独り合点の落とし穴
【近況】
3月はちょっと奮発して少しお高めの仕入れもやってみた一ヶ月でした。
当店にしては割と高額な料理予約をいただいた日があったり、2月よりも人の流れが良くなったので、お肉屋さんや魚屋さんにいつも並んでいる普段は手が出ないけどいつかは買ってやろうと思っていた食材たちを買うことができました。
とはいえ、そもそもの客数が少ないのでお高めといってもたかが知れていますが、ちょっといい食材が厨房にあると思うと気も引き締まって店にいい空気がただよう気がします。
一方で、いいお肉やいい魚は見た目も良くそのままで十分おいしいくらいなので、ついついこちらも萎縮してしまい、調理や盛り付けはシンプルな感じで済ませてしまいます。このあたりはふだん使い慣れない悲しい性です。
こういった押しの強い食材を使いこなす技術とセンスも身につけたいですが、もともと汎用性のある安価な食材を扱いしだいでおいしくするという力もしっかり身につけたいところです。
どんな仕事でも同じでしょうが、技術や知識というのは一度身に付けたら終わりということはなくて、プロでやっていくには常時アップデートが求められます。あれやこれやのつまみ食いに終わらないよう気をつけたいと思います。
【何でもない話】
ふと気がつけば店の最寄りの駅の時刻表が変わっていて、終電に連絡する電車が5分早まっていました。
コロナ前なら、忙しくて片付けが遅くなった日によく駆け込んでいた帰宅できる時間ギリギリの電車です。知らずにいつもの時間に駅へ向かっていたら終電を逃して帰れなくなるところでした。しかし時短営業の流れで、もう1年以上その時間の電車には乗っていないことになります。
オープンさせるときから、店に泊まる日は作らないと密かに誓って、いくら遅くなっても必ず帰っていました。
性格的に、時間があったらあったぶん作業に身が入らない人間なので、仮にすぐ帰れる場所に家を借りていたら却ってダラダラ片付けをしていたことだと思います。まして徹夜で何かやると意気込んで、いい結果になった試しがありません。それでも、何となく流れで徹夜になったり、徹夜でがんばれば良い仕事ができるのではという愚かな期待でチャレンジしたりすることはありました。
社会人になって、自分の予定を自分主体で組み立てて徹夜などしなくていいように調整できるようになったのはずいぶん後になってからです。基本、過去の行動を後悔することはない性格ですが、まずは自分の時間を確保する意識をもっと早い段階で身につけておけ、と昔の自分に言いたくはあります。
今はもうすっかりほぼ自分のためだけの時間を過ごしている日々ですが、そうすると勝手なものでたまには人のためにもうちょっと時間を使ってもいいかなと思ったりします。少しくらいは誰かに頼られたいという気持ちの表れなのかもしれません。