思っていましたが、僅かながらも積み上がったものがあったのだと感じた一日でした。

 

しかしながら、余韻にひたって年始をのんびり迎えるというわけにもなかなか行きません。1月も多少は新年会という需要があるとはいえ、12月に打ち寄せた波は影も残さず引いていくのが1月2月の常です。

来年もあらゆる点で入口をつくるべく工夫をこらして打ち出しを行い、来年はより忙しい年末にしたいものです。

 

【ぽんたんのキッチン紹介 その4】

今回キッチンそのものの話ではありません。

開店から1年と5カ月、取り組んでいないことの1つにグルメサイトでの有料販促があります。ぐるなび食べログホットペッパーなどの情報サイトに課金してよりネット検索で有利になるための取り組みです。目立たない場所に店があることもあって、いつか始めないとと思っているうちに随分経ってしまいました。

いずれも無料登録しての店舗ページ作りもできますが、そのページが検索時上位にめだつようにするには何段階かにわかれた課金が必要です。

 

いずれも日本を代表するグルメサイトですから、お金をかけたらかけただけ効果につながるわけで、お客を集めるためにやらない理由がないといえばそうなのですが、何となく違和感が拭えないためなかなか腰が上がりません。そのまま時間が経ってしまいました。個人で店をやっていて気楽なのは、腹落ちしないことはいくらでも先延ばしにできるところです。

 

店舗ページを作り込むのが面倒とか、最低でも1年縛りで課金する店側だけにリスクがある関係に納得できないとか、一方的に不透明な評価点をつけられるサイトに金を払うのが心情的に馬鹿らしいとか、どれが決め手というわけではないものの、やらない言い訳が頭に次々と巡ってくる間は距離を置いておくのが良いといまは判断しています。

そうはいっても、ほんの数ヶ月もしないうちに転向して課金サービスにすがっているかもしれませんが…

 

近年はGoogleマップ上で口コミを書き込むことが盛んなようです。当店でも、2019年の春あたりを最後に食べログの口コミは増えていませんが、Googleマップは月に1件ほどのペースで口コミが増えています。

自分自身の感覚として、口コミを書くというのは、そのお店を応援したいと思う気持ちから動くことが多いです。食べログの場合、かつて口コミに最低必要文字数の制約があったり、口コミ数が少ない人が書き込んでも評価点に影響は与えられませんと明記されていたり、場合によっては書き込んだ自分の口コミが人目にふれないほど下の方に表示されてしまったりと、勢い付いた気分が削がれがちでした。

 

いっぽうGoogleマップの場合は、書き込んだ順に口コミは表示されて、点数もわりとダイナミックに変動するイメージです。個人的には、口コミひとつ書くごとに信頼度ポイント的なものが貯まる仕組みや、「あなたの口コミが多くの人の役に立っています!」などの全体的にポジティブな高いテンションで書き込みを促す仕組み、そして「あなた方が寄せた情報で、あなた方が暮らしやすくなる・有事の際に役立てるサービスとなる」というGoogleマップの理念的なものが時折り伝わってくることに、共感しやすさをおぼえます。

また、自分が現時点で把握している限り、事業者がGoogleそのものに課金して有利を誘導できる仕組みではありません。あいだに介入して最適化を請け負う会社はあるようです。

 

人の善意を、人を介さず集める仕組みが進んでいることに、感じることの多い今日この頃です。

 

23時半の集中力

【近況】

この季節、近鉄電車で生駒のトンネルを奈良側にぬけると、寒さが際立ちます。

自分は開店当初から、大阪は肥後橋にある店まで電車で奈良から通っています。

さいわい、今のところ終電を逃して帰れなくなったことはありません。終電30分前に最終閉店時間を決めてはいますが、日によっては終電10分前までお客様がおられるときもあります。


同業の先輩にまず引っ越せと呆れられたこともありますが、今のところ店の近くに部屋を借りようかとは、実はあんまり考えていません。


前職で店長をしていたころは、店の近所に住んでいました。閉店時間が深夜だったので、自転車で通える距離である必要があったからです。

つまり、何時に仕事を終えてもいつでも帰れるところに住んでいました。

しかし、いつでも帰れるがゆえに、遅い時間になるほど緊張感がゆるみ仕事が遅くなり、また居眠りをしてしまったりと、結局だらだら朝方まで店に残っていることがほとんどでした。というより、毎日そうでした。


仕事もプライベートも関係ないほど仕事に熱中していたともいえますが、実際はそれくらい熱中している気になっていただけだと思います。

むしろ、「長い時間かけて仕事に取り組んでいるんだから、価値のある仕事ができているはず」と思っていた節すらあります。


この悪習慣から抜け出すのにはかなり時間はかかりましたが、さいわい独立を決めた頃には仕事時間を主体的に区切ることの大事さを優先できるようになりました。結婚したり子どもが生まれたりしたことも一因だと思います。


せっかく克服しただらだら心が再発しないよう、いまは物理的に遠くの自宅から通い続けることにしている次第です。


あと、本当に終電ギリギリの状態で、帰る片付けをしているときの緊張感が実はあまり嫌いではありません。脳のふだん使わないような部分が覚醒しているような手応えがあって、1分がとても長く感じ、頭をフルに使っている感覚がかえって心地良かったりします。毎日だときついでしょうけど。


今年ものこり1週間を迎えてなお、駆け込みの忘年会も少しずつ入ってきています。時間のやりくりが難しいところですが、今年の年末もきちんと家には毎日帰ろうと思っています。


【ぽんたんのレシピ紹介 その5】

今回は、まだ店のメニューには入れてませんがいつかやりたいレシピ「蕪蒸し(かぶらむし)」です。

白身の魚を、すりおろしたカブの生地で覆って蒸しあげ、淡めのだしあんをかけて食べる一品です。


蒸し料理なので全体的にやさしく、積もった雪のような見た目も冬らしい温かい一皿です。

かぶのピリッとした風味が魚のうまみを引き立てて、初めて食べたときに今まで味わったことのない風味の組み合わせに感動しました。


【分量 4人分】

◆蕪蒸し

・かぶ 小さめ4個

・さわら 4切れ

・卵白 0.5個分

・塩 


◆だしあん

・だし 300cc

・薄口しょうゆ 10cc

・酒 15cc

・塩 小さじ3分の1

・水溶き片栗粉 

 片栗粉・水をそれぞれ大さじ二杯


・粉山椒 柚子の皮 おろしわさび 好みで


①さわらの切り身に塩を振っておく。全体にまんべんなく振り、15分ほど置く。

さわらの表面に水分が浮いてくるのでキッチンペーパーでふきとる


②かぶは皮を剥いてすりおろし、水気を切っておく。完全に水気をなくすとかぶの味がなくなるので、ざるに入れて指でつかめるくらいの固さに軽くしぼっておく


③卵白を泡立て器で溶く。泡立てたらしぼったかぶと塩ひとつまみを加えさらによく混ぜる


④水を入れた蒸し器を火にかけ、沸騰したら中火にする。皿にさわらを並べて10分蒸す


⑤蒸したさわらの器に溜まった水分をいったん捨てて、③の生地でさわらを覆い、さらに15〜20分蒸す


⑥だしに酒、薄口しょうゆ、塩を入れ火にかけ、適量の水溶き片栗粉でとろみをつける


⑦蒸しあがった蕪蒸しに、⑥のだしあんをかける。好みで柚子の皮をすり下ろして振りかけたり、粉山椒やわさびでいただく


・さわら以外に鯛もおいしく出来上がります。青魚は臭みが出やすいので、白身魚が適しています。

・蒸しあがったかどうかの判断は、金串やフォークを刺してみて魚の中心温度を確かめるのがいいかと思います。

・魚の下にほうれん草などの青菜やきのこを敷いたり、かぶの生地にゆでたゆりねを加えたりといったアレンジもできます。


手間のかかるわりに見た目も地味ですが、食べた時のおいしさはあまり他にないものです。ぜひ寒い冬の間に試してもらいたい一品です。



偉大なる繰り返し

【近況】

昨年に店を始めてから驚いたことの1つに、お客様の「食べ方のきれいさ」があります。

ランチから夜の営業を通じて、食べ終えた器を下げるときに、食べ方がきれいな方が多いことが印象に残ります。洗い物に食べ残しや食べこぼしが見当たることが少ないのです。


当初は、料理の量が少なすぎるのかもと心配になりもしたのですが、どうやらそうでもなさそうです。しかも、ランチならゆっくり食べる人だから食べ方もきれいなのかというとそうとも限らず、1人で来てさっと食べてすぐ席を立つ方でも、きれいに食べて帰る人は多くいます。


ていねいに食べ終えてもらえるのは作る側としては嬉しいものです。これは自分も見習わないといけないなと、意識して同じメニューを同じランチの器に盛り付けて食べてみたことがあります。すると、小鉢の中身やサラダの野菜の切り方など、料理の仕上がりによっては食べづらい日もあることに気づきました。



1人でも多くのお客様に来てもらいたいという思いは、店を開いているかぎり絶えません。そこへ、さらに欲をいえば、好ましい振る舞いをされる方に大切にされたい。そのためのヒントがあったように思います。

ふだん当たり前にくりかえしてきた振る舞いを変えると、身をもって納得のいく気づきが増えると実感した出来事でした。


【おすすめレシピ本 その2】

「イタリア料理の基本講座 定番料理をもっとみがこう/落合務柴田書店

店を出そうと決めて、料理の土台は和食と決めていました。その勉強を始める前に、一度時間の許すかぎり他のジャンルの勉強もしておきたいと考えたその時に、近くの図書館にこの本がありました。

サラダを作る、パスタを作る、トマト缶を使う、オリーブオイルを使う、などイタリア料理的なものに触れることは多いのに、ただ何となくで捉えていた手順を深掘りして考えることができた、忘れられない一冊です。

・よく作る基本のイタリア料理の手順が、手順の理由もふくめて詳しく説明されている
・塩、酢、油など調味料と、肉、野菜、魚など素材との相性の基本がわかるため、材料に合わせてアレンジを考える幅が広がる
・フライパン、オーブン等の加熱との向き合い方を理解できる。加熱における強弱やタイミング、時間のかけ方のバリエーションが増える

自分にとっては特に、「パスタとソースの味の絡め方」についてはこの本がなければずっと間違えたままだったと思います。
基本のイタリア料理を学ぶ本なので、いま当店のメニューに直接生かされている部分はほとんどありませんが、素材の個性にあった調理法を知るという点では幅が広がったと感じています。

この当時を振り返ると、それまでなまじ独学で料理に触れる機会があったために、包丁や火の使い方、素材の組み合わせ、味の方向性などがワンパターンになってしまい、限界を感じていました。
そういった弱みと向き合うためにたどり着いたのが、「ひたすらレシピを書き写す」。この本も含め、週に一冊くらいのペースで料理本を借りてきては、写経のごとくレシピを書き写していました。ガチガチに固まっていた少ない知識がほぐれて、視界がひろがったような感覚を今も覚えています。

※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。



頼りになる記憶

【近況】

11月は思ったより多少は黒字が出たので、ランチタイムでのカレーを始めるために食器や調理器具を購入しました。というわけで、先週からようやくカレー提供がはじまりました。

豚ひき肉と玉ねぎ、トマトがベースのサラッとしたカレーです。実は自分こういったサラサラ系のカレーは作ったことがなく、どちらかというととろみのついた色の濃い煮込み系の欧風カレーが好みです。

しかし、欧風カレーはどうしても煮込みにかかる時間が短縮できそうになく、仕込みにそこまで時間をかけられそうにもないのでより短時間で仕上がりそうなサラサラ系のカレーを試作することにしたのです。

 

ところが事はそんなに簡単にすすみません。煮込みに時間をかけられるタイプのカレーはじっくり時間をかけて味を調整できるのですが、今回はそうはいかない。イメージした通りの味に近づけるのに苦労しました。

夏にスタートする予定で6月頃から試作したのにようやく夜の提供からスタートしたのが9月過ぎ、ランチに至っては12月になってしまいました。

 

いままでは、粉のスパイスと既製品のカレールーでしか作ったことがなかったので、今回いろいろハーブやスパイスを取り寄せて試作してみました。

食欲をそそる匂いといえば肉の焼ける匂い、ニンニクやネギ等香味野菜の匂い、パン生地が焼きあがる香ばしい匂いなどありますが、カレーの匂いもまた格別です。今回、その組み合わせ方の奥深さを思い知りました。

 

特に、カスリメティリーフという乾燥のハーブは、カレーに加えるとよりクセになるおいしそうな香りになります。ふだん家で作るカレーにも使えそうな気もします。

 

先週は目新しさで注文してくださる方が多く、売り切れる日もありました。しかしこれからどれほどリピートしてもらえるかで、今後の続け方をかんがえる必要があります。味のほうも、作り続けるうちにより良くしていける部分がまだありそうです。

 

【記憶に残ったお店の味 その4】

いつか店を開くなら、ここの店を見習いたいなと感じた場所の1つです。

当店をオープンする前、9年間東京にいました。同じく東京で働いていた関西の友人がひときわ強くおすすめして連れて行ってくれたのが、舎人にあるファームヨコタというところです。

 

手作り感のあるおかずが色々たべられるプレートランチや、窯焼きのピザなどがテラス席で食べられる。とだけ聞くと、なんだかよくある自然派やらオーガニックやらを謳うカフェとか、近年でいえばインスタ映えするとかそういうテイストの店かなと軽く考えていました。

 

しかし、食べることに関しては飾り気やうんちくよりも、おいしさや食べ応えをストレートに愛するその友人がそんな形だけの店をプッシュするわけはないと信じて、集まったのが日曜朝の舎人駅でした。

 

片手に住宅が連なる、まっすぐな高架と道路。いったいどんなオシャレな造りの建物があらわれるのかとぼんやり歩きます。

 

たどりついたのは、園芸店でした。

園芸店の裏手のような敷地に、テーブルやベンチが整備されて食事ができるようになっていたのです。

大小さまざまな木や花が育てられ、店で使われているであろうシートやシャベルのような器材類がそこかしこに置かれている、バックヤードのようでもあります。

 

件のプレートランチは、いろどり豊かな野菜とお肉がお皿いっぱいに盛り付けられた一皿。たしかにどのおかずもしっかり味付けされていて、手作りで、食べ応えがあります。

そしてなにより、園芸店の敷地という独特の場所は、緑と土と水の匂いに間近につつまれる感覚があります。都会に無理やり作った「自然風」のカフェやレストランでは味わえない感覚がめざめるようです。

畑をやっている親戚の家に招かれてご飯を振る舞ってもらったような、気取りのない空間と食事でした。

 

当店を始めてから、長く店を続けるためにはどうすればいいかということをよく考えます。そんなとき、このファームヨコタで過ごしたこの約1時間の食事を思い出すと、足元を確かめることができます。そういう場所に出会えることは、この上なく有難いものです。

 

※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。