炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

悩ましさも味

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【近況】

「粗削りの魅力」について考えることがあります。シェアキッチン店舗のほうで週1回間借りしてもらっているクレープ屋さんから先日、過去最高売り上げが出たと報告がありました。

 

以前も触れましたがオーナーさんは飲食店に関しては概ね素人で、ただ好きなクレープ作りがしてみたいがためにレシピを研究し、手探りで仕込みの段取りや提供オペレーションを組んで営業に臨まれています。

 

お客さんにおいしいクレープを出したいという思いが強いので良い材料を使い、ボリュームも大きくてかなり食べ応えのあるクレープを、リーズナブルすぎるくらいの価格で出しておられます。

一方で、手探りゆえに客さばきや提供の段取りに苦労されることが多いようで、この日も来客が多く待たせてしまったりと、悩ましいところも多々あるようです。

 

商品に魅力はあるものの段取りの悪さも目につく、そのバランスはお客さんからしてみれば実に「粗削り」に見えることと思います。

しかし個人店にはこういう「粗削り」な時期にしか生まれない魅力もまたある、と自分は思っています。

 

しっかり儲けが出るように原価を切り詰めて、お客さんを待たせないように段取りを組んで、バイトにも作れるようにとほどほどの難易度のレシピで、そつなくお店が運営できればそれに越したことはありません。むしろそういった研究や最適化をしていかないと、チェーン展開は到底叶いません。

しかしそうやってできた安定的でクセのないお店は利用しやすい反面、面白味に欠けるきらいがあるとも感じます。

 

そう考えると、多少待たされることはあっても、手作りのおいしいものが食べられて、そこで働く人の懸命さや気遣いが伝わるような迫力のある「粗削り」な営業は、店にとって個性が伝わる瞬間といえなくもありません。

 

繰り返しうまれるようなお客さんの不満は取り除く努力をしつつ、オーナーさんの個性や思いが伝わるような営業ができるように、微力ながらお手伝いをしていきたいと思います。