炊い処ぽんたんのブログ

大阪・肥後橋にある「酒と料理と土鍋ごはん」炊い処ぽんたんの近況と食にまつわる雑記です

押し迫っても押し返せ

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【何でもない話】

先日、店のトイレの温水便座を交換し、改めてトイレをきれいに使っていこうと気持ちを新たにしました。

当店はいわゆる「居抜き物件」として入居したので、厨房区画や壁、エアコンやトイレ等の以前のオーナーが残していったものをリフォームして使っています。

10数年遡ってわかる限り過去に4オーナーが入居していて、どこかのタイミングで温水便座もそれなりによいものが付けられていたようでそのまま使っていました。しかしいかんせん古いものだったのでガタが出始めており、今月交換するに至った次第です。

 

居酒屋で働いているとトイレ掃除は必ずつきものの仕事で、特に年末は人の出入りが多いのと飲み過ぎる人が増えることでかなり汚れます。ふだんから自分で掃除するような人でないと、トイレをきれいに使おうという気にはなかなかなれないのかもしれません。

 

おしゃれな店に行くと、洗練されたデザインの蛇口や洗面台が設えてあって見とれることがありますが、掃除が行き届いていなかったり部分的に壊れたまま放置されてあるのを見ると、おしゃれ故にかえって見すぼらしく感じたりするので難しいものです。

 

古くても壊れるまでは丁寧に掃除していれば清潔感は保てますし、新しくても汚れや破損を放置してあれば汚らしく感じるもので、長く使うことを意識して扱うことはトイレに限らず心がけたいと思います。

 

【近況】

仕入れに向かうと、特に土曜日などは年末の買い物で出歩く人が増えていることを感じます。

店頭にも、この時だけのアルバイトに来ていると思われる若者や、店主と顔がそっくりなご兄弟と推定される方が立つところが増えて、いよいよ年末という雰囲気が高まります。

 

序盤はなかなか忙しかった12月ですが、3週目に入って客入りが落ち着いてきてしまいました。空いた時間で古くなった備品や掃除道具を買い替えたりしています。

 

今年のカレンダーを振り返ってみると、緊急事態宣言が解除された10月までの約半年、お客さんからの予約がほぼ入っていない一年でした。

ただただ不甲斐なさを突きつけられる日々はもう思い出したくもありませんが、戒めとして記憶にとどめるべきことはたくさんあったように思います。何となく流してしまわないよう記録しておきたいと思います。

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意志の上にも三年

スマホの写真から】

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オープン以来ずっと使っている削り節です。

鰹節だけでなくサバなどの削り節が配合されていて、力のある旨みがあって昆布との相性がよいのが特徴です。毎日削りたてが店頭にならんでいるので、買ったその日のうちにだしを取ると旨みは格別です。

かつて、削りたての鰹節で取るだしが何よりおいしいと知り、削る前の鰹節と専用の削り器を買ったことがありました。しかし、専用の削り器をもってしても、硬い鰹節は容易に削ることができず、鰹節屋さんからアドバイスをもらってもなお薄く削ることができなかったため、諦めてそれから大人しく削ったあとの鰹節を買うようになったことを覚えています。

 

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23時ごろの大阪は難波、千日前周辺です。観光のメッカである道頓堀からつづくこの通りも、もちろん道頓堀そのものも、とっくに緊急事態宣言も解除され年末に向かう時期にもかかわらず実に閑散とした様子です。

このあたりはもう何年も前、大阪に住んでいたころ休みの日の夜に1人でよく足を運んでいました。インバウンド需要が本格化するよりずっと前の時期でしたが、それでも深夜2時〜3時にもっとたくさんの人が行き交っていたものです。

 

そのころ遅くまで開いていた店も今では閉店時間を早めているところが多く、もはや如何わしい個室居酒屋とラーメン屋だけが深夜まで営業している様子でした。

そのうちの一軒でラーメンを食べて帰りましたが、スタッフは1人で店は満席。24時間営業で掃除する時間がないのか、床にこびりついた油汚れの匂いが立ち込め、カウンターにはなかなかの量のほこりが積もったままとなっていました。出されたラーメンを食べながら、繁華街の中心にはもうまともに(まともな?)飲食店が出せなくなる時代が近づいていると感じました。

 

【近況】

団体予約の問い合わせこそないものの、さすがにこの時期は年末を目前にした賑わいある飲み会を見ることが増えてきました。

10月、11月はひさしぶりの通常営業に気持ちも晴れやかさを覚えたものですが、それも落ち着き12月になって、コロナ禍前の年末のようには戻らない客足に焦りを感じている現場は少なくないだろうと思います。

 

食に関しては今もすでに多くの選択肢がある時代ですが、将来はさらに細かい目線(好み、体調、信条、など)にもとづいた「自分に合った食事を簡単に選べる」時代になっていくものと思われます。

業界が盛り上げようとする流行も入れ替わり生まれ続けるでしょうが、それらに左右されず自信を持って一つのことを繰り返すことが個人店の生き残り方の一つだと感じるこの頃です。

口は大きく心は広く

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【近況】

当店は職場の仲間どうしで利用してくれるお客さん方がほとんどですが、メリハリの効いた余裕のある飲み方をしてくださる方々が多く、店としてありがたいと同時に社会人として尊敬の気持ちが湧きます。

 

お酒をグイグイ飲んで料理もきれいに食べ終えて、話題も尽きることなく盛り上がって最後はスパッと切り上げる、そんなお客さんが帰ったあとは店に縁起の良い空気が流れているとさえ感じます。

 

迎える側の自分もまた、その姿勢に応えられるような仕事の手際や受け答えを身につけて磨いていきたいと強く思います。そしてそういった振る舞いは、なんとなく仕事以外の過ごし方からも大きくもたらされるような気がしている今日この頃です。

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【食のニュースを読んで】

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211206/amp/k10013367471000.html

 

目にすることが増えてきた外食における食物アレルギー問題です。

飲食店にとってアレルギー対応が難しい理由の大きな一つは、やはり意図しない混入が避けられないというところだと感じています。

 

注文を受けてから調理して提供する一般的な飲食店では、ボウルや鍋、菜箸など調理器具はほとんどのメニューで共有します。「このボウルは卵を溶く専用」といった使い分けはしません。しかし、重いアレルギーを持つ人は、それらをきれいに洗って使いまわしたとしてもわずかに残ったアレルギー物質に反応することがあるといいます。

 

では専用のボウルや鍋を使い分ければよいかというと経済的にもスペース的にもそんなに備品が揃えられる店ばかりではありません。

またスピード感を持って作業をすれば、食材や調味料が思いもかけないところに飛び散ることもありますから、徹底するなら調理する空間も分ける必要があります。

現実的には店側が全責任をもつことはできないという点で、重いアレルギーを心配する人にのみ特別に持ち込みを認めているケースもあります。

https://www.hoshinoresorts.com/allergy/

 

ただアレルギーを持つ人が外食の楽しみを奪われるのが当たり前とは思いません。今後、社会的な役割としてチェーンレストランや一部の事業者がアレルギー対策を強めた飲食店を拡大していくことも必要だと感じます。

 

記事の最後に「世の中全体がアレルギーがある人もいて普通だと思える社会になってほしい」という一文があるのですが、同じく「アレルギー対応が徹底できない店もあって普通だと思える社会」でもあってほしいと願います。

 

 

もてなしも皮一重

【近況】

飲食店は多くの場合、作りたい店の雰囲気にふさわしい程度のギリギリまで客席を設けます。

テーブルやカウンターの大きさを決めるにしても、器とグラス、お箸やフォークスプーン等が乗るちょうどよいスペースを想定してムダに広くすることはありません。売り上げのためには席数が多いに越したことはないからです。

 

なので、昨今の飛沫防止用パーテーションが場所を取りすぎて困っている店は多いと思います。

先日、大型商業施設の中の店で食事をしていました。買い物帰りの人は荷物が多いため、テーブルで誰かが座ったり立ったりするたびにあちこちでパーテーションが倒れる音がして、スタッフもなかなか疲れるだろうなと思いました。

 

外食というのは入ってから食事して店を出るまでの流れがなめらかであればある程、良い印象で帰ってもらえるわけで、せっかくの料理や接客がパーテーションという無粋なものに邪魔されることに引っかかりのある人は少なくないと思います。

 

行政は感染防止の効果を大きく謳って実質強制的に設置を求めた以上、つねに状況に応じた必要性を検証して設置の取りやめを肯定するアナウンスも行ってほしいと思う次第です。

 

【レシピ紹介】

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これから春に向けて「えんどう豆」いわゆるグリーンピースの季節が続きます。関西では「うすいえんどう」と呼ばれる品種が多く出回ります。

レシピというほどのものではありませんが、苦手な人も多いこのえんどう豆も「薄皮」をむくと味わいが大きく違うということを試してほしいと思います。

 

①えんどう豆をさやから外し、ボウルに入れる

②全体にまぶす程度の塩を入れて、こすり合わせる

③沸騰したたっぷりの湯に入れ、落とし蓋をして4、5分ほど柔らかくなるまで茹でる

④水にさらして冷ます

↑ここまでの手順でも、さやから外してすぐのえんどう豆は薄皮が柔らかくておいしく食べられます

 

⑤豆が浸かる量のひたし地を作る。だし10に対し、薄口醤油1、みりん0.5、砂糖0.2を一煮立ちさせ、塩少々で味をととのえてしょうがの搾り汁を加える

⑥冷ました豆の薄皮をむき、ひたし地に浸けておく

 

旬のえんどう豆は特有の匂いやボソボソした食感はほとんどなく、ただ茹でるだけでも十分おいしいのですが、薄皮をむくとさらに豆特有の香り、食感がストレートに味わえます。

薄皮をむく作業がかなり手間なのですが、豆本来の味はほんとうにおいしいので一回だけでも試してみてほしいと思います。

相手の目が見れるかい

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【近況】

先月から一皿の量を半分(価格も半分)にしたところお酒の注文が以前より増えるようになりました。この取り組みでは1人当たりの売り上げは下がるものだと思っていたのにそうはならず、想定外ながらありがたいことです。

ずっと店に立っていると、全くと言っていいほど自分の店を客目線で見ることはできないものだといつも痛感します。

 

自分のことはわからなくとも、外へ行くとこの味付けはどうだろうとか、食器や内装の雰囲気がどうだとか、仕事柄いろいろ気になってしまうため、外食時はなるべくジャンルの違う店であればあるほうがリラックスできます。

最近では、西安料理のランチに入ってみたら内装の雰囲気から味付けまで全く自分の知識にはないものばかりだったので、全てを忘れて食べることに集中できたのが印象的でした。

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しかし仕事にせよ趣味にせよ、いくら知識に触れても自分の場合は何だかんだで結局現実的な落とし所を考えてしまうため、ストイックに自分の世界観を追求して実際の店など形にできる人には尊敬しかありません。食事にリラックスを求めているくらいが、自分にはちょうどいいようです。

 

【食のニュースを読んで】

https://news.yahoo.co.jp/byline/toryu/20211123-00269446

 

AIで飲食店へ電話予約ができるサービスがあるのを初めて知りました。

オンライン予約に対応していない店の予約が取りたい時、営業時間内に電話するのが面倒だということで生まれたサービスの紹介のような記事です。

 

ここでも取り上げられていますが、飲食店が絡むサービスで「頼んでもないのに自分の店がそのサービスに勝手に登録されている」というのは「あるある」だと思います。ネット上にある古い情報をそのまま転載してあったり、定休日や営業時間もろもろの基本情報を利用者が更新できるようになっていたりします。

実際困るのですが、そのこと自体には何ら違法性もないし、利用者の利便性ひいては飲食店側のメリットにもいずれつながるし、店側は間違った情報があれば申し立てることもできるから大丈夫ということのようです。

 

食べログあたりから始まったと思われるこの仕組みですが、前々から自分は「実におもしろくない」と感じています。店の前に頼んでもないのに看板を立てられて、しかも何を書き込んでもいいとされている気分です。

さらに修正を頼もうとすると、まず利用者登録をしてくださいと求められますし(後から有料プランの営業をかけられます)、運営会社側は「うちは看板を立てただけです。あとはあなたの店を利用した人が勝手にやることなんでうちは関与しませんよ」という態度なのも、全くもっておもしろくありません。

実際に困っている店があっても、運営する側の人にとっては直に自分が手を下していないことですし、大して責任を感じなくて済むというのがこの仕組みなのでしょう。

 

おもしろくないことにはなるべく触れたくないので、今後もずっとこういったサービスには距離を空けつつ、自分のペースで仕事できるようでありたいと思う毎日です。

不便も味付け

【何でもない話】

パソコンの具合が悪くなったので久しぶりにアップルストアに足を運びました。

最近は欲しいものを探すにも買うにも何でもネット経由でしたが、Apple製品についてならここに来るのがやっぱり一番だなと改めて感じました。

 

自分が普段から買い物に行くような店に比べると、アップルストアのスタッフは身だしなみがそれぞれに個性的で、接客の距離感がひときわカジュアルです。初めて訪問したときは、欧米風で本名かアダ名かわからないアルファベット名札をつけた純日本人風の男性に、友達のような距離感の接客をしてもらってかなり面食らった覚えがあります。

 

今回もその独特の空気は健在でしたが、落ち着いて身を委ねてみるとあることに気付きました。この空気の中にいると、どんな文化を持つ会社がこれらの製品にどんな魅力を感じて買ってもらおうとしているのかというメッセージが、事細かな説明を受けなくとも伝わってくるということです。

 

いつの間にかほとんどの買い物をネットで済ませることが多くなって、買い物という行為の印象がどんどん軽くなってきているのを感じます。軽い気持ちで買えるからこそ良いものもありますが、それなりに高価なものを買った時というのは、どこかで自分の判断を肯定してほしいという気持ちを感じることがあります。

 

そんな時、ネットショッピングや家電量販店ではなく、多少時間を取ってでもこのアップルストアのような接客と店内の空気感に触れて買うほうが、自分は良い判断をしたぞと自信を持てる気がするのです。

 

自分はつい「何を作るか」ばかりに気が取られがちなので、「どう売るか」についてもよく考えようと決めた1日でした。

 

【近況】

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すっかり寒くなっておでん人気が本格化しています。

昆布と鶏の出汁で仕立てたあっさり味のおでんです。土鍋で熱々にして出しています。

 

おでんの仕込みが多くなると、仕入れの荷物がとにかく重くなります。こんにゃく、厚揚げ、大根など、おでんの種はけっこう重たいものが多いのです。店に着く頃は真冬でもなんだかんだ汗ばむほどです。

 

ちなみにおでんといえば辛子だと自分は思っているのですが、最近は特に若い方中心に辛子を使わないお客さんが多いことに気付きました。

おでんに辛子はもうおじさんの作法なのかもしれないと感じた今日この頃です。

 

粒立ちの技

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【近況】

「1合しか炊けない土鍋」を試しに導入してみたところ、思いのほか好評で驚いています。以前より気軽に注文できる量と価格がちょうど良かったのかもしれません。

土鍋はこれまで2合炊きのサイズのみ使っていました。そのあたりのサイズは種類も豊富ですし、土鍋といえばそれくらいのものと決めつけていたので、何でこんな単純なことに3年も気がつかなかったのかと反省しています。

 

道具というのは新しいものを導入すると、使いこなせるようになるまで仕事中に心地よい緊張感が生まれるように思います。普段からあんまりペースが乱れるほどの刺激を受けたい派ではないのですが、ほどよい緊張感は持っていたいと思いました。

 

 

【最寄りのグルメ】

「ラーメン屋の炒飯」が好きで好きでたまりません。

自分でもまかないで作りますが、一度も外で食べる炒飯の味に達したと思ったことがないので、炒飯だけはどうしても外で食べたいものの一つです。

その都度鍋を振って作る炒飯は、店にとっては手間が取られるメニューのせいなのかもう最近はチャーシュー丼や卵かけごはん等しか置いてない店が多いので、メニューに炒飯があるというだけでその店の好感度がとにかく高まります。

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思い返せば、料理への憧れの最初は「派手に鍋を振って炒飯を作る」ことだったかもしれません。

お母さんが作る優しい味の焼き飯ではなく、舌にガツンとくる熱々の炒飯が、もしかしたら自分で作れるかもしれないと思い、高校生くらいから休みの日に自宅で何度もチャレンジした記憶があります。

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結果40歳をこえてまだ納得のいく味にできないのはどうなのかとも思いますが、この歳になってもまだ専門店でワクワクしながら注文する楽しみを味わえるのはありがたいことなのかもしれません。