むき出しの引力
【近況】
「味がないのがおいしい」ものを味わうのは夏の楽しみの一つです。
本当に味がしないものを食べるというわけではなく、味付けをしない(もしくは薄く味をつけた)ものが夏は特においしく感じるといったところです。
冷えたトマト、きゅうりや水茄子、ゆでただけのオクラやそら豆は、かじっただけでもそのみずみずしさや香りの強さ、苦みが夏の体に沁みるようです。旨みはほとんどなくてもむしろそれがありがたく、せいぜい、塩を添えるくらいで十分です。
汗で水分が失われるとか、暑さで食欲が出ないとか、そういう環境から生まれるおいしさかもしれません。
秋冬が近づいて、寒さが増すと味付けは濃くなっていきます。だしの旨みを利かせたり、甘さやコクを加えたほうがより温かみが出ておいしく感じます。キノコとか、牡蠣とか、旬の食材も旨みの強いものが増えていきます。
例年なら毎日使っていた夏の食材も、今年は店でほとんど使うことなく秋を迎えてしまいそうです。秋はちょっと頭をひねって、この状況下でも季節を感じてもらえるような提供ができないか考えたいと思います。
【何でもない話】
人が集まるイベントの中でも、冠婚葬祭は1日も早く人が集うイベントにもどってほしいと思います。ひとりの一生にそう何度とない節目を我慢しろというのはどうもなじみません。
冠婚葬祭の場というのはふだん使わない神経が冴えているように感じていて、自分としては祝いや弔いの言葉、ねぎらいや景気付けの空気を共有することでそれまでの日常とそこからの日常を見直すきっかけがもらえる気がしています。これに代わるイベントは他にないと思います。
また、その場に来た人はもちろん、来れなかった人のことも気遣う機会という点でも、冠婚葬祭の場は役立っていると思います。
何気ない会話や振る舞いからから「はっきりとは言えないが、何か気になるな」という直感が湧いて、一言声をかけるきっかけが生まれるのは、直に顔を合わせるからこそだと感じます。いずれは、遠隔でも同じ事ができるようになるのかもしれませんが。
流行と抑制、予防と治療の勘所が一日も早く明らかになることを待ち望む毎日です。