炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

気になる入り口、見過ごす入り口

【近況】

この1週間は海外のお客様が数組お見えになりました。この1年を振り返っても、当店は総来客数のわりには海外の方がよく来店されているように感じます。去年までは、日本語を少し話せる方や、かんたんな日本語での注文に挑戦する方がほとんどでしたが、今年に入ってからは日本語をまったく使わず翻訳アプリのみで乗り切るケースが逆にほとんどです。現地語をカタカナでおぼえてけっきょく通じないような経験をした頃よりは、よっぽどスムーズな時代になりました。

 

当店は、店内の見えない2階という立地、しかもそこまで目立つ看板や照明を出しているわけではありません(看板の写真にはこだわっていますが)。従って、ふだんから通勤等で通りを行き交う人でも、いまだに当店の存在をご存知ない方は多いようです。お連れ様に場所を指定されても通り過ぎて迷われる人は後を絶ちません。

ふしぎなもので、普段から通りを行き交う人よりも、旅行やコンサート・観劇等で来阪した方には当店の看板は目立つそうです。英語ができないので深く聞いたことはありませんが、海外の方にとってもそう見えているのかもしれません。

初めて降り立つ土地で入りたくなる入り口、普段から通い慣れてる道にあって入りたくなる入り口、うまく見極めて来店を増やしたいものです。

 

【ぽんたんのレシピ解説 その2】

今回は「塩締めサーモンの黄身酢がけ」を解説します。

こちらのメニューも一度召し上がったお客様からのリピートが多い一品です。ほどよく塩気の利いたもちもちのサーモンに、とろっと甘酸っぱい黄身酢をかけてすすめます。まろやかなコクが後を引く味です。

 

手順がいくつかに分かれます。

・サーモンを塩で締める 

・大根の甘酢漬けを作る 

・黄身酢を仕上げる

 

※以下、比率は原則重量比です

※だしは1リットルの水に昆布15gを入れ、沸騰直前に取り出したのち鰹節20gを入れて火を止めて10分ほど置いた後、漉し布やリードペーパーで漉したものです

 

①食塩と上白糖を1:1で混ぜたものを生のサーモンにまぶします。表面を薄く覆うくらいの量をめやすに、3時間以上はそのまま冷蔵庫で寝かせます。

 

②大根もしくはカブを薄いいちょう切りにスライスして、3%の塩水に20分ほど浸します。しんなりしたら、水気を絞ります

 

③酢1、水1、上白糖0.4の割合で鍋に入れ、一煮立ちさせて砂糖を溶かします。②の大根を漬け込んで冷やしておきます

 

④金属製のボウルに酢20ml、薄口醤油5ml、塩ひとつまみ、上白糖8g、みりん15g、だし60ml、卵黄3個分を入れ、泡立て器で静かに全体を撹拌します

 

⑤④のボウルがおさまる大きさの鍋に水を入れて火にかけます。沸騰直前の状態を弱火で保ち、④のボウルを湯煎にかけます。ダマにならないよう、シリコンヘラ等でたえず静かに全体を混ぜ、ゆるくとろみがつくまで(約7,8分)加熱します。

 

⑥できあがった黄身酢は氷水等でしっかり冷やしておきます。①のサーモンは流水で表面の塩を流し、よく水気をふきとっておきます

 

⑦ボウルに食べやすい大きさにスライスしたサーモン、甘酢をしぼった大根を入れてからめて器に盛り、黄身酢をかけます。仕上げに柚子の皮を削ったものをふりかけます

 

お店では、彩りに紅蓼といってお刺身に添える赤い小さな芽を飾ります。なかなか家庭で使うものではないので、お好みでよいと思います。茹でた三つ葉の茎を散らすのも香りが引き締まってよいでしょう。

 

余った黄身酢は、ホタテ貝柱や茹でたエビ、ほぐした蟹身など他の魚貝類にもよく合います。

 

※調理工程や、使う調味料について等、詳しく知りたい方は遠慮なくお店でもネット上でも質問ください!可能なかぎりお答えします

未だに台風が…

【近況】

妙に暑さの残る一週間がおわり、何となく爽やかに涼しい週明けになりました。しかしまだ台風が南の方に発生したようです。今年だけでなく、今後は年々そういった気候になっていくのかもしれません。

10月一週目、ランチは相変わらず忙しく、反面夜は週末まで落ち着いた営業でした。そういった余裕もあり、増税にあわせて価格を見直すメニュー変更を行いました。

といっても、増税分値上げするのではなく、おおよそ全体的に8パーセントほどの値下げです。

もともと増税の時期には価格を下げる方向で、これまでの客単価を試算していました。たかだか2パーセントの増額といえど、もともとそこまで安くない単価なので、このままの価格でいけばネガティブなインパクトになるだろうと考えていたからです。

また、年末に向けまだまだこれから初来店のお客様も増えるタイミングなので、価格と満足感のバランスを若干整えられたかなと思っています。

スーパーや大手チェーンの居酒屋の動きをみていると、今のような増税のタイミングや、閑散期など客足の鈍る時期になると、なるべく食材のコストを抑えた商品を、大々的に売り出す傾向があるようです。とあるスーパーでは「鶏むね肉」の唐揚げを産地や製法へのこだわりを武器に強力に売り出していました。

銘柄にもよりますが、鶏むね肉は鳥もも肉の2/3〜半額ほどの仕入れが可能です。それだけ余らせている生産者が多いという話も聞いたことがあります。もも肉にくらべてパサつきやすいムネ肉を、おいしい唐揚げに開発する涙ぐましい努力が、夏前ごろには各チェーンの商品開発室では行われていたのかもしれません。


ぽんたんのキッチン紹介 その1

当店のキッチンの内情を、思いつくままに紹介していきます。今回は「既製品」について。

こんにちまで約1年営業してきましたが、当店では最終的な味付けまで調整された既製品をほとんど使っていません。

たとえば、解凍するだけで使える豚の角煮や鴨肉のロースト、開封すればすぐ使える照り焼きのたれやステーキソース、ドレッシングといった類のものです。

その理由は、おいしさや添加物が気になるから、ということではありません。


①使いきれない

恥ずかしながら、忙しい日もあればとんでもなく暇な日もある、まだまだ規模の小さい店です。業務用のそういった食材は、内容量が多く、また場合によってはまとまった量を1ロットとして仕入れなくてはならなかったりして不便なのです。

また、1から手作りしたものは意外と日持ちしますが、既製品開封した瞬間が一番おいしくなるよう作られているものが多いためか、使いきれずにいるとたとえ冷蔵庫に入れておいても時間が経てば風味が色あせて感じてしまいます。


②味付けの強さ

今日となっては、あらゆる既製品の味とそのバリエーションはたいへんめざましいものがあります。サラリーマン時代に大規模な展示会に何度か足を運んで痛感しました。安全面もきわめて厳しく作られていると感じます。

非常に競争がきびしい環境であるためか、本当に味がよいものが多いのです。

そのせいで、他の料理とのバランスを取るのが難しい。一口食べておいしいと感じるくらい、味が強いのです。

1つ既製品を入れることで、これまで作っていた他のメニューの味のバランスを見直すことになりかねないのです。手間を省くための既製品が逆に手間を増やすことにつながってしまいます。


③使い道が限られる

これまで述べたように、既製品は開封してすぐおいしく食べられるものがほとんどです。完成されてしまっているので手を加える余地があまりありません。

となると、実際メニューに導入してもお客様の反応がイマイチだったとき、別のメニューに転用するのが難しい。

たとえば「本格トンテキのたれ」というアイテムがあったとします。トンテキの味付けに特化されているので、豚肉の香りや水分といった特徴や、咀嚼している時間とその間の味の続き具合、ご飯と一緒に食べたバランス等においてすぐれています。反面、他の肉や野菜と合わせてもぼんやりした印象にとどまってしまうことが多いのです。

小さい店において、いつか使うだろうと死蔵されてしまうアイテムは無いに越したことはありません。自然と、醤油やみりん、みそなどの基本調味料の組み合わせでやりくりしたほうが、無駄がないのです。


色々といいわけを連ねあげましたが、もちろんまだまだ私自身の調理の経験が少ないことも既製品をつかいこなせない原因です。うまく取り入れることができるようになるのも、大切な知見だと思ってはいるのですが、難しいところです。


※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。

10月は暑い?涼しい?

【近況】

いよいよ9月も終わりますが、どうも未だに暑さを感じる時間もあって不思議な感覚です。

先週から日替わりメニューに「おでん」を始めました。当店名物の土鍋ごはんにも使っている、函館の古武井町産の真昆布と、鶴橋の鶏肉屋さんで仕入れる国産鶏「ウイング」(手羽先と手羽元が1つになった部位)からダシをとってます。

具材は大根や厚揚げ、こんにゃく、ちくわといったシンプルなものだけですが、ウイングから出るダシがなかなか効いています。煮込まれたウイングそのものも、トロトロの食感でまたおいしい。

家庭でおでんをつくるときのポイント。ちくわやはんぺんなど市販の練り物を使うとどうしても全体に味が濃くなりがちです。

せっかくのおいしいダシで作るときは、あえて練り物をお湯で10〜20分ほどゆがいて味を抜いた方が、全体的にバランスよくまとまる気がします。厚揚げやごぼう天などの油ものも、おなじくゆがくことで油を徹底的に抜くほうが良いようです。


【記憶に残ったお店の味 その1】

土鍋ごはんを看板にかかげる当店とダシの話は切っても切れない関係です。関西に生まれ育ったからこそ、ダシの味を大切にする店をつくりたいと思ったのかもしれません。それほど、関西の食生活はダシの旨味を大事にしていると思います。


その中でももっとも身近なのは、立ち食いうどんの店でしょう。記憶にずっと残っているのは、近鉄八尾駅に併設されている「河内うどん」です。八尾駅前で深夜まで働いていた時期があった関係で、朝方家に帰る前によく立ち寄っていました。

特に気に入っていたのは肉そばに卵を入れたものでした。いまや有名になった肉吸いのように、うすーくスライスされた牛肉がふわふわとつゆに浮かんださまはいつ思い出しても愛しくなります。

うどんもそばも、ほかの立ち食い系とおなじくゆで麺なので、麺にコシがあっておいしいというタイプではありません。しかし、何よりダシが充分に効いているので、つゆはいわば旨味のつまった吸い物です。その味を堪能するために、麺はあくまで脇役。ダシをほどよく吸ってくれるやわやわのうどんやそばだからこそ、味わえる感動があります。

この店は大きなカウンターがあり、中で麺茹でから盛り付けまで見ることができます。何度も通ってカウンターの中をよくよく見ていると、パンパンに削り節のつまった袋が棚にしこたま並んでいるのを見つけて嬉しくなったことを覚えています。

大阪には他にもたくさん立ち食いうどんでダシのおいしい店があります。その中でも一番通ってダシの味が体に染み込んだのが「河内うどん」だったと思います。


※当店に関するあらゆる疑問質問、料理作りのお困り事等、店頭でもウェブからでもお気軽にお問い合わせください!可能な限りお答えいたします。


連休が続いて

【近況】

連休が2週続けてありました。休日は周辺の人通りも少ないため、営業は基本お休みしています。

休みの日は何をしているかというと、だいたい子ども含め家族と過ごしているあいだに一日が終わります。今回の連休は特別で、前職の後輩が結婚披露パーティーということで家族を伴って久々に東京へ。最近の駅弁お気に入りは、京都駅で買える「さいき家」の〇〇とだしまき弁当(〇〇は鳥の照り焼きやうなぎ蒲焼などありました)でしたが、妻の選んだ「たん熊北店」のすきやき弁当が今回その地位を更新したかもしれません。

駅弁はやはり、付け合わせも含めてすべておいしいのが一番。件のすきやき弁当も、いかにも駅弁ぽい濃い味でもなく、保存や整形のために水分を減らしたようなゴワゴワ感もない、素晴らしいお弁当だと思いました。


【ぽんたんのレシピ解説 その1】

ぼんたんで提供しているメニューを解説していきます。

第1回は「フライド里芋」です。だいたいのお客さまから名指しでほめられることが多いメニューです。


イデア自体は、日本料理で作られる「里芋のから揚げ」などを参考に、より簡素化したものです。


①里芋は生のものを、厚めに皮をむいてまずはたっぷりのお湯で下ゆでします。皮のむき方が薄いと、変色したり土の匂いが気になったりします。

②串がとおるくらい柔らかくなったら流水にさらしていったん冷まします。ザルにいきなり開けて湯切りしてもいいですが、里芋を潰さないよう気をつけて

③だし:醤油:みりん=8:1:1の割合で煮汁をつくって、下ゆでした里芋を煮ます。煮崩れないよう、一煮立ちしたら火を弱くして10分程度で火を止めます

④自然に冷ましたら、煮汁を切った里芋に粉をまぶして180度の油でカラッとするまで揚げます。衣に使う粉は、ぽんたんでは片栗粉と薄力粉を半々に混ぜています

⑤揚がったら、塩を振って盛り付け、かつお節をまぶして完成です。かつお節はフードプロセッサーで粉砕していますが、糸ガツオを使うとか、魚粉で代用するとかでもいいかと思います


ざっと書いてみましたが、家庭で作るにはさすがに時間がかかりすぎると思いますので、③の時点で里芋の煮物として食卓に出し、余ったらフライド里芋にしてみてはいかがでしょうか。

少ししか余らなかったら、こっそり自分だけ揚げて食べましょう。食事を作る者の特権は、そういう所だと思いますよ。


※調理工程や、使う調味料について等、詳しく知りたい方は遠慮なくお店でもネット上でも質問ください!可能なかぎりお答えします