炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

手繰って足掻いて

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スマホの写真から】

先日スーパーで手に取ったピザトーストです。

見た目のわりにズシッとくる重さに期待が高まって、つい買ってしまいました。

食べ物を手に持ったときの重さや包装の触感が、なんとなく期待感を高めることはあると思います。

同じパンの類だと、カレーパンやクリームパンが見た目に対して手応えのある重さだと期待はぐっと高まります。

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コンビニのホットスナックで、昔からあるローソンのからあげクンというものがあります。薄い紙製の袋に入れられる他のスナックと違って厚手の紙でできた袋状の容器に入っているのですが、この厚みを通じて伝わる温度が、自分は妙に期待を高められます。厚紙なので、食べ終わってもまだ紙に温もりが残っていて何となく中を覗き込んでしまいます。薄い紙袋ではそうはいきません。

 

今でもあるのかわかりませんが、高速道路のサービスエリアや競馬場、学食などにある給水器の、薄い紙コップも独特の風情を感じます。

お金を払って買うドリンクより明らかに薄い紙コップは、水の冷たさが手のひらに直に伝わってきて、こんな冷たいものを今から飲むんだなという実感があります。

 

当店はランチに使うお茶碗にいろいろ種類をもたせているのですが、重めのものと軽めのもの、手触りがつるつるのものとざらっとしたものなどと個性が分かれます。

それぞれに同じごはんの量でも、期待感や満足感が変わることがあるのだろうかと思ったりもしますが、特に検証はしていません。

 

【近況】

店内にお客さんが入ると、自然と体にスイッチが入ります。かかとの上あたりから太腿の裏らへんに力が入る感じです。同時に頭の中もいったんリセットされたようにすっきりした感覚になります。

そのおかげで良い緊張感を保ちながら、疲労感もなくサクサク体が動くのですが、困ったことにお客さんが皆帰ってしまうと途端にその感覚が失われてしまいます。

 

時短営業になるとお客さんの居ない時間が増えてしまい自分一人で仕込みや片付けの時間を過ごすことになり、こういった緊張感が持続しないので忙しく動いた日よりもかえって疲労感が残ったりします。自分の意思でスイッチが入れられたら言うことはないのですが、この辺りが凡人とそうでない人の違いなのかなと思ったりします。

 

一つ方法があるとしたら、無理にでも何らかの予定を入れることです。○時までに誰と会うとか、必ず◯◯に立ち寄るとか、自分の場合は他人に迷惑をかけられない状況だとスイッチが入れやすいような気がします。

味のため息

【近況】

ランチで炊き込みごはんのお弁当を始めました。いざ始めてみると、季節の野菜に注目することでいろんな炊き込みごはんが作れることに気付いて毎日内容を考えるのを楽しんでいます。

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ごはんに炊き込むとき、牛、豚、鶏とあれば使いやすいのは圧倒的に鶏です。やさしい味が出て固くなりにくく、癖も少ないので他の具材とのいろんな組み合わせに重宝します。

 

豚については火が通り過ぎると固くなりがちですし、バラ肉などは脂が強いのでくどい感じが出てしまいます。ベーコンやソーセージのように旨みが強く燻製の香りが付いているものは、細かく切って少量使うと香りとコクのある塩気がよいアクセントになります。

 

滅多に使わないのは牛肉です。他の2つに比べて肉らしい匂いが強いので生から炊き込むとこもった感じになります。

柔らかく煮たしぐれ煮などを炊き込むとおいしいごはんになりますが、そのままでも白いごはんとの相性がよいのであまり炊き込みごはんにするメリットがなく、どちらかというと混ぜごはんに向いているのかもしれません。

 

最近気付いたことは、小さく切った根菜を加えると冷めてからもごはんが柔らかく食べられることです。特にれんこんを使うのはおすすめです。

 

【最寄りのグルメ】

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久しぶりにスーパーで自分的にストライクだった玉子サンドと出会いました。粗く刻まれた卵とぽてっと空気をふくんだような仕上がりが大変好みでした。

 

サンドイッチの中でも、「玉子サンド」には妙に思い入れがあります。

祖父母と一緒に住んでいたので、昔はお正月など親戚が一度に集まることも多く、大人はすき焼きや鍋でお酒を楽しむ間、子どもたちの食事にはなぜかよく手作りのサンドイッチが用意されていました。

 

今なら手頃なお寿司やらピザやらの宅配がありますが、そういったものが浸透するより昔はそういうものだったのかもしれません。中でも玉子サンドが特に好きで、皆が帰ったあとに残っていないか楽しみにしていたように思います。

そのあたりがきっかけなのか、長じてのちもコンビニなどてやはり玉子サンドは欠かさず買ってしまうものになっていました。

 

玉子サンドの具は、自分で作ってみるとけっこうゆで卵から出る蒸れたような匂いが気になったりします。コンビニやスーパーで買えるようなサンドイッチはすでにマヨネーズ和えにしてある業務用加工品などを使うと思うのですが、おそらくそういった匂い問題に対策がしてあるのか気になる匂いもまずありません。

 

しかしながら、あの匂いがないと卵の味がしないような気もするものです。何年もの間、そんなものさしでいろんなコンビニやパン屋のサンドイッチを食べ比べているような始末です。

窮屈のすき間に

【近況】

コロナ騒動も2年続けば多少慣れてくるかと思っていたら、仕込み中に流しているラジオに非日常を感じ取る毎日です。

というのは、いつも聴くいろんな番組のMCが軒並み感染や濃厚接触で自宅待機となってしまい、代わりのタレントさんが担当するなどしているためです。今流行の株の感染力の強さが今までにない規模だというのを、期せずしてラジオから実感しています。

 

そんなこんなでしばらく時短営業になり、食事の利用人数も4人までと規制されます。しばらはランチ営業のみとし、お弁当を新たに始める予定です。

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今回は大阪府の場合ざっくり「全員が3日以内の検査で陰性だった証明」を持っていれば府の認証店で5人以上の会食をしても良いということになりました。

それくらいの慎重さを持っているお客さん方はそもそもこの時期に飲み屋で大人数の会食をしないだろうと思っていたのですが、これが結婚披露宴や法事など人生節目の集まりとなると話は別だなと思いました。

今回の条件緩和で一つでも多くそういった替えのきかない大事な行事が予定通り行われたなら、とても良い一歩だなと感じた次第です。

 

【食と健康】

年末からしばらく「喉仏のあたりに何か詰まっているような感覚」に見舞われていました。

痛みがあるわけでもなく、最初は年末年始の食べ過ぎで太って襟首が苦しいのか思ったのですが、さすがに短期間でそこまで太るわけはありません。しばらく様子を見ても改善しないので、何かできものでもあったら嫌だと思って耳鼻咽喉科で診てもらいました。

鼻から管を通してカメラで診てもらい、初めて自分の声帯の形を見せてもらうほど細かく写真を撮って説明してもらったのですが、結局異常は見つかりません。あとは耳鼻科で診断はできないけれど「逆流性食道炎」じゃないかということで、脂っこいものと寝る前の食事を控えましょうと言われ帰りました。

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逆流性食道炎は胃酸の出過ぎが原因なのですが、唾液が足りないと胃酸とのバランスが悪くなるとも知りました。そこでひとまず早食いの癖を直し唾液をしっかり出すために、ここ1週間ほどはとにかくしっかり噛んで食べています。

 

そのおかげかもう喉が気になることがほとんど無くなったきたのですが、どちらかというと耳鼻科で診てもらって安心したという方が気持ち的に大きいような気もしています。

 

 

間伸びも味のうち

【何でもない話】

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仕入れから店に向かうまでのささやかな楽しみ「立ち食いそば」についてです。

 

先週は山梨にある忍野村で食べた打ち立てそばの透き通るような味わいについて記しましたが、立ち食いそばはそういった名品の類とは別の素晴らしさをもった大切なジャンルの一つだと思っています。

同じ「そば」とは呼びますが、自分にとって前者はまさしく「麺類」、後者は麺を具にした「汁物」だと思っています。

 

そばで名高い場所もしくは店に出向いて食べる時、気持ちはそばそのものに集中します。歯ごたえや喉越し、風味を味わい、つゆのおいしさを楽しみます。これはまっとうな麺類の楽しみ方だと思います。

 

いっぽう立ち食いそばを食べるシーンは全く違います。朝の時間がない時にそれなりにお腹は満たしたく、かといってパンやサンドイッチよりは温かいものが食べたく、かといって牛丼屋でかきこむほど空腹でもないという時の選択肢として立ち食いそばはあります。

 

自分は関西の立ち食いそばチェーンのいわゆるスタミナそば(月見そばに天ぷら)が定番で、丼にたっぷり湛えられただしをすすってお腹を温めながら、歯ごたえのないそばを手繰り寄せ、わずかな小エビとほとんど衣でできた天ぷらがほぐれていくのを目で追いかけつつ、卵をここぞという時につぶして味わうというのを楽しみにしています。

 

この時の気持ちは、麺類としてのそばを楽しむというより、具沢山の味噌汁やお茶漬けをふうふう冷ましながら流し込んでいるような感覚です。すなわちこれは汁物の楽しみ方だと思っている次第です。

 

流し込みやすさが立ち食いそばのおいしさのポイントなのかなと感じていて、たまに立ち食い価格で生そばや揚げたて天ぷらにこだわりのある店に出会うことがあります。期待できる嬉しさがある反面、立ち食いそばではあまり食べることに気を取られたくないなと思ったりします。

 

【レシピ紹介】

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冬は小松菜のおいしい季節のようで、あまりアクも強くなく歯ごたえと爽やかな苦みでお腹がスッキリします。

 

小松菜のじゃこにんにく炒め

・小松菜 1束

・にんじん 1/4本

・ちりめんじゃこ 20グラム〜

※多めにすると味がよく出ます

・にんにく 1片

・サラダ油 大さじ3

・鷹の爪 お好みで

・塩 小さじ2

濃口醤油 小さじ1

・酒 大さじ1

 

①小松菜はざく切りにし、砂を落とすようにザルでしっかり洗ってよく水気を切る

②にんじんは細切り、にんにくはみじん切りにする

③鍋にサラダ油、にんにく、鷹の爪を入れて弱火にかけ、にんにくが薄く色づくまでじっくり温める

④③にちりめんじゃこ、にんじんを入れて中火に強め、ちりめんじゃこが薄く色づくまでざっくり炒める

⑤小松菜、酒、塩を入れて強火にし、全体を混ぜながら炒める

⑥小松菜がしんなりしてきたら醤油を入れてよく混ぜる

 

きのこやもやしなど、水気の少ない野菜なら余りものを入れてもおいしく仕上がります。

時間が経つと小松菜から水気が出て味が薄まるので、

・⑤〜⑥では歯ごたえが残る程度で火を止める

・作ったらなるべく早く食べる

作り置きにしたい場合は、さらに塩を加えてやや濃いめにしておくとおいしく食べられます。

 

細く長く粘っこく

【近況】

しばらくお休みしていたオンライン販売を再開するお知らせをしたところ、早速注文をいただいて有り難さを噛み締めているところです。

年末が終わって、増える感染者数のニュースも手伝うのか、しばらくは営業が落ち着くと思われるのでなるべく注文を受け付けたいと思う次第です。

昨年春ごろに模索に次ぐ模索のすえに始めた通販ですが、慣れるまではなかなか手間と神経を使う取り組みでした。大変なことは始める前からわかっていたようなことではありますが、始めてみないと経験できないこともたくさんあって、気づいていなかった強みを認識できるような収穫もありました。

 

ようやく緊急事態宣言もなくなったと喜んだのも束の間、最近の空気感では今年はさらに色んなことを試行錯誤しないといけない一年になるかもしれません。心底やりたいことならしぶとく続けられることだけは取り柄の一つだと自負していますので、気長にやっていこうと思います。

 

【行ったお店行きたいお店】

先週ここにも記しましたが年末年始は山梨に居て、年明け早々には富士山と里山の水景が望める忍野八海を訪れていました。

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富士山の雪解け水や湧き水で有名なところなので、「そば」が名物で知られています。

このそばが、名物という偏見を抜きにしても実においしいものだったのが嬉しい出会いでした。

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これまで食べたそばと何が違ったのだろうと振り返ると、一番はそばつゆとそばの馴染みが良かったことかもしれません。有名な店や観光地で、そば自体がおいしい、又はつゆがとにかくおいしいと感じたことはありましたが、こんなにバランスが良く全部がおいしいと感じたのが初めてのことでした。

 

この点は水の違いなのか、そば屋の技術や素材選びの違いなのかまではわかりませんが、仮に水の違いだとしたら同じ味は他所では食べられないことになります。そう考えると、そばで有名な地域を食べ比べることは水のおいしさの違いを楽しむことなのかもしれません。

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代えがたくそびえる山

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【近況】

年末は29日に営業を終え、大晦日から三が日を山梨県富士吉田市にある義実家で過ごしました。

はじめて訪問したのはもう10年近く前になりますが、今でも圧倒されるのは富士山の存在感です。今年は三が日ともに快晴で、堂々としたその姿を目に焼き付けることができました。

 

この地域の何が印象的かというと、人々の生活圏にすっかり溶け込んでいる富士山の姿です。近隣の民家と民家のすき間、店がたちならぶ商店街の向こう側、あらゆる空間に富士山が見切れるように入ってきます。

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広告ポスターやカレンダーなどの写真で見る富士山はその美麗さや荘厳さが印象的ですが、実際に生活圏の空に写り込む巨大な山体は慣れない自分からするとときどき異様さを感じることがあります。地震や噴火が隣り合わせにあることを生々しく感じる時もありますし、空を眺める視界を山が占めていることに圧迫感を感じる時もあります。

 

「富士山は立派だな」と思う気持ちの一方で、それだけでは片付けきれない落ち着かなさを毎回感じるのですが、その刺激は妙に心地良く、来るたびに富士山を見る楽しみの一つです。

 

そんな諸々を感じながら過ごす時間は、日常でぼんやり曇った感覚を洗ってくれる時間でした。引き続きややこしい一年になりそうですが、腰を据えて取り組む覚悟ができたように思います。

暮れときどき賭け

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【最寄りのグルメ】

今年は昨年より家で食事する機会が多い一年だったので、今年スーパーや通販、頂き物で口にして気に入ったものをまとめてみました。

 

・サイトウハムのスモークレバー

https://www.saito-ham.co.jp/products/detail.php?product_id=747

 

岐阜に訪問したときに地元のスーパーで購入したものです。レバーは好きで今までいろんなレシピを試したり外で食べたりしてきましたが、このスモークレバーはかなり強く記憶に残りました。

レバー特有のクセや匂いがしっかりおいしさと結びついているのを感じる味です。食感とのバランスもおいしい理由だと思います。

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・サンマルコのビーフカレー

https://www.tonkatu-kyk.co.jp/sanmarco/menudetail/1/

昔から慣れ親しんでいる、関西の百貨店等でみかけるカレーレストランです。持ち帰り販売もあって、実家でもたまに親が買って帰ってくるような身近な存在なのですが、改めて食べてみるとその味わい深さを思い知りました。スパイスと香味野菜の香りのバランスが、どうにも真似できそうにない一品です。

 

・三谷製麺

https://mitani-seimen.com/

鶴橋の駅から10分ほど離れた場所にあるカウンターのみの製麺所兼ラーメン店です。

つけ麺や汁麺、魚介系か鶏ガラ系かスープと、それらにそれぞれ合う麺の太さや種類が選べます。スープにこだわるラーメン屋というのは数あれど、麺がおいしければ、ラーメンやつけめんというのはシンプルなスープでいいんだろうなと感じました。

麺の味にそんなものさしが存在するのかはわかりませんが、麺に鮮度の良さを感じる食べごたえがあります。

ひっきりなしに客が来る店内、居並ぶ丼の数、それらを目にするだけで何だか身が引き締まる思いをした記憶があります。

 

2022年はできることなら店の中でもっと新しいレシピや食材、お酒と出会える一年でありたいと思います。

 

【近況】

「〇〇が落ち着いたら〜したい」と心に留めることは、誰しもあろうかと思います。この2年はコロナが落ち着いたら〜、と何度耳にしたかわかりません。

それ以外でも、子育てが落ち着いたら、この仕事がひと段落したら、とやりたいことを先に見据えることはこれまで何度もあったのではないでしょうか。

 

かねてから心配していた様に、この1年は食材値上げの連絡が毎月のようにやってきています。

木が足りず、半導体が足りず、あれやこれやが作れないというニュースも耳にします。この流れが一時的なものにとどまるのか、詳しいことはわかりませんが、5年後10年後には、今手軽に手に入っていたものやサービスや学びの機会が、同じように手に入れるのが難しくなるような気がしています。

 

これを機に今まで行き過ぎていたサービスや品質がスリムになっていくのは良いこととは思いますが、あの時やっておけばでに入れてに入れておけばよかった、という後悔は嫌なものです。落ち着いたらいずれと先に見据えたつもりでも、今しか手に入らないものやことはないか、見直す時間を持とうと思います。