炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

記憶を比べる舌心

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【近況】

10月からは夜の営業も再開できそうなのでメニュー案と仕込みを整理する1週間でした。

この1年半、再開してはまた止めて、酒を出せたり出せなかったりの繰り返しで、その度に状況に応じた営業内容を変えてやってきました。それまでの、日々の売り上げを伸ばすことだけ考えていればよかった頃は本当に恵まれていたと痛感します。

 

今回も時短営業になるようですが、少ない営業時間に人がなだれ込むほうが密になるような気はします。1人客向けのファストフードやゆっくりくつろぐ店などもひとまとめで時短させ続ける方針にはうんざりですが、時短要請から協力金の給付までの流れがようやく確立してきたところでしょうから新たな方針に期待は難しそうです。

 

今後は飲食に限らず旅行やちょっとした行楽、観劇やイベントでも、利用者から「そこまでして行きたいか、行くべきか」を前よりも深く問われるようになるだろうことを感じます。その問いに応えられるほどの内容がある店にしていく必要を強く感じる今日この頃です。

 

【キッチンの内情】

むかし仕事でよく目を通していた外食専門誌などで、外食のメニュー、特に居酒屋のつまみの味付けを評価する言い回しに「クセになる味」「やみつきになる味」というものがありました。今は知りません。

商品開発に携わった経験があるので、自分なりにもいろいろ考えたことがありますが、一口食べただけで「おいしい」と感じられ、脳を刺激されたように次々と口に運びたくなる味を指すと理解していました。

 

別の言い方をすると、パンチのある味とも言えたかもしれません。塩気と旨み、脂気がしっかり立っていて、そういうメニューは酒のお代わりが増えるので売り上げ増にもつながるという話でした。

 

一時期毎日のようにいろんな店で食べ比べをしていて、一口目でこの味やみつきになるなーと驚いてその当時メモしたり記憶に残った店がたくさんありましたが、今も覚えているものはほとんどありません。

 

そのかわり、一口目であまり強い印象がなかった店のほうが後からまた思い出して食べたくなることがあったりします。

長い目で見ると、「クセになる味」「やみつきになる味」はそのとき持て囃されていたようなパンチのある味ではなかったのだと今になって思います。

 

5年前、10年前、15年前・・に自分が口にして、いま現在も食べたいと思う味付けには何か理由があるはずです。つきつめると、お客さんに自信を持って出せるのはそうやって長く残り続ける味付けだけなのかもしれないと近頃はより感じることが増えました。

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