食べる言い訳
【近況】
もう1か月か少しすれば新米の季節が来ます。新米がおいしいのは勿論なのですが、今の時期出回っているお米にも新米とはまた違ったおいしさがあります。
新米の良さはやはりご飯そのものの甘みです。また収穫して間もなくの米は水分をたくさん含んでいるので、炊いて時間が経っても粘りのあるもっちりとした食感も続きます。
反対に、収穫から1年近く経った夏終わり頃のお米は新米に比べるとややドライな炊き上がりになります。甘みも落ちてきて粘りも少なくなりますので、お茶漬けや雑炊にはちょうど良く、油が多いチャーハンやカレーとの相性はかえって良いと感じます。
弁当やおむすびに使うなら、少し塩気のあるおかずや具を合わせると、多少落ちているとはいえお米の甘みが引き立つでしょう。
炊いて時間の経ったご飯が余ったときは、ときどき揚げおにぎりにして食べています。
しっかりめに握ったおにぎりを、油を1〜2センチほど入れた中火のフライパンで両面カリッとするまで揚げます。
揚げることで表面のカリカリした歯ごたえと内側のモチモチした歯ごたえの絶妙なバランスが生まれて、これをすまし汁や味噌汁でお茶漬けにするとふつうのご飯では味わえないおいしさなので一度味わってみてほしいと思います。
【食と健康】
食にまつわる仕事をしている限りついて回る事故の一つに「食中毒」があります。
外食における食中毒はほとんどの場合、加工・調理や保存の不備、手洗いや消毒の不備など、提供する側の管理不足が主な原因で原因菌やウイルスがまぎれこみ、消費者がそれに巻き込まれるという形です。
しかしながら、中には食べる側の運と食い意地で出くわしてしまう食中毒もあって、それが「アニサキス症」というものです。
アニサキスはアジ、サバなどの青魚、イカなどに住む寄生虫で、これらを生で食べると生きたまま人間の口に入り胃壁に食いついてたいへん不快な痛みに悩まされます。まれに出血やアレルギー反応によるショックを起こす場合もあります。
数年前には一部の芸能人が、アニサキスで苦しんだ話題をエピソードにして認知がかなり広まった記憶があります。
アニサキスを避けるには、魚を一度冷凍する、天然ではなく養殖の魚を選ぶといった手段が挙げられます。一番は、そもそも刺身で魚介を食べないことです。
職業柄、こういった知識を持ってはいたのですが、そう簡単にかかるものでもないだろうと高をくくっていました。するとある時、スーパーで買った天然ヒラメの刺し身を食べた時に、アニサキスにかかってしまったのです。一年半くらい前のことです。
ふだんはヒラメの刺身なんて買わないのに、めずらしく魚体の大きな天然ものが入ったと売り出されていたので、嬉しくなって買って帰りました。少し脳裏にひっかかるものがありましたが、まさか自分がという思いで打ち消し、食い意地が勝りました。
アニサキスはかくして、国内の寄生虫症の中で事故数トップ、食中毒全体の中でも3割を占めるに至っています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html