炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

定番は静かに光る

【近況】

つい先月まではこの先をずいぶん楽観的に見ていたもので、あまりの急転直下ぶりにようやく頭が追いついてきたのがこの1週間といったところです。

 

てっきりGW前後は賑やかな街並みが戻ってきているものだと信じていたのですが、今や過去最高に静かな夜の街並みになってしまいました。

飲食店への急な休業要請で、市場でも野菜や魚や余ることが多いようで、まかないや自宅で消費できそうなぶんは少しだけでも引き受けるようにしつつ、仕入れに向かっています。

 

テレビやネットには、要請に従わず開けている店や看板の灯を消して隠れて営業する店が多いとか、路上飲みが横行しているといった話をことさらニュースに取り上げる向きがあって面白くない気分にもさせられますが、実際に街を歩いてみればそれらも結局一部のことであるということがわかります。先が見えない不安や怒りを焚き付けるような話には近づかないことが何よりのようです。

 

コロナ禍が始まって一番最初の大きなストレスはまず運転資金が尽きる不安でした。続いてが、お客さんの来ない店に居続ける時間です。事態が事態とはいえ、仕事がしたいのにできない、必要とされていないということを突きつけられるのは胸が苦しいものでした。

 

今は受けられる支援のおかげで資金の問題は先延ばしにできていますが、長くこの状況が続いてしまうと不甲斐なさに苛まれる辛さはより大きくなるでしょう。補償はなくてもいいから店に立ちたい、お客を呼びたい、と強く願う瞬間は近々やってくるような気がします。

ひとまとめの休業要請というやり方から、今後は対策のノウハウとわかりやすい基準で、より細かく現場や立地に応じた営業制限等へとスライドしてほしいと感じる次第です。

 

【贈り物】

うどんで有名な道頓堀今井という店があります。実店舗だけでなく、百貨店や通販でうどんや鍋のセットを展開されている老舗です。

実家に住んでいたころに何回か、祖母が買ってきたり他所から頂いたりして何度か食べたことがありました。

 

先日、久しぶりに味わう機会がありました。定番のきつねうどん以外に、具沢山のしっぽくうどん、鍋焼きうどんなどがあり、一つ一つきれいな紙箱に梱包されています。

うどんだし、茹でうどん、具がセットになっていて、自宅で鍋にだしを沸かして具とうどんを温めれば食べられるというタイプです。

 

ポイントはやはりうどんだしの味わいです。関西風うどんのだしは昆布と鰹節だけでなくサバ節やうるめ節を加えた混合だしがポピュラーです。鰹節問屋それぞれに、独自の混合比率があるようです。

自分はうどんだしと言えばこの力強い味わいが当たり前だと思っていたのですが、関西を出ると意外と食べられるところがありません。

 

東京に9年ほど住んでいましたが、もう本当にいくら探しても大阪のような身近な場所にはそんな味のうどん屋さんはなく、帰省するときは必ず大阪のうどん屋さんに立ち寄っていくのを楽しみにしていたほどです。

そのことを思い知った今、この道頓堀今井のうどんを味わうと、まさに王道の関西風うどんだしを体験できる素晴らしいセットだと心底思います。

 

というわけで、関西に長く住んでいる方にはあまりインパクトはないと思いますが、遠方の方への贈り物にはけっこう向いているんじゃないかと思える一品です。